3.おかしいな
さて、気を取り直して朝ご飯だ。
まずはリクとカラス、白玉用の水。
その都度入れるのも面倒だし、桶とか皿に水が湧き出る機能つけたら良くね?
(具現化を適用します)
言い切った。まぁ適用してくれたら助かるからな!
で、桶に干し草も入れた。カラスにはエサ、で白玉はどうするんだ?
広辞苑を開く。角うさぎの項目を見ると雑食とあった。
なんでもいいなら、と考えているとカラスが固まった。微妙に踏ん張った体勢だ。
慌ててお尻に手を添える。
ポンポン
続けて生まれた。卵だ。普段見ているのより若干小ぶりで、しかもなぜか金色。食えんのか、これ?
アガッ
カラスからキックされた。たいして痛くはないが不意打ちはやめれ!
せっかくの卵を落とすところだったぜ。
じっと見ていると
(激うま、超栄養あり、食わないなら即死ね!)
相変わらず口が悪いな。でもま、食えんなら食うぞ!オムレツだ。
野外装備にあったボウルに割入れる。おぉー中身もなんだか神々しいな。
塩と胡椒で味を調えて火鉢の上にフライパンをセット。油を敷いて溶いた卵を流しいれる。
揺すりながらへらでくるくるする。半熟で丸くまとめたら出来上がり。
やべ、美味そう。横では食パンを焼いていた。
いつもの6枚切りと保存用に8枚切り、アイスを載せて食べようと思って4枚切りも買っていた俺。
グッジョブだ!
今回はいつもの6枚切り。
マーガリンを塗ってオムレツをパクリ。美味い!
超絶美味いぞ?確かにこれを食べないなら死ねって言いたくなる程度には美味い。
言わないけどな。
目線を感じた。
(寄越せ)
上からだな?カラスも首を上下してアピール。共食いか?
ぐがっ、だから不意打ちのキックは勘弁してくれ。
白玉も後ろ脚で立ち上がって前脚をちょんちょんする。
可愛いな、おい。
ってことでお裾分け。
せっかく美味くて栄養があるからな。みんなで味わおうぜ!
食べ終えて片付けると出発だ。
カバンに全部入るのは助かるよな。
リクの背中の袋は干し草とかカラスのエサしか入っていないからな。
またぽくぽく歩く。平和だ。にしても人いないなぁ。
と言っていたのがフラグか、前から馬車が来た。
まだ遠いけどやたらと視力が良くなったみたいだ。良く見える。
鹿毛の2頭立ての馬車だ。
(商人の馬車)
なら普通にすれ違えばいいか。
こちらは相変わらずぽくぽくと歩く。白玉はちゃっかりリクの背中でのんびりしている。
こいつは魔獣なんだよな?名付けしたら襲われないらしいけどな。
やがて御者台が見えてきた。まだ若そうな男性だ。そして商人だけあって荷馬車だった。
すれ違う前に相手が馬車を止めた。
そして手を上げると
「やぁ、君。ベルシティぃに行くのかい?」
声をかけられた。
「こんにちは。そうだぞ」
俺を見てアルパカを見て背中の烏骨鶏と角うさぎを順に見た。
「こんにちは。どこかから出てきたのかい?」
続けて質問される。優しそうな目で俺を見る。
「あぁ、村から出てきたところだ!」
さぁ、村人Bの評価はいかに?
「そうか、苦労したんだな」
こんな感じなのか、村人Bは。
「俺はベルシティのベルナ商店ではたらいているベルドラだ」
ベルが多いな…。
「あははっ、ベルって呼んでくれ。君は?」
「カスミだよ、ベル」
うんうん頷くと
「きれいな名前だな!しばらくベルシティにいるか?」
今のところはその予定だ。住みやすいってあったし、基盤を作るのに必要な時間だろう。
「うん、落ち着くまでは間違いなく」
「ならそこうちお店においでよ!色々あるからさ」
「うん、ありがとう!」
俺が元気よく応えると、何やらカバンをごそごそした。
御者台から飛び降りると
「これ、商品の紹介で配ってるんだ。良かったら食べてくれ」
俺の手にコロンとした紙に包まれたものがいくつか乗せられた。
(花の蜜を固めたもの 美味)
嬉しいな。
顔を上げるとにこにこしたベルと目が合った。
「ありがとう!」
押しつけがましくない態度も好感が持てる。俺の頭を軽く撫でる。
ベルはまた御者台に戻ると手を挙げてモスシティに向かった。
何気に現地人と初対面だった。
そして気が付いてしまった。
周りにはアルパカと烏骨鶏、角うさぎしかいなかったから体感としてわかっていつつも、気が付かないふりをしていたが。
俺はなんか幼くなってるみたいだ。若いっていうか、幼い?手も小さかったし…アチラのも。
まぁ、大人になってもそっちはそこそこだったけどな?それにしてもささやかサイズだった。
どうやら気のせいではなかったようだ。
もしかすると村人Bを選択したことで若返ったのかも。35才のおっさんが村人Bだと単に放逐されたようにしか見えないもんなぁ。
ラッキーなのか何なのか。
複雑な心境で、またぽくぽくと進んだ。体は子供中身はおっさん、笑えないぞ?
陽がが高くなってきた。休むか。
「休憩しよう。お疲れ様」
声をかけて桶や皿を出す。
リク、カラス、白玉の分だ。
俺はカバンから椅子を出して座る。水筒から水を飲んでさっきベルからもらった飴を食べる。
程よい甘さが美味しい。きっとベルの気遣いや優しさも含まれてるんだろう。
すれ違っただけの子供に優しくしてくれる。人の優しさが身に沁みた。
立ち上がると
「リク食うか?」
口を開けた。飴を放り込む。カラスと白玉には半分に割って渡した。
もらったのは3個だからな。
さて、もう少し進むか。
またぽくぽく歩いて行く。昼は朝作っておいたサンドイッチだ。網で焼いた食パンにハムとチーズとレタスにベーコン、トマトまで挟んだ。なんちゃってBLTだ。
歩きながらリクの口にもちぎって入れ、カラスと白玉にも食べさせた。
(まぁまぁだな)
そういいながらもまた口を開けるリク。気に入ったようだ。
これらの食材も明日には復活するんだから本当にありがたい。
こうしてベルに会ってからは誰とも会わずに本日の行程は終了。
テントを出して、夜ご飯だ。
景色が変わらなくって変に疲れたからな。手抜きだ。
こういうときの救世主、カップラーメンとおにぎり。からげ付き。
またリクたちにも分けて食べ終えると、片付けをしてシャワーを浴びて寝た。
翌朝、テントの中で目が覚める。ふわふわ毛布は快適だ。
スキルがお勧めと言って買った野外装備一式。しかもアップグレードしたやつ。
枕と体圧を分散するマットレスまで付いてた。これでお値段たったの5千Pだぜ?
(買わないとかマジでくそ過ぎ!)
て言うのも分るよな、言わないけど。
テントから出ると
「おわぁ!」
びっくりした。黄色い何かがふぁさふぁさしていた。良く見ればキツネか?
のわりにしっぽ多くね?3本揺れてるぞ!こ、これは…シュタっと近寄った。
しっぽが俺の顔をかすめる。ふぁさふぁさ。良き、最高に良き…ふ、ふぁっくしょん!
鼻先で揺れたからくしゃみが出た。で、こいつはなんだ?リクを見る。
(保護した。名前つけろ)
相変わらず上から目線だな、おい。さて、で名前か。
キツネなんだしやっぱり揚げだろ!
わ、なんだ…怒ってるんだろうけどご褒美だぞ?しっぽで顔をふぁさふぁさの刑なんて。
キツネといったらあれか。よし!
「イナリ」
(私はイナリー)
喜んだな?カラスに続いて珍妙な名前だが、分かりやすい。しかし野営のたびに生き物が増えるのもな?食費がかかるし手間も…自動補充があるからそんなでもなかったか。
「で、イナリはなんで?」
(ふらふら歩いていた)
「襲撃か?」
(ケッ、俺がこんな雑魚にヤラレル訳ないだろ!腹減ってふらふらしてたんだよ)
なるほど。
「腹はもう減ってないか?」
(お前の水は命の水だからな、ひとまずは大丈夫だが腹は減ってるに決まってるだろ)
カラスのエサじゃダメか?
前脚で俺の太ももにちょんちょん触れる。
「すぐ作るから待ってて…カラスちょい待て!」
話している間にいきり始めた。あわててお尻に手を出す。
ポンポン
間に合った。割れたら大変だからな!
卵だけだとみんなで食べるにはちょっと少ない。厚切りのハムがあったから焼いて食べよう。
火鉢の上にフライパンをセット。厚切りのハムを焼く。隣で卵を溶いてスクランブルエッグにする。
フライパンの横で食パンを2枚焼いて、っと。出来上がり。
粉のコーンスープをお湯で溶かす。大袋を買っていて良かった。2個分作ってみんなの皿にも入れた。
「いただきます!」
今日はチリソースをかけて食べるぞ。いやー美味い。
イナリはバクバク食べている。
食べ終わったらコーヒーだな。ごくごくと飲む。リクが飲みたそうだが苦いぞ?
(寄越せ)
相変わらずだな。リクの皿に入れてやる。
「熱いし、苦いぞ?」
ペロン…
(美味い!)
あれ、まずいって言うかと思ったのに。ぺちゃぺちゃ飲んで口元を長い舌でベロンと舐めた。意外な発見だ。
さて、今日にはベルシティに着くぞ!
片付けをして意気揚々と出発した。
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