集いの日
「隆~、起きて~!遅刻しちゃうよ。今日は、集い行くんでしょ~?」そう言いながら俺のベットにもたれ掛かるのは、いつも俺の生活を支えてくれる南美さん。
「マジすか。そんな寝てました?」南美さんとたわいもない会話ができることが今の俺の支えでもある。今日行く集いは、加害者家族の会というものだ。同じ境遇で不安を抱える者同士だからこそ、支え合うこともできる。加害者家族にしかわからない胸の内もある。この会は三ヶ月に一度の頻度で開催されていて、比較的少数かつアットホームだから、ここ数年しっかり通えているコミュニティの一つになっている。この加害者家族の会を立ち上げたのは、社会福祉士の兵頭さん。兵頭さんは精神保健福祉士、臨床心理士、教職などの資格を持っている人で、俺が加害者家族になった間もない頃からの恩人だ。
「隆くん。最近は、外も怖くなくなったかな。少しは、外の空気を吸えるようになったみたいで安心したよ。」
「気にかけて頂いてありがとうございます。通信制ですが今は高校にも行っています。外に出るのは昔よりは平気になりました。」
恩人ではあるがその恩人にも自分の心の底の感情は悟られたくないし、恩人の心に踏み込むのが怖い。その抵抗からか、自然に不自然な笑い方になってしまう。親身になってくれているが、逆にそれが怖い。関わり始めた時はそんな風に思わなかったのに、最近はそう感じる。半年に一回程度で、定期的なカウンセリングは受けてはいるが、役にたっているかどうかは正直現時点では分からない。