32.臨時パーティー
俺は今、ロキと歩いている。
今朝、青い稲妻のメンバーに呼び捨てにしてくれと言われた。ギルマスが呼び捨てなんだからと。それもそうか、ということで呼び捨てだ。
で、そうロキと2人で歩いている。
腕にはコハク、足元にはイナリ、頭の上にはカラスとカラスの胸の下にスズメ。ややこしいがカラスもスズメも烏骨鶏だ。
リクと白玉は珍しくお留守番。
どうやらロキがいるから安全と判断したみたいだ。おかんか!っと1人ツッコミをしてみた。
夕べのことは途中から覚えていない。どうやらセイもそうらしい。で、他のみんなはなんか生温い顔で俺とロキを見ている。だから覚えてるんだろう。
何があったか教えて欲しかったが、聞かない方がいいかとやめた。コハクはご機嫌だから変なことはしてない筈。
で、何故かアマランに
「俺たちは今日、休む!若い2人で依頼を受けて来い。ちょうどゴブリンの巣の討伐があるみたいだからな!」
と笑顔で送り出された。
「臨時パーティーを組めばいいぞ!」
ウルグにも笑顔で背中を叩かれた。痛いっす。
同じ若いに入る筈のルキも手を振っていた。
ロキとは微妙に目線が合わないけど、嫌われてる感じはしないから大丈夫だろう。
一度部屋に戻ったロキがまた部屋を訪ねる前に、風呂に入る。野営道具に入ってた箱だ。
せっかくだから、イナリとコハクにクリス、トーカとリグも一緒に入った。
リグは…女の子だった。色々ちっちゃかったが。
(変態!もうお嫁に行けない)
とか言ってたけど、俺のジョブだからな。嫁にはやらんぞ!と高笑いしたら風が飛んで来て吹き飛んだ。
暴力反対!
背中の翼部分、服はどうなってるのか観察したら、ちゃんと穴が開いてた。トーカから服を剥ぎ取る…もとい、脱がせて分かった。
トーカにも空気砲で吹き飛ばされた。クリスの簡易結界があるから平気さ。
で、髪の毛と身体を洗ってお風呂に入って出て着替えた。髪の毛はクリスが乾かした。もちろん、ジョブだぞ。
ドアがノックされ
「ロキ…」
開けると目の前に髪の毛を分けたロキがいた。
「もう行ける…?」
「昼飯はどうする?」
「…カスミのご飯」
トーカを見る。頷くので
「じゃあ外で食べよう」
用意をせずに部屋を出た。
ギルドに入ると賑やかだ。依頼はすでにロキが持っていたから、臨時パーティーの申請と依頼の受注だ。
ノナさんが手招きしてくれる。
「依頼か?」
ロキが渡した紙を見て俺たちを見て、2人で?と聞く。頷くと少し考えて
「まぁロキがいるなら大丈夫か。気を付けろよ」
声をかけて貰って、出発だ。
てくてくと歩く。ロキは基本、静かだ。部屋を出てからはまた前髪で顔を隠した。追いかけられそうだもんな…美形の双子とか。
「カミスは、昨日のこと覚えてる?」
「途中まではな」
ロキの顔が近かったとか、セイがお酒を作ってくれて飲んだとかは覚えてる。その後からが曖昧だ。
やたらとコハクを撫で回したのはなんとなく覚えてる。
ふう、と息を吐くとロキがポツポツと話し始めた。
2人は小さな頃から整った顔で、周りからもそう言われていた。貴族だし、家を継がないから他家からも婚約の打診が早々に来ていたらしい。
貴族は15才から3年間、王立学院に通う義務がある。ルキとロキも当然通った。
そこは出会いの場でもあり、婚約者のいない人は必死に相手を探すらしい。
ルキとロキは顔だけを目当てに打診される婚約に嫌気がさし、すべて断っていた。
だから学院ではそれはもう、大変だったそうだ。
追いかけられる、影から見られる。抱きつかれそうになったり、部屋に閉じ込められて迫られたり。それはもう犯罪だろ?
怖いな…貴族の女って。
と思って聞いていたら、半分は男性からだって。着替えの途中で服を持ち去られるとか、身体を触られるとか。それも犯罪だろ!貴族怖いな、おい。
で、ルキもロキも顔を隠すようになったと。とにかく、2人は絶対に離れないことにしたんだってさ。それこそトイレも一緒。
言い換えれば、それだけ危険だって事だ。そこで、人から舐められないように冒険者ギルドに登録。自分たちを守る意味もあったと。
元から剣は降っていたし、魔法もそこそこ使えた。
でも実戦経験がない。そこで、鍛えるために登録し、パーティー仲間を探していたアマランとウルグに出会ったと。
力を付けて全ての追跡を交わし、ついでにそのまま貴族に嫌気がさして冒険者になって今に至る。貴族籍が抜けたわけじゃ無いけど、もう貴族とは結婚しないと2人して宣言したらしい。
そこまでされたら確かにな。
俺を蹴って大怪我をさせた女も貴族だったらしい。子供に一方的に暴力を振るったとして処分されたと聞いた。
貴族籍の剥奪と、俺への慰謝料の為にキツイ労働をするみたいだ。セイが教えてくれた。
どうやらセイに仮想していたのも原因の一端だった。可愛いそうな子供を可愛がる優しい女性、そう思われたかったと。アホらしい!そんなんで俺は死にかけたのかよ!
だから貴族が嫌だというロキの気持ちも理解できる。まだ若いしきれいだし、選べる分余計にな。
「人に興味を持たれることはあっても、持つことは無いと思ってた。カスミは僕が初めて興味を持った人だ」
俺のどこにか分からん。調味料か、食事か。
と思ったらキッカケは違ったみたいだ。
「僕たちの目や顔を見ても変わらなかった」
そのきれいな紫の目を見ると、急に態度が変わるらしい。なんだろう、この世界の人には紫の瞳に何か憧れがあるのかな。もしくは魅了か。
何にせよ、俺がロキたちを見ても変わらないのはやっぱり純国産日本人だからかな。
こちらはみんな顔面偏差値が高いから、なんていうか…現実味がない。だからカッコいいとは思うけど傍観者だ。それは残念ながら女性を見ても同じ。
後は俺がおっさんだから、それも理由だろう。セイだって頬に傷はあれどめちゃくちゃイケメンだしな。
でもそれだけだ。テレビの中の人を近くで見てる感じ。現実味のない感覚だ。
「まだ子供だからな」
と言えば、ロキは
「僕とは6歳しか違わない」
王立学院を卒業したばかりなんだって。でもな、12才と18才じゃ小学生と高校生だ。
「もっと、カスミのことを知りたい…」
意味深な言い方だが、貴族という狭い範囲で暮らしていたロキたちに取って、俺は珍妙なんだろう。だから興味が湧く。それだけだ。
「お隣さんだしな、時々こうして依頼を受けたり飯を食えば分かることもある」
ロキが興味を持つことがどれほど珍しいか知らない俺はその発言を軽く考えていた。
その後のゴブリン討伐は簡単に終わった。
トーカがロキたちは信用していいと言ったし、ロキが自分のジョブを教えてくれたからだ。
なんと、賢者だった。魔術師は対外的に言ってるだけ。そういう有力なジョブは国への報告義務がある。ジョブ判定をする教会の司祭さんから教会を通して国へ。
しかし、幼い頃から知っていた司祭さんは、魔術師と伝えたそうだ。もちろん、ロキは自分のジョブが分かるから驚いた。驚きながらも納得して、両親にもそう伝えた。
ちなみにルキは剣聖だって。こちらも剣豪っていうジョブだと親には伝えているそうだ。
有能過ぎるジョブにこの顔、そりゃ危険だよな…。
「そのジョブにその顔じゃ危険きまわりないな」
しみじみと呟く。
ロキは声を出して笑うと
「そういう反応はリーダーとウル先輩依頼だ」
だって。2人はポリューミーな女性が好きで、根っから好きでいかに顔がきれいでも男には毛ほどの興味がなかったと。人としてはあれど、性的には全く無関心。
それが心地良かったらしい。
で、せっかくジョブを教えて貰ったし味方は欲しい。自分の立ち位置が分からないからな。だから初めて自分のジョブを伝えた。ただ、具現化が有能なのは俺の異世界知識のせいもあるから、そこは想像力だと誤魔化して。




