112.学院の始まりとあれこれ
ここからようやくカスミ視点
王立学院の入学式の日。
俺は小っ恥ずかしい事にセイに手を引かれて王立学院の廊下を歩いている。セイは自分の顔面の良さを自覚して欲しい。俺は見せ物じゃないか。全く、目立ちたくないのに。
中身のおっさんが泣いてるぞ!
馬車から降りる時も、講堂に向かう時も俺の手を握りやがった。視線がささる。
「カスミには婚約者がいないからな、牽制するぞ」
とは聞いていた。聞いていたが、まさかのコレかよ。
講堂での話が終わるとさっさと人に紛れて教室に向かった。というか、密かに隠蔽を発動した。
背後からも視線が凄かったんだぞ!まったく、セイは美貌の未婚公爵令息。その立ち位置を理解しろ!
教室では自信なさそうなグレゴリー侯爵家のミルロスが話しかけて来た。少し前から目を付けていた南国の果物を商っている商会。それが彼の実家だ。
「裏がなく素直な少年だな、友達にならない奴はクソだ!」
久々の毒舌なトーカが言うなら間違いない。だから名乗った。純粋な驚きと賛辞。そこには邪な気持ちは無かった。
セイが太鼓判を押す人物だから、まぁ大丈夫だろう。変な女が話しかけて来たが無視だ!
そしたらブランに注意された。相変わらずいい子ちゃんだな。
初日はそんな感じで終わり。カエサル導師とセイがクラス担任となった。ヤラセだな?全く過保護だ。さらに帰りもセイに手を引かれて帰った。
入学式の前日はベルシティの屋敷から王都の屋敷に転移していて、1泊し学院の入学式に出席、馬車に乗って王都の屋敷に帰って来た。
馬車の扉が開くと手が出て来た。マジかよ、なんでここにいるんだ?依頼があるから泊まりで他の街に行ってただろ?だから昨日はこっちに泊まったのに。
仕方なくその手に手を載せれば引っ張られた。
「お帰りカスミ」
「浮気してない?」
なんでそうなる?それと暑苦しいわ!
「依頼はどうした?」
「終わらせた」「カスミのそばがいい」
子供か!と思った。相変わらず俺が絡むとポンコツだ。
ぎゅうぎゅうと抱き付く双子。
「降りたいんだが?」
笑いながら言うセイに
「お帰りのキスする」
「キスするまで待つ」
やめろ、恥ずかしいだろ!
セイは俺たちを押し退けて馬車から降りた。3人の頭を撫でると
「せめて中でやれ」
いや、やることはいいのかよ?
双子に引き摺られて屋敷に入ると…キスされた。だから昼間っから濃いだろうが、はぁ。
「心配なのは分かるがな、もう結婚してるんだから…心配し過ぎだ」
「でも」「でも…」
もじもじと俺を見る。
「分かってる、安心しろ!」
頬を撫でてキスをした。もう家族だからな。自分たちがそばにいない時間が心配なんだろう。
俺たちは予定通り、俺が13才の準成人を迎える時に結婚した。えっ、ロキは死んだんじゃないかって?
もちろん生きてるぞ!
俺とルキ以外は本当に死んでしまったと思ってたようだ。俺もちょっといっぱいいっぱいで、雑な説明しか出来なかったからなぁ。
ルキも僕のせいでロキが…と取り乱していて、しかもカスミがドロップすると思ったのにと謎の発言をして周りも絶賛混乱していたから、誤解するのも仕方ない。
俺は俺で回帰出来なかった、とロキに縋り付いて泣いてたしな。リヴ兄様とお義父様が屋敷に来た時には事実を知っている俺とルキは疲れ果てて寝ているし、セイは触れば分かるはずなのに、思い込みのせいか死んだと思ってるし。
で、いわゆる仮死状態で回復させていると言ったらルキと一緒にめちゃくちゃ怒られた。お義父さまは情報過多で目を回していたが、リヴ兄様には紛らわしいことをするな!と。でも仕方ないのにな?
それも懐かしい思い出だ。
何故だかダンジョンで回帰は使えなかったからな、体内に入った呪いを凍結させるしか無かった。呪いごと体を凍らせてその進行を止めた。
リグが回帰出来ないなら…呪いを解くしかない。ひとまず、このまま凍らせた状態で屋敷に戻ることにした。
そこで俺の部屋のベッドに横たえるとまたリグに回帰を命じる。でも、呪いが強すぎるので仮死状態でゆっくり回帰することになった。しばらくは凍った影響もあって冷たかったからなぁ。誤解もやむなしか。
回帰すると足首が淡く光り、仮死状態ではあるが間違いなく回復することが分かりホッとした。しかし、あれは一体なんなのだ。呪いであることと、触れると腐るのは分かった。しかし、トーカでもそれ以上は分からなかった。
ラウラリアダンジョンは閉鎖され、調査する事になった。しかし、危険でなかなか進まない。
もうあんな思いをするのは嫌だ。セイやアマランたちとも話し合い、最後の手段に出る事にした。
それは、王家に頼る事。
実は王族は呪術が使える。セイの触診はその呪術のスキルだ。呪う相手を知るためのスキル。これは極秘事項だが、ロキに取り憑いた呪い。その根幹を知るために。
危険な呪いを知るために必要と判断したお父様が、現国王に掛け合い、王族の呪術についてその研究に加えてもらったのだ。
大切な人が目の前で腐っていく様を見たい人は居ないだろう。
その研究を通じて同じ年の双子、第三王子のレオハルトと、第二王女のブランシュとは顔見知りになった。
2人とも王族なのに全くの無垢だった。だから友達になった。
そして、ロキは呪いを受けてから1週間後に目を覚ました。リグで回帰させた後もゆっくりと回帰していたので、しばらく目が覚めなかった。何度もトーカに大丈夫か聞いて、いい加減うざがられた。
やっと目を覚ましたロキは
「カスミ、大好き」
と言った。その時、初めてこの体が疼いた。ロキが愛おしくて。そうか、俺はまだ本当に双子に心を寄せていなかったんだ。
壁を作っていたのは俺。中身のおっさんが現実を受け入れられなかったんだ。
その後、3人でちゃんと話し合った。俺が故郷のもう会えない母親を想って泣いた事、そしてその貴重な真珠が取れる湖に向かった事。
「もしかして?」
「お前たちにも、贈ってやりたかったんだ。きっと似合うから、お揃いにしたくて」
双子は驚いて、俯いた。
それから双子の葛藤と、俺の反応に、喜んでもらえると思ったのに俺は泣き出していなくなってしまった。その事に傷付いて安易に人肌を求めたと聞いた。
年頃なんだから責められない。しかも、女装の男性。マジかよ。
そこで女に走らないところがやっぱりルキとロキで、愛おしいと思った。
何もしてない、いやしてなくは無いと話を聞く。どうやら自慰を手伝って貰ったようだ。
俺としてもどう反応していいのやら。俺がひたすら受け身だった事も影響したようだ。どこかで不安だったのかもしれない。
その件については俺の説明不足もある。双子も泣いてもう浮気しないと誓った。そもそも浮気してないだろ?
で、仲直りした。
そして、予定通りに衣装を渡し、新年のパーティーに出席した。その時の俺たちの衣装を見たブランシェが、自分のもデザインしろとなり、何故か王族全員のデザインをやらされる事になった。作るのは無理だから元のデザインだけだ。後は丸投げ。
で、特例として俺とセイ、そして双子のパーティーへの出席を免除させた。ふははっ交換条件だ。
そして、年が明けた3月に俺は13才になり、1月に19才になったルキとロキと婚姻した。もっとも公爵家の特例による婚姻だから、公にはならない。
そう、俺たちだけが知っていたらいいのだ。
ロキの体調が戻った日、話し合いをした日だからまだ年が明ける前の事。久しぶりに双子と夜を共にした。
同じベッドに横たわって
「ルキ、ロキ…抱いていいか?」
その言葉に驚き、俺に触れてから双子は顔を真っ赤にして頷いた。可愛かった、そうとても。
そして…満たされた。やっと…本当の居場所を見つけた気がした。
でも
「もっと…」
2人を相手にする俺のことを少しは考えろよ!双子の愛は重くて…それからしばらく起き上がれなかった。
なんとか年を越す前には落ち着いたが
「ものすごく寂しかった」
「カスミ不足…」
そりゃな、ラウラリアダンジョンで俺がドロップするって思考になったならかなりヤバいだろ。結果として、それがキッカケで俺たちは話し合い、そして俺も自分の気持ちに気がつけたが。
ロキを失うなんて考えられなかったから。
そんな甘い日々を過ごしていたある日、ロキが宣言した。
「カスミの子供を産む」
産みたいじゃないのな?いや、無理だろ。オス同士だ。
コハクじゃあるまいし。
そう、コハクと俺の子が産まれた。白いもさもさの子キツネはひたすら可愛かった。可愛がりすぎて双子とコハクが嫉妬するくらい可愛かった。
で、子供?産めないだろ?
「クリスに女の子にしてもらう」
ごめん、意味がわからん。するとクリスが
「一時的に、体を女性へと作り変えるんです。他国ではそういう感じの薬も開発されていますし」
マジで?
「そう、魔女の秘薬…それがあれば男でも妊娠する」
「でも、クリスのは違うんだよな?」
「はい、体を女性に作り変えるんです」
「おっぱいある?」
「あります」
「大きめ希望」
「カスミ酷い!僕たち平らなのに…」
いや、当たり前だろ!男なんだから。何を目指してんだよ。
ってなことがあった。セイに相談したら、俺たちは社交が免除されてるから、極秘出産出来るだろうと。
ただ、使用人含め極秘だ。ヒルガにも話せないと言われた。だからレナン湖の湖畔にツリーハウスを出してそこでしばらく暮らす事にした。
そう、あの水龍が守る湖だ。
どうやら水龍の次世代も生まれたようだし、ちょうどいい。水龍の人型は女型だからな。
一緒に子育てもして貰えばいい、そう思っていた。
そして、結婚した3月にロキは一時的に女の体になり、無事に妊娠した。いや、早かった。だってな、あのきれいな顔でパイン付きだぞ?俺の息子も攻めて攻めて攻めまくった。
で、妊娠。白玉とイナリ、コハクの視線が冷たい。トーカとリグなんて俺が近寄ると逃げるんだぞ?
「そんな小さかったら抱けないだろ」
と言ったらさらに引かれた。何故だ?
その理由は後ほど分かるんだが、その時はまだ知らなかった。
*読んでくださる皆さんにお願いです*
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪
評価は任意ですが…もらえるととっても嬉しいです!
モチベーションになりますのでどうぞよろしくお願いします♪




