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チートなジョブで転移無双  作者: 綾瀬 律
第2章 王立学院

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109.新しい取り引き

 パーティーから帰るとルルーシェ兄様が迎えてくれた。王宮に仕官する次兄だ。

「新入生歓迎会は楽しかったか?嬉しそうだな」

「うん、ルル兄様、聞いてよ!」

 僕は興奮して話をする。


 兄様は驚きながらも、新しい取引先としてカミール商会が名乗りを上げたことに驚いていた。

「大丈夫なのか?取り引き出来れば素晴らしいが、そのクリス様は」

「カスミの個人執事だと。間違いないと思います」

「ミルロスには窮屈な思いをさせてるからな、学院で楽しめてるのなら良かった」


 そう5男という微妙な順番はいろいろと大変だった。とは言え、僕は僕はなりに楽しんでいる。だから問題ない。でも兄様たちはこうやって気にかけてくれる。有り難い。

 こうして、楽しいパーティーの話は終わった。僕は満足して眠りに着いた。



 浮かれた気分のまま、翌日は休みで。僕は目にしたカスミたちの衣装をスケッチしていた。

 凄く勉強になる。レオハルト殿下のクラバットはフリルが無く、シュッとしていてカッコ良かった。年上の男性が着けるイメージだが、レオハルト殿下にはとても似合っていた。

 こんな風に休みを過ごした翌日、学院に登校する。


 その日も馬車が混み合っていて、待たされている間にやっぱりカスミが歩いて追い抜いていった。隣にはクリス。カスミをエスコートしている。

 ただ歩いているだけなのに、目を引く。凄いな。


 そして、今日から本格的な授業が始まる。

 必修科目から順番に授業が始まり、来週から選択科目が始まる。

 今日は歴史と地理、そして魔法学だ。


 カエサル先生は魔法学の権威。午前の歴史や地理は目新しいこともなく、終わった。お昼休憩を挟んで魔法学だ。

 お昼にクリスと、知らない双子らしき男女がカスミを迎えに来た。カスミはクリスに手を引かれ、前と後ろに1人ずつで食堂の個室に向かって行った。

 誰なんだろ?


 白い髪に青い目の無表情な美少年と、同じ色のやはり無表情の美少女。カスミは軽く頷いていたから、もちろん知り合いだろ。

 お昼は最近、エルサダ様と取っている。愚痴を聞きつつ食べるご飯。でも1人よりはいいかな。

 カスミに混ぜて欲しいけど…無理だよね。


 昼休憩が終わると魔法学だ。教室に戻るとまだカスミは来ていなかった。

 そして、結局、最後まで教室に来なかった。

 エルサダ様が

「パルシェン公爵令息はどうしたのだ?」

 と僕に聞いて来た。


 僕も知らないから

「私も知りません」

 実際に知らないのだ。そう言えば、個室から出るのを見ていない。

 結局その日、カスミは教室に戻らなかった。それにカエサル先生も何もおっしゃらない。どういう事だ?


 翌朝、教室に入るとマリアージュ様がカスミに話しかけていた。

「カスミ様、何故昨日の魔法学にいらっしゃらなかったの?」

 と。カスミはチラッとも見ずに

「…」

 無視した。


「ねぇ、聞こえてますの?」

 マリアージュ様がカスミに近寄ると、カスミはサッと避けた。そして

「答える義理はない」

 そう言って僕を見た。えっ、えっ?そのまま僕の手を掴むと廊下に出た。


 少し歩いて止まると

「ミロも何でだって思ってるか?」

 僕は一瞬迷ったけど頷いた。なるほどなと呟く。

「俺もクリスも、トーカとリグも魔法学は受けない」

 トーカとリグはあの子たちかな。


 カスミは肩をすくめるとそのまま廊下で窓の外を見た。僕は何となくカスミのそばにいてカエサル先生が来たので、一緒に教室に戻った。


 一限は言語。この大陸で話されている複数の言語についてだ。魔法理論を進めるには、ここじゃなくて魔国の言語である魔道語が堪能な方がいい。その話をした後にカエサル先生が

「スピン ザ ウインドウ フロウ」

 と言った。隣の席のカスミは静かに目を閉じた。カエサル様はカスミを見つめる。


 みんなを見回して

「ハウ ドュ ユー フィール」

 問いかけた。多分、何かを魔道語で聞いている。誰も答えられなかった。

 重ねて

「ハウ ドュ ユー フィール カスミ」


 カエサル先生が尋ねるとカスミは目を開けて

「ブリーズ イズ ナイス」

 と返した。

「グッド」

 カエサル先生は満足そうに笑った。


「魔法学に必要な言語、それの習得が魔法学の授業だ。一年次の魔法学は基礎編とも言える。魔道語に卓越している者は、等しく魔法学の授業は免除されておる。試験はあるがな」

 そこで口を閉じると我々を見回して

「先ほどの私の問いかけ、意味が分かったものは?」

 レイナルド様とブランシュ様が手を挙げた。


「話すことはまだ難しいかの」

「「はい」」

「焦らずとも良い。一年かけて習うものじゃ。聞くことがまず第一歩だからな」

 それから魔道語以外の大陸の言語についての話があった。


 その授業の後、またマリアージュ様がカスミに

「カスミ様、素晴らしいですわ!何という意味でしたの?」

 カスミはマリアージュ様を見る。嬉しさで頬を染めた彼女に

「気安く名前を呼ぶな、俺に話しかけるな!2度目だ。3度目はない」

 無表情でそう言うと教室を出て行った。


 2限目が始まる時にカスミが戻った。次は算数。セイルール様が担当する。淡々と説明をする。

 そして、白板に数式を書く。

「各自解いて。出来た者からカエサル先生を呼ぶように。あ、カスミは呼ばなくて良い」

 当然みたいに頷くと窓の外を見た。僕は白板の数式を解く。商会の仕事を手伝っているから、数字には強い。


 ふとカスミを見ると、手元のノートに何かを書き付けている。その羽ペンは軸が透明でキラキラしている。羽も七色に輝いていて、とてもきれいだった。

 インク壺が無い。なのにサラサラ書いている。そう言えば、最近、ルル兄様に聞いたかも。

 あれはシュプール商会の新作だった筈。でも、限定数で買えないって聞いた。しかも、あんなにきれいなんて。


 手元に視線を戻し、白板と見合わせる。うん、大丈夫だ。手を挙げるとカエサル先生が近くに来てノートを覗き込む。

「あっておるな」

 良かった。ホッとしてみんなを見る。レオハルト様とブランシュ様も、手を挙げる。カエサル先生が頷く。次にユリウスとナリウス、そしてガイと続く。マリアージュ様とエルサダ様は最後まで解けなかった。


「解けなかった2人は後でカエサル先生のところまで行きなさい」

「セイルール先生、あの…カ、パルシェン公爵令息にお聞きしても?」

「却下だ。自分で考えなくては意味がない」

「で、でも…」

「認めない」

 強く言った。婚約者がいるのに、どんな神経してるんだろ?あんなに冷たくされてるのに。

 カスミに婚約者がいないのが原因な気もするけど。


「切磋琢磨することは否定しない。しかし、一方的に寄りかかるのは高め合いではなく寄生だ。学業をする場だと言うことを忘れるな。色目を使って婚約者以外に擦り寄ることは校則で禁止されている。分かっているな?」

 流石にマリアージュ様も青ざめて

「も、申し訳有りません」

「私からも一言」

 カエサル先生だ。


「カスミに邪な気持ちで近づくのは禁止だ。私の研究に彼の力は欠かせない。彼を守るために、私とセイルがここにおる。それを忘れるな。悪い噂や有り得ないウワサを立てている者がいることは把握しておる。すでに生徒会が調査中だ。私からは以上だ」


 シンとした。悪い噂はエルサダ様で、有り得ない噂はマリアージュ様だ。そんな話を僕も耳にしている。

 思った以上にカスミは大物なんだと改めて思った。

 気まずい感じで授業が終わり、カスミはセイルール様に手を引かれて教室を出て行った。

「ちょっと、どういうことよ?」

 マリアージュ様とエルサダ様に詰め寄られた。僕だって何も知らないよ。

「僕はそんなに親しくないから、分からないよ。むしろ殿下たちの方が…」


 レオハルト様は立ち上がると

「カスミについては言えないことの方が多い。ただ、彼は()()()()()()

「やる気はないけど、能力は高いのよ」

 ブランシュ様もそう言った。

 エルサダ様もマリアージュ様も納得していなかった。仕方ないのかな、本人の凄さが実感できていないんだろうし。


 結局、その日はエルサダ様は個室に入ったので、僕は食堂で顔見知りの子爵家の友達とご飯を食べた。実家が商会をしていて、取引があるので良く知っているんだ。




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