103.真珠と水龍
こうして俺は意識がないままに…その夜は更けた。
目を覚ます。うん、ここは…?柔らかいものに包まれている。ふにふに…ん?ふにふにふに、もしや?
えっと…どうなってんだこれ。
俺は柔らかな布を掛けられて横になっている。隣には水龍だ。パインが見える。とてもきれいだ。お山の頂点まで見えてる。
分からん、何故こうなってるのか。布を捲る。何かやらかしたか?いや、しかし自慢じゃないが俺の息子はまだ子供だ。
混乱しているとくつくつと笑う声が聞こえた。
『安心せい。しておらんわ。ただな、魔力を貰った』
「魔力を?」
『そうじゃな。次代を作るためには必要なのだ。人と違ってな、必要なのは魔力。2つの魔力を融合させるのに肌の触れ合いは必須なんじゃ』
ホッとした。いやな、興味はもちろんある。あるんだが、やっぱり婚約者がいる身としては間違いはダメだなと。
しかも変な風に離れてしまったから、尚更だ。
服を着て水龍に湖まで送って貰って別れた。沢山の真珠は亜空間に保管して。
双子が心配してるだろうから、帰らないとな。ベルシティに向かうか。
「主、まだレイラシティにいます」
「ならそちらに…」
「あ、いえ。先にベルシティへ」
「何でだ?レイラシティにいるんだろう?ならそっちで合流する」
なんか歯切れが悪いクリスだが、リクに乗ればすぐだ。いや、この際だし転移するか。
双子のそばに転移だ!
…やめときゃ良かったか。双子は女性に囲まれて眠っていた。呆然とその様子を見ている俺。やっぱり同性では無理があるんだな。
そっとまた転移しようとして目を覚ましたロキが
「待ってカスミ!」
ベッドから降りた。ロキは裸だった。それが思いの外ショックだった俺は震えながらロキを振り切って転移した。
俺、何してんだろうな…
それからしばらく、俺はベルシティに帰らなかった。
*****
カスミが喜んでくれると思って、お母様に頼んで用意して貰った真珠。カスミの髪の毛にきっと合うから。リボンに縫い付けて貰った。いつも貰ってばっかりだから、喜んでくれる。カスミはいつだって欲しい言葉をくれるから、全く疑ってなかった。
でもカスミは真珠を見てハラリと涙を流した。僕とルキの声も届かない。
そしてカスミは赤くなった目で僕たちを見ずに消えてしまった。
慌てて屋敷に帰るとリクを走らせると伝言があって、カスミはいなくなってしまった。
よく分からないけどカスミを悲しませた。
帰ってくるのを待って謝らないと。そう思ったのに、カスミは行きたいところが出来たから先にベルシティに帰ってとチビクリスを通じて連絡をして来た。
そんなに嫌だったの?
僕はロキと抱き合って泣いた。そしたらリーダーとウル先輩がこんな時は女を抱くのがいいと言った。そんな気分じゃないよ、そう言ったらならきれいどころの男ならいいのか?と。
そうじゃないけど、女よりはいい。何より今は誰かに縋りたい。それでお店に連れて行って貰った。
もちろん、ただそばにいるだけで何もしない。
それでもいいという人とロキと共に部屋に入った。いやらしい事はしない、そう言われて安心して。
お風呂に入って、そのまま寝た。
ただ寄り添ってただけ。でもやっぱりカスミの小さくて温かな体を思うと気持ちが処理できず、優しく手で導いて貰った。恥ずかしかった。でも、仕方ない。
そうしてまた微睡んでいたら懐かしい魔力を感じた。
ロキが
「待ってカスミ!」
やっぱりカスミなのか?よりによってこんな時に…
追いかけようとしたロキは当然だけど裸で、それは僕も同じ。寄り添ってる彼らは女装していて、毛布で体が隠れていれば女性にしか見えない。
僕は青ざめて震えることしかできなかった。
お店を後にして。そこから記憶がない。リーダーとウル先輩に支えられてベルシティに戻った。でもカスミは帰って来なかった。
どうしよう、嫌われた。婚約者がいるのにそういうお店に行った。相手は女性じゃないし、何もしてないけど…そんなの言い訳だ。
毎日毎日、カスミの帰りを待ったけど…結局、12月に入ってもカスミは帰って来なかった。
私はギルドの部屋でアマランから話を聞いていた。いまいち良く分からない。カスミが双子の贈り物を喜ばない筈が無いのだ。
涙を流して消えた?カスミらしく無い行動だ。今更だが、ここに来るまでのカスミの暮らしを俺たちは何も知らない。
あんなに賢いアルパカを譲られるほどのカスミが、何故村を出なければならなかったのか。いや、むしろ逆か。
村はカスミを外に出してやりたくて、カスミはカスミで村の負担にならないように村を出た。
どんな暮らしをしていたんだろうか。
双子の贈り物に涙を流した理由はそこにある気がした。どんな理由であれまだ12才の子供だ。故郷を離れ、1人でここに来た。そんな事さえ忘れていた。
その日、屋敷に帰ると部屋に籠った双子に話しかけた。
お前たちが思うカスミは、そんなに冷たい奴じゃ無いだろと。お前たちの贈り物だって嫌だったんじゃ無い筈だ。何かを思い出した、多分、故郷だ。
だからお前たちに会いに戻ったんだろ、と。
双子は
「でも、その時僕たちは…カスミじゃ無い人のそばにいた」
アマランから話は聞いていた。転移でベッドから抜けられるんだから、逆も然り。なのにそれに思い至らなかったとアマラン達も反省していた。
カスミはどう思ったんだろうか。チビクリスを通じてカスミに想いを伝えた。みんな心配しているから、どこにいるか教えて欲しいと。
しばらくしてチビクリスから来た回答に、不覚にも笑ってしまった。そこか…確かに隠れるのには最適だ。
同時に双子のことをどう思った?と聞けば、単なる利害の一致だから仕方ないと返ってきた。
仕方ないと思ってるなら、カスミなりに双子のことを想ってるんだろう。しかし、次に続いた言葉に愕然とした。
婚約はいつでも解消する、と。
双子は寂しかっただけで、始まりは丁度いいと思ったからかもだが、今はカスミの事をちゃんと見ている。だから婚約の解消はしないと言ったが、返事はなかった。
仕方なく、カスミに会いに行った。
「カスミ、会いに行くから…完璧な隠蔽は解いてくれるか?」
答えは無かったが、多分大丈夫だろう。
こうして、俺はまたラウラリアダンジョンに入った。
そして見つけた。金苔の上に箱を。何故箱?
「カスミ?俺だ、セイルールだ」
箱が開いた。いや、扉か。
「セイ…?」
顔を出したカスミは少し痩せていた。慌てて駆け寄ると全身を触る。良かった、体はどこも悪く無い。
「中に入って」
手を引かれて箱に入ると、中は普通に広かった。空間魔法か…相変わらずだな。
ソファ座るとカスミはカップにコーヒーを入れてくれた。気まずそうに俺を見る。
「ごめん…」
髪の毛を撫でて
「心配した」
頷いた。
分かってるんだろう。だからそっと抱きしめた。相変わらずだ、小さくて細い。そっと背中に手が回る。
「双子のことを、許せないか?」
首を振った。
それからポツポツと話をした。その話は衝撃だった。そんな風に考えていたなんて。
いや、もっと配慮すべきだったんだ。そう思ったがもうどうにもならない。
ただ震えているカスミを抱きしめることしか出来なかった。
その日は一瞬にお風呂に入って、夕食を食べて一緒に寝た。無意識か、俺にしがみ付くカスミの孤独を見た気がした。なまじ能力があるから、つい12才という歳を忘れそうになる。
まだほんの子供だ。守らないと、弟であり息子だからな。
俺は裸のロキを見た後、レイラシティからベルシティに戻ろうとして、そこは双子も一緒に暮らしていると気が付いた。今は会いたく無い。
でも俺には行くところがない。困った。
「ラウラリアダンジョンはどうですか?」
クリスの言葉にそれはいいかもと思った。人が来ないし、隠れるのにはちょうどいいか。しかも、欲しいものがドロップする。
うん、俺は少し疲れてるんだ。今後のこともゆっくり考えよう。流されるままに婚約したが、それも含めて俺なりに考えよう。
そう思って籠ったんだが…食材以外にドロップするのは紫の宝石とか紫のリボンとか紫の…マジか。本能ダダ漏れ…なら俺は思いの外双子のことを想ってるのか?
それなら尚更、解放してやった方がいいのか?でもな、守ってやらないと追いかけられるだろうし。俺と婚約してる方が守ってやれるのか。でもそれだと俺の気持ちがな。
困ったな…やっぱりこんな状態でそばにいるのはダメなんじゃないか。
まとまらない思考でダンジョンを出るタイミングを失っているうちに、11月が終わった。
*読んでくださる皆さんにお願いです*
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪
評価は任意ですが…もらえるととっても嬉しいです!
モチベーションになりますのでどうぞよろしくお願いします♪




