22.コハク
目を覚ました。ふかふかのもふもふだ。目の前にはゆらゆらするしっぽが3本…イナリだな。顔にもさもさしてもらう。ヤバい、最高!
ふっふふっふと顔を前に揺れるしっぽ。可愛い。手で撫でたら蹴られた。痛いよ、イナリ。
お尻の辺りでゆさゆさ揺れるしっぽ。コハクだな。手を背中に伸ばして撫でる。ん、ここはどこだ?
とても柔らかいぞ。
ドンと押された。
そして仰向けにされると目の前にコハクの顔。ヒゲが頬に当たるんだけど?
ペロン
口元を舐められた。
「コハク、お腹空いたのか?」
(違うわ!また俺の大切な所を揉んだから…挨拶だ)
なんでそれがそうなる?
(口元を舐めるのはキツネの愛情表現…あなたしか見えない最愛の人って感じかな)
トーカが心なしか嬉しそうに伝えてくる。
(そもそも、大事なところにキスする、揉む…これは求愛。しかもかなり熱烈な。そして口元を舐めるのは求愛を受け入れたという証。契りを交わしたんだぞ!)
色々追いつかないけど、俺はコハクに求愛、しかも熱烈な求愛をして…なぜかコハクはそれを受け入れたと。
蹴ったり悪態付いたりとなかなかな塩対応なのに。
「コハク、俺のことそんなに大好きだったのか!」
と言えば
(契約してる時点で気づいてよ!)
しっぽがわっさわっさと揺れる。
いやいや、分らんがな。俺は普通の人間だよ?
(この世界では常識だ!)
トーカ、それを早く教えてほしかった。
「契約している時点で俺のことが大好きってことか?」
(じゃなきゃ同衾しないだろ?それは人でも同じじゃないのか)
言われたらそうだけど、動物だし?温もりを求めただけかなってさ。
とりま、俺はコハクに熱烈なる求婚を行い、受け入れられた。契りを交わしたって要は結婚じゃないか!
まじか、俺は毛皮付きのもふもふと添い遂げるのか。
実際には聖獣は単なる獣でもなく、人型に成れる訳で。カスミは色々と盛大な勘違いをしていたのだ。
「コハク、改めてよろしくな!俺たち生涯添い遂げるみたいだから」
(ケッ、浮気するなよ!)
…もしやコハクも究極のツンデレさんか?
そのお腹の毛を掻き分けて股を見る。えっと、双子の鈴さんと小さな突起を発見。
もしやコハクは雄?!俺は雄と契りを交わしたのか…。
おかしい、俺はノーマル一筋だ。柔らかな女体を求む。
「コハク、俺はメスがいいぞ!」
顔面にコハクの蹴りがさく裂した。
なぜかトーカからも冷たい視線が飛ぶ。なんでだ?男としては当然だろう。
(聖獣には明確は性別は存在しない。契りを交わせばそれが交尾となるのだからな)
でもコハクのお股には毛に包まれたナニが。思わず手で触ってしまった。
ドガッ
(変態だとは思っていたがそこまでとは…)
コハクに顎を蹴られたあと、顔をけりけりされる。
(象徴であって雄の証ではない。大切な感覚器官なんだぞ?触るなんて伴侶でもあり得ない暴挙だ)
トーカの解説。あ、それは申し訳ない。
(人の場合だと**に指をピーして**して舐めまわして口にピーして**した感じか?)
…無いな、それはないな。例え夫婦であったとしても。いや結婚も彼女すらいなかった俺が言うのも何だが、無いな。
人として、キツネ?としての尊厳がヤバいだろ。あ、なるほど。
ツンと顎を逸らすコハク。
「えっとごめんな。一生大切にするからな」
そう言って耳にキスをした。
(それは子供が欲しいという催促…)
byトーカ
ぐほっ、いやいや何で?
コハクはちらちらと俺を見る。またなんかしちゃった?
(契りを交わす行為は済んでるが子供の話は別。それは魔力と体が混ざり合わないと出来ない)
ぴょっ…?
(…ほ、欲しいのなら…)
前脚で顔を覆ったコハク。マジか?そんなところで急に素直になるなよ。
カスミは聖獣が人と契約することが非常に稀であること。聖獣が受け入れられるほど相手に好意を持たないとしないことを知らない。
ましてや契りを交わすなんて非常に珍しいのだ。気に入らなければぶちのめしてしまえばいいだけで、素直に受け入れるということはそれだけ大好きだということ。
カスミは神由来のものを多数保有している。しかも、ジョブが二つにスキルは4つも保有している。
聖獣は強いものにしか懐かない。カスミは腐れジョブと言われても正しくその能力を把握し、スキルも合わせて手に入れたことで人としての評価がとても高かった。
さらにアルパカを連れていること。こちらも高評価なのだ。
本来アルパカは普通の生き物だが、リクは神が作ったので神獣相当だ。その聖なる魔力に吸い寄せられてイナリがやってきた。お腹が空いていたものあるが、何よりもリクの神力に寄って来たのだ。
コハクは5尾なので、成体。やがて老成すると9尾になる。成体が人と契約するということは、子を成すこととイコールだったりする。
コハクは口調こそつんつんだが、その実はカスミが大好きだった。
美味しい食事、優しく撫でる手、高い体温に整った顔。そばにいるとふわふわした気持ちになれる。カスミのそばはとても心地良いのだ。
成体になってから…初めて人に興味を持った。だからイナリよりツンデレになってしまう。それでもそばにいたい。契約とはそれだけ相手に依存するのだった。
もちろん、カスミは全く知らないが。
(焦らなくてもいいだろ?まだまだ長くそばにいるんだからな!)
トーカたまにいい事言うな!それもそうだな。
「コハク、お互いをもっとたくさん知る所からだな!ずっと一緒なんだから」
(フンッ小心者が!)
コハクはその言葉こそがカスミが好きだから子供が欲しいと言ってるのと同義だと気が付いていない。
「そこは慎重だと言ってくれ!大切なんだから、優しくしたいからな?俺はまだ子供だし…待てるだろ」
コハクはどうしようもなく嬉しかった。
大切、優しく…でもついツンとしてしまう。チラッと見ながら。耳の優しく撫でると体を抱き上げてくれる。まるで赤ちゃんみたいに…。
つい嬉しくて後ろ脚でけりけりしてしまった。
カスミは声を上げて笑うと
「あははっ、可愛いな!」
もうカスミにメロメロなコハクだった。
ちなみにカスミはその仕草が照れ隠しだと分かってもふもふのコハクが甘えてるみたいで、可愛くて仕方なかった。どこを触っても柔らかいし、毛はふわふわだし、お日様の匂いがするコハク。
厚みのある耳も可愛い。こうして無自覚にコハクを盛大にデレさせていたのだった。
さて、起きようかなと思ったらドアが開いた。えっ?マジで?怖い…。イナリとコハクを抱きしめて固まっていると
(ギルマスだな…)
トーカだ。
「我が主はただ今、伴侶と仲良く触れ合い中です。何かご用ですか?」
クリスが迎える。おい、伴侶って言ったな!
「ん、調子はどうかと思ってな。それと、夕飯を一緒にどうかと思って」
ギルマスは華麗に伴侶をスルーした。
クリスが振り向く。
「入って貰って」
まぁもう入っているがな。
そっとベッドに腰掛けると、俺のおでこに手を当てて
「少し落ち着いたか?」
あ…俺はもしかして泣いて縋って眠った?顔が赤くなる。
「あの、だいぶ楽でし…」
かんだ…恥ずかしい。
「そうか、良かった。何か食べられそうか?料理が得意な知り合いがいるから、夕飯はどうかと思ってな。ギルドに運んでもらったんだ。一緒に食わないか?青い稲妻も呼んだぞ」
「ありがとう。どこで食べるの?」
「ここで」
ここ?俺の部屋で?
「ここなら広いから」
確かに広いな。まぁせっかくの好意だし。
「お腹空いたから嬉しい」
ギルマスは爽やかな微笑むと
「なら運んでもらうぞ」
と一旦部屋を出て行こうとして、俺をベッドから起こして頬を両手で挟んでじっと見て、おでこにキスをして出て行った。コハクが背中を蹴る。
「コハク、大丈夫だ。体調を整えてくれただけ」
コハクは自分の伴侶が他のオスにキスされたのが嫌なだけだった。
ゆるゆる回です…




