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チートなジョブで転移無双  作者: 綾瀬 律
第2章 王立学院

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110.魔術の授業

 結局、その日はエルサダ様は個室に入ったので、僕は食堂で顔見知りの子爵家の友達とご飯を食べた。実家が商会をしていて、取引があるので良く知っているんだ。


「ミルロス様の高位貴族クラスはどんな雰囲気だい?」

「んーなんか微妙?」

 カルロスとカルネスは不思議そうな顔をする。そう彼らは双子だ。

「微妙って?」

 何て説明したらいいかな。僕は言葉を選ぶ。

「カスミは知ってるかい?」

 同時に頷くと

「「もちろん!あのパルシェン公爵家の深窓の令息だよな」」


 僕も頷いて

「彼はとても独特でな。空気感が違うって言うか。物静かで穏やかなんだけど…謎が多くて」

「うん、それは何となく分かるような気がする」

「謎めいてるよな、存在が」

「うん。でも普通に話をしてくれるし、感じは悪くないんだ。むしろ、凄く気遣いの出来る人だと思う」


 双子は少し考えて

「ミルロス様がそう言うなら」

「間違いないな」

 苦笑する。兄弟が多いから自然と人の機微には敏感になる。


「僕たちのクラスにも男女の双子がいる」

「彼らも不思議な存在」

 あ、もしかしてカスミが言っていた?

「トーカ様とリグ様?」

「ん、子爵家はシュプラール侯爵家の某系」

 やっぱりか。

「どんな人たち?」

「静か」「喋らない」

「「でも良く周りを見てる」」

 うん、カスミといるんならそうなんだろうな。


 そんな話をして、休憩が終わった。

 さて、午後は選択科目の魔術だ。選択科目はクラス関係なく受ける。

 もっとも魔術はほぼ全員が受講するから、合同クラスになるが、家柄と実力で割り振られる。

 僕はそこまで魔法は得意じゃないけれど、家柄でAクラスだ。カスミとクリスに多分、トーカ様とリグ様もいる。


 カスミは後ろの窓際に座り、隣はクリス、2人の前に双子。僕はカルロスとカルネスの隣、廊下側の中程に座った。

 レオハルト様とブランシュ様は窓側の1番前だ。マリアージュ様は窓際に、エルサダ様は1番前の真ん中に座った。ガイ様もナリウス様とユリウス様も同じクラスだ。


 カエサル先生がセイルール様と入って来た。もう1人は…魔術塔の魔導士?あのローブは間違いない。

 騒めいた。当たり前だ。国の魔法職の超エリートなのだ。僕も驚いたし感激した。

「このクラスは私とセイルール、そして魔術塔のロイナス上級研究員が担当する」

 順番に挨拶をする先生方。


「セイルールだ。私は実践派だが、それなりには使える。ただ、まぁこのメンバーだと補佐だな、よろしく」

 と簡素に挨拶をした。

 ロイナス先生はみんなを見回して

「将来の魔導士を探しに来た。期待している」

 おぉ…とどよめいた。


 魔導士、それは魔術塔に所属するごく一部のエリートのみが名乗ることを許される称号だ。

 魔導士は準貴族でもあり、生活は保障されている。憧れの仕事だ。


「今日はまず、各自魔法を展開すること。属性魔法をそれぞれ実践する。出来なくとも発動するように試しなさい」

 カエサル先生が頷くとロイナス先生が

「まずは火の魔法を。指先に小さく灯して」

 みんな指先に集中する。


 僕も静かに目を閉じて、指先に小さな火を灯した。というか、そもそも小さな火しか灯せない。

 エルサダ様やマリアージュ様、殿下方もスムーズに灯していた。意外なことにカスミが苦戦している。いや、クリスとトーカ様とリグ様もか。


 ロイナス先生なカスミの前で足を止めて

「肩の力を抜いて…極小さくとも構わないし、ともらなくてもいい。魔力を指先に…そう、うんいいぞ」

 カスミの指先に小さく灯った。出来ない人には声を掛けながら、ロイナス先生が教室を回る。

 セイルール様は指先に灯してカスミを見て笑った。憮然としたカスミ。


「次は水。指先から小さな水球を出す。こんな風に…」

 指に乗ってるみたいなまん丸な水球が出た。わぁ、凄い!

 指先に集中して…あっ大きい。手のひらに乗るくらいの水球だ。大き過ぎる。でも小さく出来ない。


 焦っていると

「今はまだそれでいい」

 ロイナス先生に声を掛けられた。そんな感じで風と土も小さく吹かせたり土の塊を出したりした。

 エルサダ様とマリアージュ様は魔法が得意みたいだ。すべて言われた通りに出来ていた。


 その日はそこまで。

「各自、時間がある時に練習をするように」

 ロイナス先生の言葉で授業は終わった。終わった途端にエルサダ様とマリアージュ様がロイナス先生に駆け寄っていた。


 レオハルト様とブランシュ様がカスミに近付くと何か話しかけていた。そして、お2人と共にクリスのエスコートで教室から去って行った。

 カスミに話しかけたそうな人たちには全く気がつかないで。というか、さりげなくクリスが牽制している。双子もだ。守りが凄いな。


 その日、家に帰ると執事から報告があった。

「グラスゴー商会から連絡がございました。カミール商会から果物の仕入れをしたいと。どうやらかなり大口の取引になりそうだと」

「そうか、早速連絡を取ってくれたんだな。でも所詮は果物だよな?」

 執事のウナイは頷くと

「左様でございますが、どうやら量がかなり多いそうでして」

 そう言えば沢山欲しいと言ってたな。それは助かる。


「カミール商会との取引は信用度が高い上に、全てその場での現金払いなんだ」

「そう聞いておりますな。優良商会としてランク付けされておりましたな」

 商会にはランクがある。商いの大きさではなく、金額。そして信頼度。


 全ての仕入れと販売を現金で行うカミール商会は優良の筆頭だ。普通は月ジメ払い。つまり、月単位のツケ払い。それが仕入れも、そして卸しも即支払い。商会が取り逸れない。故に優良なのだ。

 しかも、卸し専門なのに商いの額が大きい。一つ一つの取引が高額なのだ。


 カミール商会と取引が出来る、それは現金を確保できているとなり、他の商会に対してもそれが信用となる。

 しかも、カミール商会は優良な商会であってもおいそれと取り引きが出来ない事で有名だ。


 宝飾品や布はまったく相手にされない。そう、服飾関係はまったくダメなのだ。

 逆に食材や金属系は比較的取り引きしている。そういう意味でも色々と謎が多い商会なのだ。


 僕は帰宅したルル兄様に取り引きの件を伝えると兄様は

「それは良かったな。空喜びじゃないかと心配していたんだ」

 そうか、カスミやクリスを知らない人からするとやっぱり信用出来ないのか。でも、良かった。その日は嬉しくて少し寝付けなかった。



 翌日の授業は穏やかに終わった。カスミもずっと出席していたし、ポツポツと話もする。無口だけどそれが苦にならない。自然体だからかな。

 その後はエルサダ様やマリアージュ様がカスミに何か言うこともなく、穏やかに過ぎて行った。



 入学したのが5月、そして6月が終わると2ヶ月の長い夏休みだ。カスミはどうするんだろう?

 僕の領地に遊びにとか、カスミの実家に遊びにとか出来たらいいんだけど。


 夏休みの前に、魔術の授業で対戦がある。そして、パーティーが終われば夏休みだ。

 魔術の授業の対戦とは、相手を指定して魔法で戦う。それだけ。ただ、必ず1回は戦う必要がある。

 それから中級以上の魔法の使用は禁止だ。


 屋内広場で行われるそれは、実力を示すいい機会だ。だからみんな力が入っている。残って練習する人もいるくらい。僕もカルロスとカルネスと共に魔法を飛ばす練習をした。


 そう、火を灯すだけじゃ攻撃にならない。授業ではその火を飛ばす魔法を教わった。風も吹かせるだけじゃなく、刃のように鋭く。水も水球を飛ばしたり、細くして飛ばしたり。土は隆起させたり、泥化したり。


 僕はそもそも大きな魔法は使えないし、やっと飛ばせるだけ。でも少しは進歩したかな。カスミを訓練に誘っても

「別にいい」

 と断られた。カスミも苦戦してるように見えたんだけどな。


 そしていよいよ魔術の対戦授業の当日。その日は全クラス合同で行う。




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