36.指名の護衛依頼
ルキとロキを見る。俺の表情が変わったのを見逃さなかった。
「カスミ、何か食べ物?」
大きく頷いた。
貝だけでもブイヤベース、クラムチャウダー、ミネストローネ、パエリア、浜焼きはもちろんのこと、ソテーや揚げ物。
魚となれば唐揚げ、刺身、海鮮丼、フライ。
甲殻類なら味噌汁や鍋、焼きや生。フライももちろんサラダでも。
海藻類ならサラダや酢の物。
俺に足りてなかったのは海か、海なのか!?
「カスミ?」
「海が俺を呼んでいる!揚げ物、生物、焼き物、スープ…パスタにも合う。最高の食材だ」
言った、言い切ったぞ!
ルキとロキは
「食べさせて」「くれる?」
「もちろんだ!みんなで海鮮パーティーだ!!」
「「行く!」」
アマランとウルグもゴクリと唾を飲み込む。
「貴族からの命令は受けない、こちらへの干渉もしない。それが条件でなら受ける」
アマランがそう言った。さすがリーダー。押さえるとこはしっかりと、だ。
セイは
「先方に伝える。あぁ、条件には食事は各自で、も付け加えよう」
「頼んだ」
うんうん、それは大切だ。
どうやら受けるとなると、2日後には出発なんだって。だから今日は各自買い出しに。午後からはギルドの訓練場でルキとロキから剣を教えてもらう。
代わりに俺が魔法を教える。なんでだ、と思ったら例の風魔法でスイスイを教えて欲しいって。2人ともそれなりに魔力はあるからな。
で、買い物だ。
俺は市場に向かう。明日はリクたちを走らせに外に出て、コヒの実をたくさん採取する。
ゴールデンアップルとピーチは鉢植えで栽培中だ。それも持って行く。
青い稲妻にはマジックバッグを作る事になったから、それもやらなきゃな。
…後ろから当たり前みたいにルキとロキが付いてくる。
「2人は何か買うのか?」
「一応、保存食を…」
なんで一応なんだよ。チラッと上目遣いするなよ…上からなのに。
「カスミ…ご飯」「頼む…」
だよな?まぁ海に行きたいって俺に付き合わせるんだから。なら行動食も作っておくか。
「買い出しに付き合ってくれ」
頷く2人と共に市場へ。野菜は多めに、肉と魚は在庫がかなりあるから大丈夫だろう。
保存容器は2人に買ってもらう。後は麦かな。玄米もあるが麦もある。だから両方とも沢山買った。
クリスがいるからたくさんオマケしてもらえる。
「おじちゃん、カッコイイね!」とか「お姉さん素敵」とかな。おっちゃんやおばちゃんに撫でられて。
コイツは俺のジョブなのに、商才がある。
調味料はハーブとか薬草を多めに買った。後は普通の卵や牛乳、チーズ。ベーコンやハムも買う。
帰ったら生ハムとウインナーを作ろう。後は果物か。
うん、沢山買ったな。
食材の後は布。あれば何かと使えるからな。雨除けに加工しておこうと思って。俺はそんなもんか。
「携帯食だったか?」
2人は市場から離れて冒険者用の品物が揃うお店に入った。武器も防具も売ってる。俺も胸当てと籠手は持ってるぞ!短剣に剣だってある。
机も椅子もテントもあるし、野営セットは優秀だし。
シャンプーもボディソープも石けんもあるからいらない。
リグに収納させれば元に戻る優れもの。
簡易シャワーしかなかった野営道具、実は更なるアップグレード、お値段1万Pで風呂付きになった。それが少し前から使っていた風呂の正体だ。
調理道具はクリスで作れるし、あ…ポーション用の瓶は買っておこう。
ルキとロキも買い物を終えて店を出る。
ちょうど昼時だ。
「何か食って帰るか?」
2人は首を振る。
「絡まれるから」「嫌だ」
そりゃ大変だ。まぁリクをはじめイナリとコハクも珍しくお留守番だからな。帰って作るか。でも一からだと面倒だな。
よし、売ってるものを買ってアレンジしよう。
「買ったものを工夫するぞ」
と言えば好きに色々と買い込んで来た。俺も焼き魚と串焼きを買った。
宿に戻ると当然みたいに俺の部屋に集まる。
アレンジしている間に
「クリス、2人のバッグの空間を拡張してくれ」
「畏まりました」
俺は串焼きを温め直して、青山椒を振る。スープにはコンソメを投入。魚はオリーブオイルで焼いて、ハーブを添える。
堅パンにはバーニャカウダ風ソースを付ける。こんなもんか。
「凄い!」「広がった!」歓声が上がる。
「カスミ」「ありがとう!」
「あれば便利だからな」
トーカに聞くと標準的より少し大きめの拡張で、100倍だとか。だいたい馬車2台分くらいか。便利だよな。
「出来たぞ!」
と声を掛けたらドアがノックされた。
トーカが頷くのでクリスが開ける。
セイとアマランにウルグだった。なにやら買って来ている。
「お前らも飯か!」
入って来た。お皿を覗き込んで手元を見る。あー分かったよ!悲しそうな顔されるとな。
「アレンジするからこっち食ってろ」
受け取って串焼きを焼き直して柚子塩をほんの少し振りかける。ってか串焼きしか買ってないのか。
セイは何やら豪華なお弁当だ。
「これを分けるから私にも食べさせてくれ」
仕方ないな。お皿に盛り付けてから俺も椅子に座る。
みんなは無言でパクパク食べている。
「これ、屋台のだよな?全く違うぞ」
「このパン、すごく美味しい」
天下のバーニャカウダだからな。俺用に作った野菜スティックもだして、器にソースを入れる。
「野菜でも美味いぞ!」
ルキとロキは早速食べてかかえこんだ。こらこら、分けてあげなさいな。
普段は野菜を食べないと言うアマランとウルグも絶賛だった。
食べ終わると紅茶を出す。ミルクをたっぷりだ。
クリスに3人のマジックバッグを作らせる。感動していた。だよな?お値段0円だ。
飲みながらセイが
「今日、これから本部の監査が入る」
え、準備とか大丈夫?
「例の依頼絡みでな。後、カスミをケガさせた職員のな。だから準備は要らん。身一つでいいんだ」
それがその後、驚きの結果となるのだが、この時はまだ知らない。
「指名依頼もな、あの条件で構わないと。まぁ普通に依頼主以外の命令は聞かないって話だがな…無茶振りする貴族もいるから。ちゃんと条件に付けたぞ」
「俺が確認したから、カスミを臨時のパーティー要員として加えて依頼を受けたぞ!」
「色々ありがとう!美味しいご飯期待してな」
「おう、頼んだ」
「楽しみにしてるぞ!」
セイには悪いけど、楽しんでくる。
「セイにはお土産買ってくるから」
頭を撫でられた。
行き先はルーガイザ伯爵領の領都ルーガス。今日の夜はゆっくりして広辞苑で調べるぞ!おー!!
今日はこれから剣を教わる。
ルキとロキと練習場に移動した。地下にあって、個室は予約制。すでにクリスが予約してくれていた。
「まずは基本の素振りだ。やってみて」
剣の素振りってどんなだ。斜め上から振り下ろす。シュオン…しょぼいな。
そこからルキが基本の型、振り下ろし、振り上げ、横なぎ、突きなどを教えてくれる。
剣の場合、抜きざまと構えた状態で剣の軌道が変わるからな。
テレビなんかで見る殺陣は刀だしな、やっぱり剣とは違う。
一通りの型を習ったら、2人の打ち合いを見せてもらった。
いや、凄かった。早くてしなやかで。
まるで剣舞みたいな剣捌きだったぞ!
「凄いな!」
拍手をすれば
「この程度…当たり前」
と言いつつも嬉しそうな2人だ。
「いやいや、マジですっげえきれいだった。流れるようでしなやかで。無駄のない動きってそれだけで見惚れるよな!」
カスミは単純にその磨かれた剣筋をほめただけだが、きれいが顔や体をささない讃辞が初めての2人は単純に嬉しかった。
と同時に不思議だった。カスミに自分たちがどう見えているんだろうと。
「ん?どうした?」
「カスミから見た僕たちはどんな風なんだ?」
ルキが聞く。
「どんなって、若くてきれいな顔の双子だろ」
当たり前のように言われた。どうやら顔がきれいだという認識はあるようだ。
「でも普通に接してくれる」
カスミこそ意味が分からなかった。
「当たり前だろ。顔がきれいっていうのは特徴みたいなもんで、それがルキやロキの価値を決めてるわけじゃないし」
顔立ちだってまぁステータスみたいなもんかもしれないが、それは単に与えられただけのもの。
人の価値は中身で決まると思っているカスミにとって、見た目は悪いよりいいほうがいい、程度の認識だ。
むしろ追い回されるくらいなら普通がいいとすら思っているのだから。




