20.危険な依頼4
バタバタっと奥からアマランさんたちが走って来た。
「大丈夫か?カスミ」
アマランさんだ。
「動けるか?掴まれ」
「ふらふらしてるぞ」
「顔色悪いぞ」
ウルグさん、ルキさん、ロキさんが矢継ぎ早に話しかけてくる。
「心配かけたみたいでごめん、少しふらつくけど大丈夫」
ウルグさんに抱えられて椅子に座らせて貰う。
「動けそうならベルシティに帰ろうと思う」
「大丈夫だよ、リクの背中に乗せて貰うから」
「ギルドから馬車が出る。横になっていればいい」
それは助かるかも。
「うん、それならすぐに出られる。みんなはご飯食べた?」
彼らは首を振る。まだ朝早いからな。
「みんな馬車に乗れるなら、何か作るよ」
「無理するなよ?」
「それくらいは大丈夫」
と言うことで、慌ただしく準備をして俺たちはギルドの馬車に乗った。ギルドとのやりとりはアマランさんちお任せだ。
チビっ子執事のクリスと白玉、イナリとコハクも一緒だ。
リクとカラスは外をポクポク歩いている。
馬車の中ではアマランさんが背中にクッションを当ててくれた。両側をアマランさんとウルグさんに挟まれ、向かいにルキさんとロキさん、クリスだ。
俺はポーチから炊き立てのご飯を取り出す。依頼前に準備していたんだぞ?で、おにぎりを握る。
具は鮭の塩焼き。お塩少々。ぎゅっきゅっと握る。それを一旦収納して次は豚汁。
豚バラ肉を切って玉ねぎ、長ネギ、山芋(冷凍)、ゴボウ(カット済み)、肉を炒めて水を投入。
出汁を入れて味噌を入れる。ごま油を入れて最後に味を整えて出来上がり。こんにゃくが欲しいけど、仕方ない。
普通の卵で出汁巻き卵を作る。出汁はもちろんあちらから持って来た毎日補充の顆粒だぞ?で、塩と砂糖でじっくりと3回に分けてくるくる巻いた。それを10セット作る。
イナリとコハクの圧がね?後でリクたちにもあげたいし、多めに作った。
最後におにぎりと豚汁、だし巻き卵を一人前ずつ盛り付けて渡す。
作ってる時から静かに手元をガン見のみんな。匂いもね?そそるから。
フォークを添えて
「どうぞ!スープは熱いから気を付けて…」
聞いてないな。
お替わりあるよって言ったからか、ゴクゴク飲んでる。いや、スープだけど具がたくさんあるからね?気を付けて、あぁだから。はいはい。
ウルグさんの背中をトントンする。盛大にむせてるよ。
「具が沢山あるから、飲むなら具を食べてからだよ」
「…」
返事なし。夢中で食べてる。
俺の目の前にもしっぽが8本、ゆらゆらだよ。まぁ喜んでくれたなら嬉しいけどな。
「お替わり!」
「俺も!」
「僕も」
「…」
ズイと差し出されるお椀。はい、お替わりですねーっと。
その後もバクバクズズームシャムシャとね。ものの数分で食べ終えた。早いね?
「美味かった!」
「あぁ最高だ」
「うまうま…」
「…」
ロキさんはひたすら頷く。
「良かった。ベルシティに着くのは3日後くらい?」
「そうだな、カスミの体調もあるからゆっくり進む。順調なら3日後だな」
「野営だね…」
「カスミは馬車で寝たらいいぞ?」
テントの方が寝心地良かったりして。
「テントがあるから、大丈夫だよ。見張りはお願いしたいけど」
「あぁ、それは任せろ!」
俺も豚汁と小さなおにぎりをつまんだから、眠くなってウルグさんに寄りかかって寝た。
馬車が止まった振動で目が覚めた。
あ、完全にウルグさんに寄りかかって、というか膝枕だ。足はアマランさんに乗っかってる。慌てて起きようとしたら
「慌てなくていいぞ?重くないから」
「そうだぞ?むしろ軽すぎる」
それは小さくなったからだよ。と大きな声で言いたい。
起こして貰う。
「休憩?」
「そろそろ昼だしな」
ウルグさんが抱えて馬車から降ろしてくれる。
リクが寄ってきた。
(寄越せ)
だよね?ポーチから桶を出して、隣に台とお皿を置く。
カラスの分も。
「熱いから気を付けてな」
バクバクバクバク
チラッとリクが僕を見る。はいはい、追加な!
リクのお皿に出汁巻き卵とお椀に豚汁を追加。まぁ沢山食べれるのはいい事だよな。
ポーチからテーブルを出して、さて何にしようか。振り返るとみんなが俺を見ている。責任重大な感じ。でもなぁ、昼だし。よし、アレにしよう。
小麦粉に塩とオリーブオイルを入れて捏ねる。そのまま適当な大きさで網焼き。軽くひっくり返してドンドン焼く。
焼き終わったらトマトソースを塗って玉ねぎ、ベーコン、バジル、チーズを乗せて網で焼く。次は味付き肉を細長くに切って、じゃがいもも乗せる。上からたっぷりチーズを掛けて、こちらも焼く。
最後はクリームソースに鮭、玉ねぎ、カマンベールチーズ、さらに追いチーズ。
ドンドン焼いて、焼けたら収納して。全部焼き終わったらクリスが具現化でカット。お皿に盛ってドンと追いた。
リクたちの分は別に保管済み。そちらもお皿に盛って台に乗せた。
「どうぞ!味は3種類あるからね!お好みでこっちの赤いヤツ掛けて。辛味だよ」
そう、ラー油だ。
俺はベーコンとお肉のピザにラー油を付ける。で、クリームピザにはコッソリハチミツをね。美味しいんだよ。
あ、ロキさんにハチミツ見つかった。
「カスミ、それは?」
「これは…甘い。でも少ししか無いから」
しょんぼりしてしまった。仕方ない。黒糖の固めてないヤツを出す。
「特別に。少ししかないからかけ過ぎないでね?」
高速で口にピザを押し込みつつ頷く面々。早速ロキさんがサッとかけてパクリ。目を見開く。
ルキさんもロキさんも前髪が長くて顔がよく分からないんだけど、開き過ぎて目が見えた。
紫のきれいな目だった。
「美味しい…」
俺はハチミツを堪能した。まだ沢山は食べられないから、一切れずつ。
結構沢山焼いたのに完売したよ、ご馳走様。
「カスミ、今回もとても美味かったぞ!ありがとな」
「いつも美味い!ありがとう」
「美味しいよ、本当に」
「うんうん」
良かったよ。片付けは手伝ってもらって(本当はリグに頼めばお皿もきれいになるんだけど)少し休憩。
俺は採取したあのコーヒーに、ミルクと黒糖を入れて飲んだ。なんか甘いのが飲みたくて。
ゴクリッ
「なぁ、金払うからその飲み物が欲しい」
うーん、ただでも良さそうだけどケジメかな。
「じゃあ100リラ」
お金を受け取って、貰ったカップに並々と注ぐ。
「苦いのが苦手なら牛乳入れて。まろやかになるよ」
アマランさんとウルグさんはブラックでも大丈夫だって。
「苦いけど美味い!」
だよね。今日は甘くしてるけど、ブラックでも飲める味。
ルキさんとロキさんは牛乳入れてた。
「うん、コクがあって美味しい。そのままだと苦い」
それも分かるよ。
いつの間にかルキさんとロキさんの髪の毛が分けられて、顔が見えた。とても整った顔だった。淡い金髪に紫の目。確かに目立つな、これは。
「顔を隠してたの?」
「色々とね…」
「大変だね…カッコいいと」
ルキさんとロキさんは顔を見合わせて、アマランさんとウルグさんも変な顔をした。
「カスミ、お前もだぞ?」
何が?目をパチパチさせると
「きれいなライトグレーの髪に水色の目はかなり目立つ」
へっ?黒髪に黒目じゃなくて…?
そういや、こっちに来てから鏡見てないかも。えっ俺ってそんな色なの?髪の毛短いから目線に入らなくて分からなかった。
へーイケメンになったのか?もしや。
「整った顔立ちだからな、子供とはいえ気を付けろよ!」
「子供でも?」
「いろんな奴がいるからなぁ」
「気を付けろよ!」
口々に言われたので高速で頷いた。怖いよ、マジで。俺自身は弱いからな。




