104.カスミの想い
まさかな、本能ダダ漏れダンジョンでドロップするのが紫のものとは。俺の本能は双子を求めているのか?
分からんな。中身のおっさんはまだ現役だ。
どこか冷静にあんな美形が伴侶とか無いよな、いい夢見たなと思う自分と。
やっぱりこれは現実だと考える自分と。
そんな時、セイから会いに行くと連絡があった。
だから完璧な隠蔽は解いていた。多分、見える筈。そう想ったらセイが来たとトーカが教えてくれた。
「カスミ?」
迷惑をかけた自覚はあるから恐々と
「セイ…?」
と言えば、抱きしめられた。
セイは俺の全身を触ると安心した。体は別も悪く無い。俺に触れたセイには俺の考えも伝わるだろう。言葉に出来ない想いを伝えるのにこんなに助かることはない。安心してセイに体を預けた。
翌朝、ワッフルとスープの朝食を食べると
「カスミはどうしたい?双子がどうとかじゃなくカスミの希望を聞きたい」
俺は返事の代わりにセイに寄り添った。自分でも気持ちの整理が出来ていない。だから、それも含めて伝わるように。
「そうか、それがカスミの気持ちなんだな…」
優しく頭を撫でられた。
「それがもう答えだろ」
そうなんだろうか、自分でも分からない。
「くすっそんな顔はやっぱりまだ子供だな」
見たらわかるだろ、見た目はまんま子供だ。中身はまあおっさんだが、こちらで過ごす時間が多くなるほどに中身のおっさんは年齢に引きずられているとそう感じる。
「戻って来ないか?」
俺は首を振った。まだ少し無理だ。
「あ、衣装は出来てるから」
渡そうとしたら断られた。自分で渡すべきだと。それもそうか。
帰りがけに
「迷惑かけたな」と言えば
「俺たちは家族だから、こんな迷惑なんてなんでもないぞ!カスミは手がかからな過ぎる」
「リヴ兄様には怒られてばっかりだが?」
2人で顔を見合わせて笑った。
そうだな、素性がハッキリしない村人Bを家族にしてくれた人がいる。俺はなんて恵まれているんだろう。
拠り所のない不安定さはどうにもならないが、頼っていいんだよな。
双子とも向き合わないと。彼らはまだ18才だ。そう思えたら楽になった。よし、もう少しここで食材を探そう。美味いもん食わせてやりたい。
出来ればカカオが欲しい。そう思ってダンジョンに繰り出した。
ふふふっ大漁だ!本能万歳!!
俺はホクホクしてその日を終えると、2日後にダンジョンを出ることを決めた。なんせ不法侵入だからな。
翌日、最後にダンジョンドロップを求めて歩いているとゾワリとした。やばい…誰か歪みを切ったか?
助けないと…。俺はリクたちに金苔で待つよう伝えて、ゾワリとする方向に向かった。これは…マジか。急げ!
*****
僕たちは部屋に引き籠った。カスミがいない、その事がこんなに苦しいなんて。泣いてまたカスミが帰ってくるかもと待ってまた泣いて。
でもカスミは15日経っても帰って来なかった。だからルキに言った。
「ルキ、ラウラリアダンジョンに行こう!あそこは欲しいものが出る。ならきっとカスミがドロップする」
「そうだな、そうしよう」
その時の僕たちは冷静さを欠いていた。普通に考えてカスミがドロップする筈が無いのに、その時はそう思っていた。
そして、屋敷を抜け出してラウラリアダンジョンに向かった。カスミ、早くドロップして。
ダンジョンは人気がない。当たり前か、本能を反映したドロップ品なんて嫌に決まってる。絶対に来たくなかったダンジョンだ。
そこに足を踏み入れた。1階層では何もドロップしなかった。先に進む。2階層でようやくドロップしたのは水色の魔石…泣きそうになる。カスミが魔石になってしまったみたいで。
それを抱きしめてまた泣いた。
先に進む、早く、早くカスミがドロップしないかな。その時は少し精神的におかしくなってたと思う。
僕は壁に変な揺らぎを見つけた。カスミの隠蔽だ!ルキがすぐに切る。すると、そこからネズミが飛び出して来た。本能的にマズイと思う。だから
「ルキ、逃げる!」
逃げ出した。でも早い。追いつかれる。僕は咄嗟にルキを突き飛ばす。足を噛まれた…っ動けない。
嫌だ、カスミ…もう会えないなんて嫌だ!
「カスミ!」
名前を呼んだ。体から力が抜ける。もうダメだ…カスミ、カスミ、カスミ…カスミが見える。そうか、僕は死ぬのか。そう思ったら幻のカスミは
「ロキ、しっかりしろ!」
そう言ってカスミは噛まれた僕の足を撫でると
「治れ…ダメか」
カスミ、ありがとうもういいよ。ごめん、大好きだよ。最後に会えて良かった。
そこで意識が途切れた。
俺はベッドに横たえられたロキを見ていた。青白い顔は思いの外穏やかで、それが唯一の救いだった。
そばではルキが泣き崩れている。
「僕が、僕のせいで…ロキ、ロキ!」
俺はなんてことを。カスミが帰って来なかったのは間違いなく俺のせいだ。俺が軽はずみにこんな時は女だなんて言ったから。
純粋な双子はカスミを不器用に想い、カスミも双子を大事にしていたのに。
今更何を言っても言い訳にしかならない。こんなロキを見ることになるなんて。
俺は自分に怒りが湧いた。俺は、なんて詫びたらいい?いや、もう何もかも遅いんだ。
ルキ、ロキ、ごめん。そしてカスミ、本当に申し訳ない。本当に今更だ。
俺は拳を強く握った。
ギルドを出て屋敷に帰ると何やら変な空気だった。
「坊ちゃん」
ヒルガから事情を聞いた。そうか、まずはリベリアーノ殿に連絡か?
気が重いな。ん?もう連絡したと?
そうか、えっ…侯爵自らやって来る?それは、仕方ないな。分かった。準備を頼む。
俺は双子の部屋を訪ねる。
ロキはベッドに寝かされ、ルキはベッドに縋り付きカスミはベッドのそばで踞っていた。
「カスミ、ルキ…」
カスミが顔を上げた。目が赤い。俺を見ると立ち上がって抱きついて来た。
抱き上げると頬を撫でる。涙の跡だ。
触れたカスミから感情の奔流を感じた。こんなカスミは初めてだ。いつもポケッとしたカスミは良くも悪くものんびりしている。
「俺がいる」
そんな言葉しか言えないが、カスミは俺の首に顔を埋めた。その背中をトントンする。
「少し休め」
その言葉にカスミは抵抗しなかった。ベッドの上のロキをみつめてから大人しく付いてくる。俺の部屋につれていき、ベッドに横たえる。髪の毛を撫でると、カスミは目を閉じてやがて寝息が聞こえて来た。
双子の部屋に戻り、ルキに触れる。ぴくりとしたが抵抗しなかった。横たえられたロキにも触れる。その顔はすでに冷たい。私はそっと手を離すと
「ルキ、少し休め。ここにいても出来ることはない」
腰に手を当てて抱き起こすと、素直に立ち上がった。ルキの手を引いて俺の部屋に入るとカスミの隣に寝かせた。ルキも素直に目を閉じた。
部屋を出る時に、ルキの押し殺した泣き声が聞こえた。
また双子の部屋に戻る。そこにはアマランとウルグがいた。
「俺たちのせいだ」
「まさか、そんなことになるなんて…」
キツく拳を握って俯く2人。
「もう時間は戻せない」
残酷なようだが、起きたことは変えられない。そう言えば、リグは?カスミはリグを使わなかったのか?
なんにせよ、あのカスミが助けられるものを放置するとは思えない。ならばもう仕方がないのだろう。
今はただ、受け入れるしか。
ロキ…安らかに眠れ。
第一章終わり…
まだ続きます。
第二章は週明けから
*読んでくださる皆さんにお願いです*
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪
評価は任意ですが…もらえるととっても嬉しいです!
モチベーションになりますのでどうぞよろしくお願いします♪




