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チートなジョブで転移無双  作者: 綾瀬 律


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14.リノの回想

 私はベルシティにあるベルナ商会に勤めている。ベルシティの中でも老舗だが、ここまで大きくなったのは現会長のベルリラ様のお父上、ベルソナ様の頑張りによる。


 それまではごく普通の店だったが、ベルソナ様は各街によって違う特産品に目を付けた。

 そして王都と、王都周りの各街に支店を設けた。各街ごとに商品を仕入れて別の街へ。


 簡単な事のように思うが、気付きは大切だ。街の中で完結していても、商売は成り立つのだから。こうして商品を街ごとに回すことで繁盛した。


 今やベルシティを代表すると言ってもいいくらいの大店だ。しかし、これもベルソナ様の考えでお客さんに貴賎は問わない。来てくれるお客さんはみんな平等に。

 だから冒険者でも、貧しい身なりの子供でも受け入れる。


 大店になると、貧しいものを締め出す店もある。しかし、冒険者や商人なんていつどう化けるか分からない。貧しい冒険者が大成して上客になるなんてことはままある。

 そうしてベルナ商会は大きくなって来た。


 会長の息子であるベルドラ坊ちゃんもとても気さくな人柄だ。高位貴族になると、商会に足を運ばすカタログでツケ買いをする。しかし、ベルナ商会は相手が誰であれツケもカタログ買いも認めていない。


 だから高位貴族は顧客にならない。それでも全く問題ない。嗜好品もあるにはあるが、生活用品や冒険者用の武器、野営道具、食料品を主に扱う商会としては高位貴族は特別客としての旨みが無いのだ。


 ベルドラ坊ちゃんが隣のモスシティに行って、帰って来た。何やら面白い情報を持って。

 身分証のない者が数十名もモスシティに入ろうとしたのだとか。もちろん、流民の類は街に入れない。そのまま捕縛されて牢に入ったらしい。


 そしてどうやら彼らは異世界人だと言ったとか。

 この世界にはたまにこういう現象が起きる。身分証を持っていたのは勇者、聖女、賢者、剣聖などの高位ジョブの者たち。同じような服装であったから、間違いない。

 彼らはそのままモスシティから王都に送られた。


 身分証のあるものは王宮で抱える為、他のものは労役を課すか、または引き取り手の工房があれば委ねる為に。そして、そういう時期に合わせて、村からやって来る若者がいる。

 そういう若者はだいだい、大成するのだ。不思議なことに。


 モスシティから戻ったベルドラ坊ちゃんも、モスシティに向かう途中でまだ少年という年頃の子に会ったという。そして、広場で再会してその若者はやっぱり大当たりだった。


 調味料だけでも凄いのに、スカスカになったテーブルに並べ始めたのは美容系の商品。

「こっちは女性用、こっちは男性用」

 むっ、男性用もあるのか。

 試しにと手の甲に出してもらったそれはスッと肌に馴染んで、しかも爽やかな香りだ。


 時期によってはとても乾燥するから、肌がガサガサする時があって気になっていた。

 値段はやはり高い。とは言え、この滑らかさ。妥当だろう。


 これは女性用も買ってみよう。そう思ったら

「どんな評価か気になるし、良かったら一揃え渡すから感想を聞かせてよ!」


 新品を渡された。

「坊ちゃんと奥様にも相談します!」

 まだ小さいのにパリッとスーツを着て慇懃に頭を下げるカスミの従者と無表情ながら少し口角を上げて送り出してくれるカスミ。その肩には角うさぎ、足元にはキツネ。


 しっぽが複数あるキツネは神の使いと言われていて聖なるものと認識される。

 それが2匹。ベルドラ坊ちゃん、彼は間違いなく化けますよ!


 商品を手に商会に戻る。

 ベルドラ坊ちゃんにベルリラ会長、そして会長の奥様のアンナ様が揃っていた。

「予想以上でした」

 彼が試食としてお肉を焼いていたことを話すと、ベルリラ会長が驚いた。

「そんな販売方法があるのか!」

 私も驚いたからな。

「はい。二つの味は無料、それ以上は有料で」


 私の見た限り、試食した人はみんな買っていた。分かる、魔獣の肉は普通の肉よりかなり安い。しかし、硬くて臭い。いくら安くても…。食えない冒険者が泣く泣く食べる程度の認識なのだ。


 それが美味く食べられるのなら、節約のためにと考えるのは自然だ。調味料は安くないが、それでも相当数使える。

 あれならたらふく食べたい冒険者にはいいだろう。


 さらに顔につけるアレだ。

 その瓶をみんながガン見する。奥様の目が真剣だ。いっそ怖いくらい。

「こ、これは…その乾燥した肌を整えて、瑞々しく保つ…」

「なん、ですって…?」

 アンナ様の目が光った。怖い。


「で、ですからお肌を整えて瑞々しく保つ…」

 サッと手に取る。顔につけようとしたので

「待って下さい。お顔につけるのは洗顔後。実感するにはまず手の甲に」

 手の甲に出して塗り広げる。


「まぁ…」

 明らかに艶々だ。もう一つの方も付ける。ぷるんぷるんだ。その効果はテキメン。

「ん、んん…これは私が責任を持って試しましょう!」

 胸に抱えた。高速で頷く私たち。奥様に逆らってはいけない。


「こちらは男性用で…」

 ベルドラ様が素早く確保して手の甲に付ける。うるつやだ。

「ならこれは僕が…」


 まだありますよ。ベルリラ会長。

「こちらは髪の毛に付ける…」

 ベルリラ会長の手を掻い潜ってアンナ様が確保した。

「髪の毛が長い方が効果はよく分かりましてよ?」

 会長が悲しそうな顔をする。


「お、お二人で試してみられては?ほんの一滴でいいそうですし」

「そうね、では2人で…」

 ふう、良かった。私は別のものを預かっているからな。


 翌日、アンナ様がお店に来た。あれは、凄いな。明らかにお顔の艶が違う。髪の毛も艶々だ。あ、会長の髪の毛もしっとりと艶やかだ。

 ベルドラ坊ちゃんのお顔もサッパリ艶々。これはまた凄い。かく言う私もだ。ふふっ。


 目の前にアンナ様が立っていた。

「おはようございます、奥様。さらに美しくなられましたな」

「ふふっそうでしょ。効果は絶大でしてよ?で、あなたは何を頂いたのかしら?」

 え?バレてる。背中を汗が伝う。


「分かるわ!だってお肌も艶々髪の毛もうるつやで、手までしっとり。ね?」

 にっこり笑うアンナ様。怖い。

 実は昨日、カスミに

「これさ、作ってみたけど自分ではよく分からなくて。良いものが出来たと思うんだけど、試して感想を聞かせてよ」

 と預かったのは滑らかなクリーム状のものだ。

「オールインワン。えっとつまり、なんにでも使える。顔も体も髪の毛も。潤いを足す?」


 隣のちびっ子執事が

「主は口下手でして。水分を閉じ込めて潤いを逃さない、そういうクリームです。よく伸びるのでほんの少量でいいです。髪の毛に付ける時は顔や体に使った残りで充分です!」

 だそうだ。確かにわかりやすい説明だ。


 で、それは私へと渡されたので使ってみた。うるうるつやつやだった。アンナ様にはバレバレだったようだが。

「試作品とのことで渡されました」

 そっと手を出すアンナ様。大慌てで自室から取って来る。そのクリームを見て少し手に乗せると

「まぁこれもいいわね」

 目がキランとした。

「今日確か納品にくるのよね?」

「は、はい」

 クリームは、返してもらえた。カスミ、骨は拾うからな。



 そんなことは知らないカスミだった。




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