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チートなジョブで転移無双  作者: 綾瀬 律


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19.危険な依頼3

 なぁ、お前は一体何者なんだ、カスミ。

 その小さな体を見る。何者でもいいか、カスミはカスミだ。

 そばにはちびっこ執事とウサギにキツネ、鳥にアルパカまでいる。

 離れたがらないからな、慕われてんだろう。


 早く元気なれよ!また美味い調味料を買いたいからな。それに、もうこの小さな子が仲間のように思える。

 そうそう、ミスリルはちびっこ執事がどこからか取り出した。驚いたが、急ぐからと冒険者ギルドの人間がそのまま王都に走った。

 こいつが命懸けで運んだんだからな、頼むぜ。


 後から合流したパーティーの仲間もカスミを心配している。

 同じ依頼を受けた仲間として、カスミをベルシティに連れて帰るまでが仕事だ。

 その分、ギルドからは追加の報酬が出る。

 まぁ、今回のは完全なギルド側の失態だからな、当たり前だ。


 結局はカスミ1人が負担を負わされて、危うく死にかけたんだからな。

 いや、本当にたまたまなんだろう。

 いくら命が安い冒険者といえど、今回はカスミに全く過失が無い。


 流石に疲れたので、交代で休んだ。

 宿?ギルド併設の宿にただで泊まったさ。食事もギルド持ちだ。

 で、翌日の昼頃にやっとカスミが目を覚ました。

 神官の奴は血が足りていないからぼーっとするのだと言う。

 カスミを眠らせて部屋を出た。


「あなたは彼の味方ですか?」

 正面から聞いてきた。

「おうよ!」

「ギルドは信用できません。あなたは信用に足ると、言い切れますか?」

 正面から見据えて応える。

「たりめーだ!あんな子供を危険に晒すなんざ許されねぇ。依頼を受ける前から知り合いだ。守るぞ。もしあんたが敵対するなら、容赦しない」


 スッと目を逸らすと

「なら、いいでしょう。彼のジョブは治癒系ではない。ないが、多分途轍もない…。私は彼が治癒系のジョブでなければ、報告の義務がありません」

 見逃すってことだな。


「そんな分かりやすいジョブなら冒険者なんかしてねーよ。それに自作の調味料売ったりしないだろ」

 驚いた顔をする。

「自作の調味料…?」

「おう、めちゃくちゃ美味いぞ」


 手を差し出しやがった。

「やらねーよ!」

 諦めないな、コイツ。

 仕方ない、顎でギルド併設の食堂を指す。

 予想通りだな、カスミの調味料をかけた肉をパクパク食べている。やたらと上品に。


 最後に口元を拭うと

「間違いありませんね。商売をするならそちら系のジョブでしょう」

 完全にこちら側についたか?ま、信用はしてないがな。


「スキルは…不明ですよね?」

 俺はエールを呑みながら

「スキルもジョブも詮索しないのが本来だろ?少なくとも戦闘系のスキルじゃないことは間違いないだろう。じゃなきゃもう少し体も丈夫で、アルパカに振り落とされることもないだろうし」

 カスミの体には傷こそなかったが、服は土にまみれていた。アルパカに振り落とされたんだろう。


 合流地点からはかなり離れていた。逃げたが振り切れずにカスミは落ちて、奴らに捕まった。

 アルパカは敢えてそのまま逃走。どうしてか、俺たちの元に助けを求めにきた。

 どんだけ賢いんだよ?所詮は人間じゃ無い魔獣だ。

 なのに、人語を喋る、もちろん理解もしている。

 しかもあの速さと跳躍力に加えて捜索能力の高さも特筆すべきだろう。


 モスシティのギルマスには詳しく話していない。請け負ったのはベルシティだからな。帰るまで詳しいことは話さない。少なくともここの街の人間が関わっていることは分かっているからな。


 俺たちが交代でギルドの治療室に詰めているのも、ここのギルドが当てにならないからだ。いや、それを言うならベルシティのギルドだってクソだ。

 依頼を受ける前から情報が漏れてたんだ。最悪だ。

 カスミが起きられるようになったらさっさと帰らないとな。


「私は可哀想な少年冒険者の傷を確認したに過ぎない。治療行為はしていないので、手間賃くらいギルドから供えて貰えばいいでしょう。では、これで…」

 暗に、この件には関わらないと言ってるんだな。助かる。

「ギルドには多めに要求したらいい」

 神官ははじめて薄く笑みを見せて、去って行った。

 さてと、明日には無理にでもここを出たいな。





 俺は目を覚ました。ん、ふかふかして暖かい。目の前には5本のしっぽ。コハクか…もふもふ。良きだね。首元が暖かいと思ったら白玉がマフラーみたいに腹を俺の首に載せていた。そらあったかいわな。リアルラビットファーだ。


 背中ももふもふだ。お尻をさわさわとしっぽを撫でる。イナリだな。もふもふは良きだな。

 腹の上には優しく乗るリク。器用に足を折りたたんで顎を乗せている。その頭はふかふかだ。

 どうやら囲まれている。頭の上が温かいから、カラスだな。頭を腹に敷いて温め中だ。俺の頭は卵か?


 もふもふ…もふもふ…ふかふかっ

 バゴッ

 痛いよ、コハク。ふぁさふぁさしてるしっぽを見たら本能的にな?

 だからイナリも蹴るなよ!ちょっと尻を触っただけだろう?柔らかな感触だったぞ。


 腹減ったな。起きるか。白玉をどけて、そっと起き上がる。ふらっとしたがまぁ大丈夫だ。

 ポーチは離れたところにあったから、亜空間から直接パックご飯と味噌汁を取り出す。

 もう、かけて啜ろう。


 ガツガツ、美味い…ズズー。ぷはぁ。少し楽になった。

 えっと目線が刺さるんだけど?

 はいはい、焼いてあった肉でいいか。お皿に盛ってそれぞれ出した。桶に水も入れるぞ!

 クリスがいつの間にかいた。


「主、起きて大丈夫ですか?」

「少しふらふらするがな」

 甲斐甲斐しく世話をされた。まずは着替え。それから顔と首筋をタオルで拭いてくれ、その後に浄化。


「クリスは俺の亜空間から物を取り出せるのか?」

「はい、主の手を具現化して」

 え、怖い。

「実際には透明な手ですかね?手首から先があるとかそんな怖いことはなくて。あくまでもそんな感じで。主の手を具現化しないと取り出せないので」

 あ、ミスリルは?

「はい、なのでもう渡しました」

 良かった。死にかけてミスリルも渡せないじゃ話にならない。


 それからリクとクリスから起きたことを聞く。いや、マジで死にかけたんだな、俺。

「主が死にかけると回帰も発動しません。ここは回帰に具現化による実態を持たせて、やはり具現化で擬似人格を付与しましょう。命の危機にある時は、己の判断で発動できるように」

 確かにな。俺単体では弱いからな。今回のことで思い知ったわ。

「そうだな、クリス。回帰を具現化しろ」

「はい、主…」


 ふわんと光るとそこにはトーカみたいな背中に羽の生えた髪の長い女の子がいた。白い髪に紫の目。美人さんだ。ちっこいけどな。

「私は回帰が実体化したものです主、名を下さい」

 うーんこの子はちょっとお堅い感じ?

 不良みたいなトーカ、ちびっこ執事のクリス、そして回帰ジョブの女の子。


 回帰は英語でリグレッションだったかな。

 ならリグにしよう。

「リグ、よろしく!」

「私はリグ。よろしくお願いします。主様」

 胸に手を当てて頭を下げるリグ。


 服装はやっぱり白い服に帯が紫。で気になるしそっと掴んで背中を確認。

 服は羽と同化してる。服って脱げるのかな。でも女の子を脱がすわけにもいかないし。

 ちらっとトーカを見るとしっかりを自分を抱きしめて

「ケッ変態が!」

 と言われた。優しくしてよ、一応ケガ明けなんだから。


「飯もあれだけ食えりゃ動けんだろ!早く寝ぐらに帰ろうぜ!」

 まぁそれもそうだな。宿のベッドで安心して休みたい。今回の件は明らかにギルド側から情報が漏れたと思われるし。それでも悪意は感じなかったから。

 ずいぶん遠くまで来たんだな、俺は。いや、連れて来られたか。


「もう帰れるのかな?」

「はい、アマラン殿がいます。青の稲妻も待機していますので。声をかけてきます。ゆっくり来てください」

 クリスが部屋を出て行った。

 リクに掴まって立ち上がる。少しふらつく。リクの首に縋るとしっかりと支えてくれた。

 ツンデレだけど優しいよな。


 扉はトーカが開けてリクが鼻でバンと開いた。

 ふふっ、頼もしい。

 結局、自分のケガは自分で治したんだけど、リクがアマランさんを呼びに行ってくれた筈だ。心配もさせただろうし。こりゃ彼らには美味しい食事をご馳走しないとなぁ。

 まずはベルシティに帰ろう。


 バタバタっと奥からアマランさんたちが走って来た。




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