117.新婚旅行の前夜
完全に食後のコーヒーが定着したな。
セイが
「カスミ、あの箱で食べた甘いのが食いたい」
箱?
耳元で
「ラウラリアダンジョンの朝」
あ、あークレープか。そういや、あれ以来作ってないかもな。
「何?」「秘密ダメ」
俺は気まずそうに
「ルキたちとそのな、離れていた時の話だ」
「食べる」「仲間外れいや」外しては無いぞ、むしろ知ってるのはセイだけだ。
…はい、作ります。両側の圧が凄い。
甘いのならチョコバナナクレープ生クリーム載せだな。もうこの際だからカスタードも作るか。
卵と牛乳と砂糖に薄力粉。奮発して砂糖は精製糖にする。
卵黄と砂糖を混ぜ、薄力粉を投入してまた混ぜる。ここで混ぜ過ぎちゃダメだ。
温めた牛乳を少しずつ加えて弱火で温めながらヘラで混ぜる。こういう時は魔道具のコンロを使う。
クリスに具現化させたバニラエッセンスを入れればふわりと甘い香りが立つ。
ゴクリ
ふふふっ、まだカスタードクリームが出来ただけだぞ!粗熱を取っているうちに、クレープを焼く。
ドンドンとな。ここではクリスが活躍。で、焼き終わるとカットバナナにチョコ、そしてカスタードをイン。最後に巻き終わった上に生クリームを載せれば完成だ。
「美味しい」「絶対美味しい」
食べてから言ってな、ルキ、ロキ。
「こりゃまた美味そうだな」「早く食わせろ」
はいはい、少し待ってな。
セイ、顔が近い!みんなに渡すと
「美味い」「美味い!」
「美味しい」「絶品」
「おぉ、やっと食えた」
美味いよな、しかも甘さを追加したからな。はははっ、カスタード最強。
それからオヤツに散々カスタードをねだられて大変な思いをするのは少し先の話だ。
卵白が余ったからそのうちシフォンケーキでも焼くか。
みんなも大満足でおやつタイムが終わった。
夕食まで各自の部屋で休むことになり、俺は自室に向かった。で、なんでルキとロキはついて来るんだ?
俺とルキ、ロキの部屋は隣同士。部屋から部屋は行き来できる扉がある。で、さらにその先にある部屋は3人の寝室だ。
当たり前みたいに俺の部屋に入ると
「子供いない」「3人」
甘えるように見上げる双子。いやまだ昼だし。
という俺の言葉は全無理された。
俺はベッドで疲れ果てていた。隣の双子は満足そうだ。俺はまだ体力が無いんだ。全く。でもな、そのきれいな顔を綻ばせている双子はやっぱりとても可愛くて。仕方ない。俺もどうやら相当に甘い。
少し微睡んで目を開ける。ん、そろそろ夕食の用意かな。双子を起こして俺は部屋を出る。
厨房に行くとタウロスが満面の笑みで待っていた。
「お待ちしておりました」
そこからクリスも手伝ってうなぎ尽くしだ。
鰻巻き卵、蒲焼、白焼、そして、うなぎのひつまぶし。ダシも用意済み。山椒もあるぞ!
ご飯もたくさん炊いた。
よし、味見だ。
鰻巻き卵、お、おぉー柔らかっ。文句なしに美味い。
蒲焼と白焼はタウロスが味見。
「ほっほ…これはまた…バクバク」
美味いだろう、そうだろう。
で、ひつまぶし。深い皿に少しだけ普通に丼、うまぁいい、うまぁい…こだました。
薬味をもりもりでもう一口。うまぁいいー!
最後はダシをかけて…はぁ、もう最高だ。美味し過ぎてため息を吐いたぞ。隣でタウロスもほぉ、とため息。
「さすがです、カスミ様」
ハイタッチだ。
ん?なんか寒気が…おわっ。厨房のドアに双子が張り付いていた。怖いだろ!
ドアを開けると
「いい匂い」「もう美味しい」
タウロスは笑って
「そりゃカスミ坊ちゃんが作るんですから美味いですよ」
少し早いが、双子の圧に負けて夕食を並べる。
…大丈夫みたいだな。すでにみんな食堂に揃っていた。
で、食べ始める。
「ふわふわにふわふわだ」「ふわふわがふわふわ」双子の語彙力が死んでるな。
帰って来たセイも
「ふわっふわとふわふわだ…」
ふわふわ以外の感想無いのかよ?
「ふわふわだな」「間違いない」
ふわふわふわふわ言いながら食べる。まぁ確かにふわふわだな。
さて、次は…
「この丼は3通りの食べ方をするからな!」
説明をしながら食べ進む。
「ご飯が溶けた」
「無くなった」
「消えた」
きえてねーよ。腹に入ってんだろう!
「次は薬味をたっぷりと載せて」
バクバク食うな。うなぎもご飯も次々と減って行く。俺以外はご飯どんぶり2杯目だ。
「ご飯が溶けた」
「無くなった」
「消えた」
きえてねーよ。腹に入ってんだろう!2度目だ。
「最後はこのダシを掛けて…あ、海苔も忘れんなよ!」
一推しだ。さぁ、驚け…うなぎにひれ伏すのだ!
「ご飯が溶けた」
「無くなった」
「消えた」
きえてねーよ。腹に入ってんだろう!3度目だな。
「お替わり」
「追加」
「消えたからもう一度」
「もっと」
「「出汁も追加で!!」」
タウロスとヒルガ、クリスがおおいそがしだ。まぁな、美味いからな。
何巡かしてようやく食べ終わった。ってかほんとどこに入ったんだ?お腹ぽっこりとかしてないぞ?
ルキのお腹を撫でる。
「欲しいの」「欲張り」
あ?…やべっルキの目が潤んでる。
待てやめろ…うわぁ!
クリスの目が冷たい。
「ほんと懲りない人ですね…」
う、それは…。ルキが俺を軽く睨みながら前屈みになっていた。ようやく体を起こすと
「もう…ダメ」
「いや、ごめん」
座ってる時に腹は触っちゃダメだな。
居間に移動してお茶を飲む。ズズーッ美味い!
みんなも静かに味わっている。
「ふう、いやほんとカスミの作る飯は美味いな」
「あぁ、一生離れないって思ってたが…カスミのジョブと結婚するならもう家族だからな。現実になったな」
「本当に、カスミに出会えたのは幸運だった」
「カスミの調味料に気が付いたのは僕」
「僕たち」
「いやまぁな、俺たちは食えりゃって感じだったからな。ルキとロキはやっぱりその辺、いいとこの坊ちゃんだから」
「そのお陰で仲良くなった」
「僕たちの勝利」
誰にどう勝ったのか不明だが、まぁあながち間違いでは無い。
まったりとしていると
「しゅわしゅわ…」「飲みたい」
それな、俺も少し開放感で飲みたかったんだ。
「だな!俺も明日から休暇だし」
「飲むか!」「飲もう」
となった。もちろん、その後は美味しくしゅわしゅわを飲んで、食べて…いつも通り記憶が飛んだ。
目が覚めると俺は床に寝転ぶリクに寄りかかるようにして寝ていた。服は…ほぼ着てないな。で、双子も俺を挟むようにリクにもたれている。
ごめんな、リク。重かったな。毛刈りをしたリクはほっそりしている。つるんとした腹に顔を埋める。
ドカッ
だから痛いし。
で、何がどうなったんだ?
いつもなら冷たい目で見るトーカやリグも人型でウルグやアマランと折り重なっている。
服は…ほぼ着てないな。リグ、色々見えてんぞ?俺の息子はリグには反応しないが。
もぞっ
「ん、カスミ…もっと」
寝言がエグいな。ぎゅっと抱きしめられた。えっと、ルキ、ロキ…服着たい。
見回すとみんな乱れているし、ナニがあったんだ?そっと転移した。よし、今のうちに風呂入ろう。
服を着て自室に戻るとさっさと風呂に入った。しかしカオスだったな。後で何があったかコハクに聞こう。
怒ってないといいけど。可愛く嫉妬するからなぁ。もさもさの腹に顔面ダイブだ。
お湯から上がってサッパリだ。着替えて、リクは散歩するかな?あのカオスな居間に行きたく無いんだが。
「トーカ、リクどうしてる?」
(起き上がってるぞ)
「居間から出してやって」
(仕方ねーな)
居間の扉がそっと開いてリクが外に出て来た。体を震わせる。
(散歩連れてけ)
はいよ、リクのツルツルな背中に手を当てて外に出た。少し曇りかな?
草の香り、夏の匂いだ。
リクはポクポクと歩く。可愛い。俺も走る。この世界は乾燥してるから、陽がささないと涼しい。
立ち止まって涼むリクに寄り添う。あったかいリクはツルツルでも気持ちいい。
抱きしめていると
「カスミ!」
セイが走って来た。
「おはよう」「おはよう」
服は乱れてるが爽やかだ。
「覚えてるか?」「いや、全く」
「だよな…」
顔を見合わせて笑った。
「まぁ乱行してなきゃセーフだろ」
「だな」
並んで芝生に座る。
「なんか天気があやしいが?」
「大丈夫だろ。朝飯食うか」
「そうだな、みんなを起こさないとな」
屋敷に戻った。
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