0.プロローグ
新連載長編です…
会社帰り、道を歩いていた。
少しだけ残業した後、スーパーで残り少なくなっていた水やコーヒー、米に味噌、醤油や塩、胡椒、ハチミツ、唐辛子に鶏がら、コンソメ、だしの素。忘れちゃいけないラー油、保存が効くお漬物、冷凍用の肉、今日のご飯となるお刺身に酒のつまみのサラミと燻製のチーズ、ビールに炭酸飲料、スナック菓子とチョコを大人買いした。
自転車のかごに乗せて、走らせていた時…地面が光った。
と同時にぐるぐると回るような感覚がしてめまいを覚え、ふわふわと漂うような感覚が…自転車あるよな?
大人買いした食料が無くなったらマジで泣く。
腹も減ってるからな。早く自家製刺身定食が食べたい。
やっとふわふわが終わって目を開ける。良かった、ちゃんと自転車のハンドルを握っていた。
そこは広い空間で雑多な感じで人がいた。
俺みたいにチャリを持ってるやつもいるし、バイクもいる。流石に車はいないがスケボー片手のお兄ちゃんとかもいた。
後、あからさまな子供はいなかった。
見た感じ高校生以上おじさん以下ぐらいか。
で、そのおじさんはまさに俺だな。嫁無し彼女無しの35才。
屈むと腹の肉が気になるお年頃だ。
ちらほらと同年代も見かける。そして全員が知りあいのいない単独での呼び出しみたいだった。
シーンとしている。
「お集りの皆さん、ようこそ!あなた方は選ばれた方たちです!!」
…胡散臭い。明らかに神々しさ満点の神様みたいな人がしゃべっている。長い金髪は波打って白い肌に青い目の美人さんだ。
しかし、やろー共は美人に弱い。それこそ仕込みじゃないか?
「選ばれたことを誇りに思ってください!」
あちこちから
「おう」なんて声が聞こえる。
選ばれた内容次第だろ?生贄とかに選ばれたなら最悪だからな。
「異世界の人との交流を図るため、あなた方はこれから転移します」
ラノベか!と思わず突っ込みを入れた。
すでに夢も希望もほぼ化石とかした中年には死刑宣告にしか聞こえないぞ。
でも喜んでるやつがいる。まぁファンタジーとか異世界にあこがれる気持ちも理解はできるがな。
いかんせんそれを単純に喜ぶほど若くない。
女神は意気揚々と続ける。
「もちろん、あちらの生活を捨てることになるので、贈り物を用意しました」
言葉を切ってみんなを見回す。慣れてるな?人心掌握だ。期待をさせて間を作る。
「特別に一人に一つのジョブとスキルをあげちゃいます!」
自ら手を叩く。釣られてみんなも手を叩く。俺?もちろん叩いたぞ!
乗り遅れるわけにはいかんからな。迎合するのは重要だ。長いものには巻かれろ主義なんだ。処世術だな。
「しかも、選べるのです!勇者でも聖女でも賢者でも…」
うおー!
ここで今まで一番の歓声が上がった。もちろん俺も喜ぶふりだ。ここ重要。
「ただし、選ぶのに時間制限があるので気を付けましょうね。では行ってらっしゃい!」
…説明雑じゃね?
と思ったら目の前にスクリーンが出てきた。透明な板だ。あれか、ラノベあるあるのタブレット風か?
配分ポイント50万P
価値がわからん。
画面にはジョブとスキルの一覧が並ぶ。
どうやら決められたポイントを使って好きなジョブとスキルを選べってことらしい。
ふむふむと、上の方からおなじみの勇者、聖女、賢者、剣聖、魔術師、剣豪、治癒師、錬金術師、魔道具師…
スクロールして進むとメインどころ以外の非戦闘系のジョブが続く。
大工、鍛冶師、漁師、農民、猟師、木こり…第一次産業系だな。なしだ!
縫製師、デザイナー、調理師、パティシエ…ものづくり系も無理かな。
商人、はなくもないが…仕事と家の往復だけをしていた休日ひきこもりニートが選ぶにはハードルが高い。
途中を飛ばした。終わりに近い辺りに
道化師、詐欺師、占い師、地上げ屋…一部は犯罪者じゃねーか、無しだ!
戦闘系ジョブが復活したな。
傭兵、暗殺者、情報屋…シレっと人殺し入ってるだろ!却下だ。
具現化、立体化、回帰、俊足、透明化…スキルみたいなのが最後に並んだ。ショブだよな?
しかもビックリマークが横に付いている。そっと触れると
※1万P以下の腐れショブは特別に2個選べるよ!
おい、腐れって言ったな!
確かに俊足のショブって意味不明だよな。職業が俊足だぞ?
気になった具現化と回帰をタップする。
ふむふむ、どちらも使えそうだな。すくなくとも腐れショブって蔑まれるようなジョブとは思えない。あれか、裏メニュー的な隠し当たりジョブか?
戦闘なんておじさんのメンタルでは無理だからな!でもキラキラとかもむりげーだろ。
なら慎ましくひっそり食べていける仕事がベストだ!
しかし、詳細を見た後にまたしてもビックリマーク。
タップすると
ーセットスキルが無いと発動しないからねー!―
おい、読んでて良かった。危なかったぞ。
しかし、スキルは1個しかもらえない筈だ。時間を気にしながらスキル欄を見に行く。
ジョブ発動の必須スキルである項目を見ると普通に10万Pとかする。たっけー。。
で、やっぱり安定のビックリマーク。いや、安定って何だ?
タップすれば
ーセットスキルとして取得する場合は追加取得できるんだよ。し・か・も・なんと、5千Pからだよ!-
ぐほっ、リアルで噴出した。
よし、右上のカウントがめっちゃ気になるからサクッと買おう。
具現化と回帰で各1万P
それぞれの必須スキルが魔力超回復と魔力増幅各1万Pと時間操作(即時発動)で5千Pで取得。
スキルの中に透視を見つけた!お値段10万Pと高いが買った。
すると右上のカウントダウンが止まった。正確には止まったのではなく時間操作スキルが発動したのだ。
おれが1/10と念じたからな。
もともとのカウントは600m表記で、カウントの減りはほぼ1秒だったから600秒。
10分だ。ここまで5分経過。間に合うかもしれないが、注釈に重要なことを書いているような気がしてな。
残り5分を1/10遅延としたから50分ある。
よし、斜めだけどチャリに座ろう。疲れた。
ついでに腹が減っていたからスナック菓子と炭酸を取り出して食いながら飲んで画面を眺める。
装備もアップグレードや追加購入が可能だ。
実は透視スキルがめちゃくちゃ優秀だ。別に着ている服が透けてみてるいやーんなスキルじゃない。
残念ながらそっちは見えなかった。近くの女性の尻をじっくりと見てなんかいないぞ?
意味や本質を透かして視るというスキルだ。
字面の本当の意味を見れる。
装備のアップグレードに短剣をミスリルにするというのがある。
じっとみると
ー所詮短剣。アップグレードはポイントをどぶに捨てる行為ー
とかな。辛辣だ。それがしれっと組み込まれているんだから悪意しか感じない。
剣は初期装備にないから、追加購入になる。そこを見ると
ー非戦闘系のジョブには意味がない。ジョブの試しとして一番安いのを買うのは有。見た感じも強そうに見えるから有りー
とかな。どうやら剣を腰に差しているだけでステータスっぽい。
俺が選んだ具現化を試すのに鋼の剣は使えそうだ。それを買う。
透視で見ながら
ー必見!(短剣をコーティングに)アップグレードすべしー
とか。このコーティング、詳細の説明がない。透視スキルによればなんとオリハルコンコーティング。確かに必見だ。
ー買わないやつは死ね!(快適野外装備)-
とか。ちなみにこの「快適野外装備」はアップグレードで初期装備のテントに魔物除けが、ぺらい布がふかふか毛布に、薪が豆炭とバーナーに、木のコップがチタンコーティングの食器セットになる。
ーマジお勧め!-
初期装備のポーチに空間拡張1万倍、カバンの空間拡張1万倍はそれぞれアップグレードでたったの5千Pだ。そりゃマジで進めるよな。
そんな風に透視で確認して購入していく。
で、最後の方に見えた広辞苑。これ絶対買うべきだろって思ったら透視スキルが沈黙した。理由は分からないが、2万Pを注ぎ込んだ。
それでも最後に結構ポイントが残った。
どうするか?それに今持ってる荷物は持ち込めるのか?
ー最後のビックリマークを要チェックー
タップすると
ー残ポイントはお金に換金、ポイントとして残す(後でポイント購入可)が選べる。持っている荷物を持ち込むには乗り込み希望のチェックを入れることー
説明の後ろにちっちゃく持ち込み希望のチェック欄があった。
分かるかよ!
あぶねー大人買いした荷物が取り上げられるところだったわ。
でもチャリとか目立つよなぁ…
お、Q欄発見。
Q 持ち込み荷物をポーチの拡張部分に格納して転移が可能か?
A 可能
Q 方法は?
A 備考欄に記入
下に備考欄が出てきた。さらに
ーオマケ 毎日補充希望にチェック入れると、保管場所から減った分が補充されるよ!-
Q 保管場所は最初にしまったポーチで、他のカバンに出した分は減った分としてカウントされるか?持ち込んだものも補充される?
A されるよ!
チートじゃねーかよ!毎日サラミと燻製チーズで酒が飲める。
良し、持ち込み希望にチェックをいれて毎日補充希望にもチェックを入れた。
念のため聞いておこう。
Q 持ち込みや補充は無料?
A イエスーさー!
…なぜ英語?
気を取り直して、時間の残りはまだ20分ほどあったが、(遅延したから)、覚悟を決めて時間遅延を解除した。
この時点で残り2分。マジ時間操作って優秀。
そして光に包まれて、持ち物は初期装備のポーチに収納して俺は転移した。
ちなみに時間遅延は俺の経過時間が遅くなるだけで、周りの時間軸からおいていかれたわけじゃない。
俺が転移する時点でまだ3人残っていたから。




