100.ダンスでゴー
祝100話
後少しで第1章が終わります…
俺は羞恥心で真っ赤になりながら、セイに抱き寄せられてダンスを踊った。ってかセイにリードされてた。流石だ。一度も足を踏まなかった。
最後にセイが頬にキスして終わった。はぁ?
俺は恥ずかしさでぷるぷる震えながらダンスを終えた。セイは優雅に俺の指先をちょんと摘んでいる。
そのまま外に出た。
暗がりでセイに文句を言おうとしたら抱きしめられた。
「演技だから、我慢して」
何?
(…てるぞ)(本当か?)(抱き合って…キスした)
(噂は本当なのか)(…だな)
ヒソヒソ聞こえる。セイは俺を抱き上げると身軽に走って、反対側まで来た。
俺を降ろすと認識阻害と隠蔽をする。ダンスの時は切ってたからな。
そこに双子もやって来た。すでに認識阻害は発動している。チビクリスの伝言を聞いたようだ。
「おい、どういうことだよ?」
小さな声でセイに詰め寄る。
「どうやら俺を嵌める為の陰謀があったようでな、だからカスミを利用させてもらった」
「むう、カスミは僕たちの婚約者」
「でもセイルさんが掴まるとカスミも困る。だから我慢した」
セイ狙いの人から守る為、俺をセイの婚約者と誤解させる必要があったと。
実際は養子だが、血族である以上キスはおかしくない。そう言い逃れが出来るから俺なんだろう。だから教えてくれよ!焦っただろ。
「焦ったカスミも可愛い」
「顔が真っ赤だった」
「それな、なかなか良かったぞ」
「酷いな!」
なんて事があった。セイが飲んでいたグラスに媚薬が入っていたり(指輪が、紫になって分かった)、双子のグラスにも毒が入っていたり。
トーカによると軽い毒だから倒れた双子を介抱するフリで襲うつもりだったんだろうだって。認識阻害を切っていたわずかな時間でこれなんだからな、大変だ。
トーカが犯人を特定したら、トーカに持たせた電撃の魔石で成敗した。
あちこちでピクピク痙攣する男や女がいて辟易した。どんだけいんだよ!
途中から俺が浄化したグラスに俺が作った酒を入れて飲んだぞ!安全安心だ。
もっともダンスが終わったら認識阻害と隠蔽をしたから、家族でさえも認識できないはずだ。
で、パーティーの途中で抜けた。
庭から外へ転移すると、そこにはクリスが呼んだリクがいて、俺とセイはリクに。双子は風魔法で滑るように王都の屋敷に帰った。俺たちが拠点にしてる方の屋敷だ。
そこで服を脱いで風呂に入って寝た。疲れた…。
なぜ、王都の屋敷なのか?理由は王都観光をする為だ。屋敷を用意したのはニア兄様で、セイや双子たちと屋敷には来ていたが、王都は見た事がなかった。
だからセイと双子が案内すると言って。ちなみに、何故かリヴ兄様(リベリアーノ兄様にそう呼んでと言われた)とニア兄様も一緒の予定だ。
だから今日は王都の屋敷で寝た。何故か双子とセイまで一緒に。ぎゅうぎゅうだが、それが何故か心地よく感じた。
目が覚める。流石に昨日は疲れきった。体とかじゃなく、主に精神的にだな。セイや双子たちがパーティー嫌いなのも頷ける。ダンスタイムの時、セイと双子周りにわらわらと原色が群がったのを見てゲンナリした。
マジか…と。
華麗に無視して、セイは俺と、双子は双子でダンスをし、終えるとそれぞれ庭に避難して認識阻害と隠蔽を発動した。
俺、学院に行くの無理じゃね?と思った。
双子とセイはまだ寝ている。あのある意味殺気を当てられて疲れたんだろ。目を瞑ってる顔はやっぱり眼福だ。ありがたやー。例えヤローでも許せるくらいには整ってる。だから追いかけ回されるんだろうがな。
ご愁傷様だ。
ルキが目を覚ました。俺を見て頭をぐりぐりして来た。だから抱き付くな、ウザい…太ももを絡めるな!当たるだろ。
「カスミ成分補充」
うっ、仕方ない。我慢だ。こら、調子に乗って首の匂い嗅ぐなよ。あ、ロキ…背後から腰を押し付けるな。首にキスするな!
セイが目を覚まして
「カスミ…?」
「セイ、助けて…」
救出された。朝から双子が重い。
ふう、ベッドからやっと起き上がれた。
「リクを走らせてくる」
俺たちの足にするために呼んでいたリクはこの屋敷の厩舎にいる。そこに向かう。
起きていたリクが
(飯…)
はいはい。昨日は活躍したからな!
桶に肉やら魚を入れるとふかふかの背中を撫でた。
食べ終わると
(走らせろ)
だよな。
ここの屋敷は建物こそ小ぢんまりしているが、なんせ庭が広い。建坪の3倍はある。
リクを厩舎から出すと悠々と走り始めた。ここにはカラスとスズメ、リクしか来ていない。白玉やイナリ、コハクとあんこ、スイは留守番だ。
ひとしきり走って満足したらしいリクを厩舎に戻すと屋敷に入った。
ここには普段から人がいない。屋敷をきれいに保つ為に、クリーンの魔法を自動で展開するからきれいを保てる。しかも、食材も常備している。もっとも自分で持ち歩いてるから、なくても問題はないが。
で、厨房に向かう。リヴ兄様に文句を言わた魔道具のコンロを使った料理を作る。疲れてる時はアレだな。
卵に牛乳、砂糖。砂糖は黒糖だな。そこに食パンをヒタヒタに漬ける。
それをコンロに乗せたフライパンでじっくりと弱火で両面を焼く。そう、フレンチトーストだ。
仕上げに粉砂糖を掛ける。スープはコンソメ。甘いのとしょっぱいの。最高の組み合わせだ。
匂いに誘われて、セイと双子がやって来た。怖いから厨房のドアに顔を押し当てないでくれ。ホラーだ。振り返ったら顔が3つ張り付いてるとかな。
厨房から食堂に繋がるカウンターを開けて、そこに皿を並べる。いそいそとそれを食堂のテーブルに並べる面々。カトラリーはクリスが準備済み。
みなみにミニクリスは今でも3人の髪の毛に埋もれている。便利だからこのままいて欲しいと言われて。
クリスに聞くと特に問題ないと言うので、そのままになっている。
テーブルに着くと
「どうぞ」
パクパク…所作は洗練されててきれいなのに、やたらと早いんだよな。それも貴族としての心得なのかな。俺も頑張らないと。
(注 カスミの料理が美味しいのでたくさん食べたくて早いだけ)
俺はどうやら食べるのはゆっくりみたいだし。(注 ごく普通)
「ふう、美味しい。疲れた翌朝には最高だな」
「うん、あの精神的な拷問の翌日には最適」
「頑張ったご褒美」
俺も頷く。
「いや、ほんと今までお前ら頑張ったんだな…」
なんか可哀想な子を見る目で見られた。なんでだ?
「あーこれからカスミもああなるぞ?」
「へっ…?」
間抜けな声が出た。
「ファイト…」
後で話を聞いて俺は叫んだ。聞いてない!一年に4回も学院でパーティーがあるなんて。その度に誰かしらエスコートするのが決まりなんて。
「それまでに学院に在籍していない婚約者がいる人を見つけて、相互に助け合うしかないな」
「セイはどうしてたんだ?」
「遠縁の子とな。すでに卒業した人と婚約してたから、相手をお願いしてた」
なるほど。
「まぁなんだ、最悪の時はちゃんと手を打つから」
「最悪の時ってなんだよ!」
「お前を囲い込みたい貴族連中の妨害、だな」
…俺は何も聞こえない。
その日は色々な王都の店を回った。リヴ兄様とニア兄様が付き添った理由は…仕事のためかよ。俺の王都観光を返せ!
連れ回されて何やら契約をしていた兄様方…性根逞しいわ。
こうして無事に秋の収穫祭パーティーは終わったのだった。
もっとも、リヴ兄様に
「俺を殺す気か?」
と凄まれたり、ニア兄様に
「追い回されて…」
と泣きつかれたり。
どうやらあの日の衣装が話題になり、王族が興味を示したらしい。デザイナーは極秘だが、それでも双子やセイに近いということは分かっていた。
そこで俺の存在が浮上し、問い合わせが殺到。さらに俺を婚約者候補に!と書状が引きも切らず、お父様まで頭を抱えた。
さらに王都や近郊のテイラーからも問い合わせがお父様に殺到。さらにさらに宝飾店からも魔石の問い合わせが…
カミール商会にも当たり前だが問い合わせが殺到して、リヴ兄様のさっきの言葉となる。
俺は悪くないよな?
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