26.人助け
「主、あの子達は…」
そうだった。
「兄ちゃん!兄ちゃん…」
背中をざっくり切られた子は辛うじて息がある。
(リグ、戻せるか?)
(戻せますが、怪我をする前になります)
(不自然すぎる!)
最後はリクだ。だよな…でも見捨てるのも。
(主、私が上級ポーションを作りましょう)
それだ!
(クリス、頼むぞ!)
クリスまずは土に手を当てて瓶を作る。そこから子供たちに背を向けて何やらすると、瓶の中に透明な液体が揺れていた。
(主、上級ポーションです。傷にかけたらあとは飲ませて)
受け取るとケガをした子の背中に振りかける。ふわりと光ると、傷は塞がっていた。服はそのままだが、下の傷は治っている。
もう1人の子は泣きながら縋っていて気が付かない。
そっと体を起こして口に含ませるとゆっくりと飲んだ。少し残った分はもう1人の子の傷に振りかけた。
「えっ?」
「治せたと思う。完全では無いかもしれないが、死ぬことはない」
トーカがそう言ったからな。
「ほんと?」
背中を確認して傷が塞がっているのをみたら、また泣き始めた。
「兄ちゃん、良かった…」
「ここは危ない。戻るぞ!」
リクの背中には例の男性。そこに意識を失ったままの子供ともう1人の子も乗せる。
俺はその後ろを剣を抜いたままで付いて行った。
白玉は俺の肩、イナリとコハクは両隣だ。
生き物の気配はするが、襲われることもなくなんとかゴルダ山を出た。
すでに時間は午後1時。腹が減ったが仕方ない。リクの口に作っておいたサンドイッチを放り込み、白玉とイナリ、コハクにも食べさせる。
子供には奢るいわれもないが、パンと干し肉(カスミ作のローストオーク)を渡した。
「ありがと…」
空腹には勝てなかったのか、もぐもぐ食べて何故か泣いていた。
ポクポクとリクは歩く。俺は密かに空気の塊に乗ってスイスイ進んだ。疲れるからな。
歩くと2時間か距離だが、リクは早いし俺とクリスは空気の塊に乗ってるから早い。どんどん進んだ。
で、1時間で門まで帰って来た。
ちなみに男性も子供も起きなかった。門に着いたら兵士さんが驚いていた。
だよな?俺もそう思う。アルパカの背中に意識のない男性と子供2人だからな。
「少年、これは…?」
「えっと男性は毒きのこに触ってしまって…解毒剤は飲ませたけど意識が戻らなくて」
「ええっ!」
「子供は熊の爪で引っ掻かれて…ポーションで傷は治せたとと思う。でも目が覚めない」
「ええっ!!」
兵士は慌てて小屋に戻ると他の人も出て来た。
何やら街中に向かって走り出した人がいる。伝令かな。
「降ろすぞ!」
2人がかりでまず男性を降ろすと小屋の中に入れた。その後は子供たちをリクから降ろした。
「悪いが、念の為ここで待機だ。身分証を」
ギルドカードを出す。
「若いのにCランクか?それにしても利口なアルパカだな」
だよな?俺は手綱すら引いていない。
リクを労いながら水を飲ませ、口にサンドイッチを放り込む。
ちびっ子執事のクリスの頭も撫でる。たくさん働いたからな。そのまま雑談をしつつ、待つこと20分ほどか。
向こうからギルマスとノナさんが走って来た。マジで?なんか一大事か?
「カスミ、ケガは無いか?」
「無いぞ!俺は大丈夫だ」
体に触れて、全身くまなく。相変わらずだ。
ホッとしたのか、乱暴に頭を撫でられた。ノナさんも俺をみて安心している。
その後は小屋で何やら話をしてから出て来た。
「カスミ、大丈夫だからギルドに戻るぞ!」
彼らは教会から派遣される神官が見てくれるらしい。
何故かギルマスに抱き上げられて、ギルドに戻った。
いや、恥ずかしいぞ。すれ違う人に二度見されて居た堪れなくてギルマスの肩に顔を当ててギルドに戻って来た。
俺のライフはゴリゴリ削られている。
ギルドに着くと、バンッと扉を開けて中に入る。ギルマスはそのままズンズン進んで階段を上がり、部屋に入った。ここは?
「俺の部屋だ」
なんか雑然としているイメージだけど、めっちゃ片付いてる。いや、当たり前か。ヒルガさんが恭しく控えていた。いや、ギルドだよな、ここ。
「お帰りなさいませ…」
そのままソファに座る。何故かギルマスの膝の上だ。
「あの…?」
「気にするな!」
朗らかに言われた。ノナさんを見ると首を振る。ヒルガさんを見れば優しく微笑まれた。いや、違うんだけど。
頬を挟まれて間近にギルマスの顔が。だから、自分の顔の良さを少しは分かってくれ!
「カスミが助けた人は騎士だ。有名な人でな…」
マジで?俺は目立ちたくは無いんだけど。困った顔をすると
「カスミがまだ子供で良かった。貴族に迎えられるところだったぞ!」
やめてくれ…何故そうなる。
「まぁ、俺が牽制するから大丈夫だ」
「うん、お願いする」
優しく笑うと
「そうだな、早めに手を打とう」
ん、何が?ま、いいか。俺はしがない冒険者だ。
「昼は食べたか?」
「携帯食だけ…」
流石に気を失ってる人たちを置いて食べるのはな。
ヒルガさんがスッと部屋を出て行く。
「そうか…」
頭を撫でられる。イナリとコハクは足元に、白玉は肩の上にいる。俺がギルマスの膝の上だからな。
(ケッ浮気者が…)
コハク、不可抗力だぞ。
しばらくするとヒルガさんがサッと部屋に戻ると、ワゴンを押して来た。
テーブルの上にはほかほかのウインナーに厚焼きの卵、そして茹で野菜にスープ、パンだ。
紅茶も淹れてくれる。えっと…?2人前あるけど。
「食べていいぞ!」
膝の上で?首を傾げると
「食べさせてやろう!」
流石にそれは。困ってヒルガさんを見れば
「坊ちゃま、食べにくいです」
渋々、いやなんでだよ!降ろしてくれた。隣に。
ソファはそれなりに広いのに真横。近くね?
「世話してやるからな!」
…ギルマスは俺が小さな子供だと思ってないか?
ま、いい匂いで腹も減ったし気にしないぞ!
皿に取り分けてくれるヒルガさん。フォークを使って、ウインナーを食べる。パリッとしてて美味い。卵はふかふかだ。美味いな…。パンはフランス風。そちらも噛めば噛むほど味わい深い。たっぷりバターが塗られている。高級品だよな?味わって食べよう。
紅茶も香り高くて美味い。ふぅ、美味しかった。
ギルマスを見て
「美味しかった!」
「良かったぞ」
ドアがノックされ、ノナさんが入ってくる。
「神官が診た。カスミの言う通りで、毒と魔獣の爪痕だとさ。毒は本人が持っていた解毒剤で、子供は上級ポーションだとさ。持ってたのか?」
頷いた。詮索されると困るけど。
ギルマスは俺を見ると
「カスミ、事は急がないと不味そうだ。神官が目を付けたかもしれない」
えっ?
「上級ポーションは教会が販売する。錬金術師や魔術師でも作れるが、非常に珍しい。カスミはテイマーだと思っていたが…」
ヒルガさんが片付けを終わらせると、書類を出して来た。
「俺の庇護下に入れば教会と貴族からは守ってやれるがどうする?」
「庇護下って?」
「そのままの意味だ」
トーカに話しかける。
(トーカ?)
(守って貰うしか無さそうだ。裏は無い。カスミの為を考えてる。リクやイナリ、コハクもいるからな。教会が出て来たら一生、飼い殺しだぞ!)
無理っ!
「お願いします…」
どうやら選択肢はなさそうだ。トーカがそう言うならギルマスは安全だし。
言われるままにサインをした。
庇護下の意味を後で知って叫ぶのは少し先の話。
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