30.商業ギルド
マライアさんは目元だけで微笑んで構わんと言った。
艶やかな赤い髪に茶色い目。対比が鮮やかで、キツメの美人さんだ。
対してレイアスさんは金髪に緑の目の優しそうなこちらも美人さん。眼福だね。
「冒険者ギルドのギルドマスター、パンシェン公爵家のものと、ベルナ商会の商会長の紹介状だな。ふむ、期待してるぞ!」
マライアさんはそう告げて、ベルの話を聞く。
ほう、と呟くと楽しみだと伝えて席を外した。
登録はレイアスさんがしてくれるって。名前と年齢、出身地と身分証を出す。
一度席を立ってしばらくすると戻った。
「商品を見たいのだが」
それはベルにも言われていたから用意している。ベルナ商会に卸している品だ。
説明をすると
「ベルナ商会で買えるのか?」と問われ、ベルがはいと答えた。
「お取り置きしますか?特別に…ふふっ人気なのでね!」
ベルは上手いな。高速で頷くレイアスさん。可愛い。
コハクのしっぽが太ももを叩く。抱き上げればしがみ付いて来た。可愛いな、ほんと。もふもふもふもふ。
しっぽでバシバシしてるけど、喜んでるな、これは。
頭にキスをした時、ドアがノックされて開いた。
ギルドカードを渡してもらう。あれ、なんかキラキラしてる。
「シルバーカードだ。中級相当。凄いんだぞ!」
ベルを見たら
「普通はブロンズからだ。屋台や行商クラスだな。カスミのシルバーは店舗を構えている商店並み。しかも
品物の希少性とかも加味されて、だ。それだけ画期的なんだよ」
知らなかった。いいのかな?
「奇跡の水も、でしょ?いいのよ!」
笑顔で見送ってくれた。
またベルナ商会に戻ると、リノにシルバーと伝える。良かったですね、と喜んでくれた。こそばゆい。
追加で瓶を購入、リノが宿まで届けてくれるって。
俺はそのまま市場へ。サトウキビは無限ループって思ったけど、回帰は1度だけだったから追加購入。
もしくは産地まで刈り取りに行くか、だな。
例のおじさんの店にはまたサトウキビが増えていた。良かった。
「おう、この間の」
覚えててくれた。どうやらあの茎を大量に買ったから目立ったみたい。
「追加で買いたい」
と言えば
「定期的に買ってくれるならもっと沢山取り寄せるんだが、どうだ?」
それは嬉しい。
「俺は沢山欲しい。その、収穫者?の人は大丈夫なの?」
「喜んでたぞ!繁殖力が半端なくてな、邪魔だし狩るんだが捨てるしかなくて。最後の砦と、泣きつかれて。噛めば甘いだろ?オヤツにってさ。買ってくれるなら有難いぞ」
「定期的って言っても量が分からないから、でも入って来たら買うよ!かなり多くても大丈夫。流石に荷馬車何台分とかは保管に困るけど」
本当は困らないけどな。
そこで、ベルナ商会にお願いすることを考えつく。
「おじさん、保管場所が出来たら沢山でも買う」
そう伝えてまたベルナ商会へ。
「どうした?」
ベルは奥から出て来てくれた。黒糖の元である茎の保管について相談すると
「それならベルナ商会の倉庫に置けばいい。ただ、その分少し多く卸してもらえれば」
それでは俺に有利すぎる。卸値は瓶代を抜いた金額だからね。
で、話をして調味料も化粧品も3割引で卸すことにした。この付き合いは大切にってトーカが言ったから。また市場に戻っておじさんに多くても買う旨を伝えた。入荷したらベルナ商会に連絡してくれるって。
諸々を終えたらお昼だ。宿に戻る。
庭から入るとドアがノックされた。応えるとセイだ。
ドアを開けたら
「昼飯まだなら食べにどうだ?」
誘って貰ったけど、せっかくだし部屋に招き入れる。
「作るから食べて!」
嬉しそうに笑ったセイはソファで白玉とイナリと座っている。
ピザとパスタにしよう。今日はアラビアータ風パスタとクリームチーズピザ、コーンスープと生野菜のサラダ。ドレッシングはオリーブオイルと塩。
パパッと作ってテーブルに並べる。リクたちの分は下の台に用意した。
「セイ、出来たよ!」
「いい匂いで腹が減った」
笑って椅子に座る。コハクが膝に飛び乗って来た。
「どうぞ!」
水はレモン水。レモンは普通にレモンとして売ってる。
お水を飲んで驚いて、ピザを食べる。手掴みも大丈夫だね。驚いてパクパク食べて、スープを飲んでまだ驚いて野菜を食べて目を瞑ってパスタを一気に食べた。
ほぼ無言。夢中で食べてる。
俺は自分も食べて前脚でちょんちょんするイナリにも食べさせる。
セイは3人前くらい食べてから息を吐いた。
「美味すぎる…」
良かった。コハクを降ろすと片付けて紅茶を入れた。デザートは無い。俺にそんなスキルはないからな。
「どれも大変美味かった。カスミが調味料を売ってるのは聞いていたが、とんでもなく美味いな」
んー今日の料理には自作の調味料を殆ど使ってないけどな。
「あまり使ってないよ、今日の料理は」
オリーブオイルとバジルくらいか?バジルはこちらでもハーブだから普通だし。
「そうなのか?」
「うん。良かったら、夕食食べに来て!青い稲妻も呼ぶよ」
セイは嬉しそうに俺の頭を撫でると、また夜にと言って帰った。
リクがこっちを見ている。何だ?
(走らせろ!)
あーそうだね、また俺のせいでしばらく外に出られてないもんな。
「せっかくだし依頼を見てから出かけよう」
リクは
(フン)
と言ったけど嬉しそうだ。コハクを抱っこして建物の中からギルドに向かう。みんな一緒だ。
討伐の依頼は…常設で川魚。ん?普通の魚?
(巨大魚だな…3mくらい)
なんで常設?
(誰もやりたがらない…)
どうしよう?
(クリスがいたら簡単だ。受けなきゃクソだな!)
またトーカはお口悪いな、もう。
ノナさんの窓口で常設依頼を受けると伝えた。心配そうに見るノナさん。
そこにちょうど青い稲妻のメンバーが帰って来た。近場の討伐依頼だったらしい。
で、彼らも心配するから一緒に向かう事にした。
クリスがいたら瞬殺って大丈夫かな?
(心配ないぞ、お前の味方だ)
ならいっか。トーカは何と言っても優秀。裏があればすぐ分かる。
歩きながら、と思ったらリクに咥えられて背中に放り投げられた。相変わらずツンツンだ。お陰で楽ちんだけどな。イナリとコハクは走り回っている。
楽しそうでなにより。
依頼は夕方までに終わった。いや、楽しかった。
依頼先の川は歩いて1時間ほど。青い稲妻は早歩き、俺はリクに乗ってるから早い早い。30分で着いた。みんな体力あるね。
で、川魚。前に取った鱒みたいな感じかなって思ったら全然違った。
ってか魚じゃなくてアリゲーターだろ、これ。
道中、アマランさんに聞いたら鱗が硬いとか、牙が鋭いとか顎の力が強いとか泳ぐのが早いとか言っていた。
でもそういう魚もいるからと思っていたら、まんまワニだった。
魔魚なんだって。そりゃびっくりだよ。
鱗っていうか皮だよね、普通に。
うようよいたよ、川っていっても広くてね、浅瀬があってジャングルみたいなんだ。そりゃ隠れる場所もあるし獲物待ちには最適だよね。
ロキさんは雷魔法は使えないって。というかそれはドラゴンとか特殊な魔獣以外は使えない魔法みたい。
俺はクリスで具現化しちゃうからある意味なんでも使える。困ったな、雷でバリバリが一番楽なのに。
待てよ、変温動物なんだから冷たくしたり熱くすればいいんじゃない?
でも魔術師は氷魔法も使えないって。スキルがあれば使えるみたいだけどね。
それなら火魔法で熱湯にしたらいいよね。
土魔法で土手を作って退路を断って、火魔法でその範囲を熱湯にする。ファイラボールを複数沈めたらぼこぼこになった。ロキさんえげつない。
熱くって動けなくなったところをアマランさんとウルグさんが剣で首の後ろを一突き。お見事。
俺もやってみたけど皮が硬くって無理だった。クリスは楽々突いていた、悔しい。
そう、クリスは自分で作った剣を使っている。ずるいけどミスリルだ。例のミスリルを運んだ時に、欠片を少し取ってあってさ、リグで回帰したんだ。
それをクリスが剣にした。錬成だね、クリスが優秀だ。




