表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

出会い 2

そこからケイトと私はメッセージアプリでポツポツと連絡を取りあうようになる。


一日数回のメッセージのやり取りだったが、その頃大学の人間関係で悩んでいた私の心を確かに救ってくれた。


もともと学費・生活費を奨学金とバイトで賄っているためバイト三昧の日々を過ごしていた私だ。そこにケイトに会うためのカフェ代を捻出するのにだいぶ苦労した。


臨時の試食販売のバイトも増やすことにした。さらに自分の時間が減っていたが、それよりもケイトに会いたかった。


マリーガーネットのSNSでケイトの出勤状況をチェックしては、バイトの日を調整して会いにいっていた。


————————————


「あれから大学どう?嫌なやついるって困ってたでしょー」


その日は、ケイトがドリンクを飲みながらお悩み相談に乗ってくれていた。


「前に話したことを覚えてくれてるなんて結構マメだよね…」

「当たり前じゃーん。よく来てくれてるし、メッセージも取り合ってるんだよ?覚えない訳ないでしょ」


んで、どうなの? と小首をかしげながら話を促してくれる。


く、かわいい…。本当に顔が良すぎる…。


私は動悸する胸を抑えながらなんとか返事をする。


「嫌な人ね…。あれからも色々あってさ。私、要領悪いところあって、それが気に食わないみたいなんだよね…。遠くの方でグチグチ言ってるのが聞こえるんだけど、話しながらチラチラこっち見てくるし、ああ、私のこと言ってるんだろうなってわかるんだよね」

「うんうん」

「言うんだったら本当に聞こえないところで言うか、直接私に言いに来てほしい…」

「ふっ、なんか気が弱いんだか強いんだか分からないよな」


ケイトは対面の席から、横の席へ座り直し、私の腰に手を回し引き寄せてきた。


良い顔が近すぎるんだけど!!と叫びたい気持ちを押し込め、ちょっとだけ体をケイトとは反対側にそらして心を落ち着けようとした。


ケイトはムッとしたように手をスルスルと腰のくびれののところまで滑らせさらに引き寄せてくる。


無言の攻防に、私はお手上げでされるがままの状態でそのまま話を続けることにした。


「それさ、本当に要領悪い時があったとしてもさ、その人たちに何か悪いことってあるの?」

「ううん、私の研究の進みが遅くなるだけ。使ってる機械も違うから、別に、その人たちに迷惑はかけてないよ。あれ…?なんであの人たちって何の権利があって文句言ってきてるんだろ」

「ほら、他の人ってほんとそんなもんだよ、まじ気にすんなって」


ケイトは私の腰に当てている手をポンポンしながら、うんうん、と話を聞いてくれた。


何だか…。ポンポンされている右腰が気になりすぎて、もはやどうでもよくなってきた…。


「じゃあさ、俺の場合の話も聞く?」

「うん、聞きたい」

「俺大学でテニスやっててさ、同じ部活で無視してきたり嫌がらせしてくる奴らいるけど、全然気にしてない」

「え、どうやって気にしないでいられるの?」

「俺、結構女子に騒がれたりすんだよね。あいつそんなに上手くないくせに調子乗りやがってって、周りからしたら面白くはないわな。でも全部嫉妬なのわかってるから、そいつらより絶対上行ってやるって思って頑張ってるよ」


余計面倒ごとに巻き込まれることもあったけど、とケイトは頬をポリポリ掻きながら話す。


「こんなにイケメンでも嫌なこととかあるんだ」

「嫌なことくらいあるよ、俺のことなんだと思ってるの」

「イケメン」

「顔だけかーい」


ケイトは口を尖らせて抗議してきた。


「ま、それで努力した結果、この前も試合で1位取ったし上の学年にも勝てるくらいの実力ついてきたわけ。そしたらさ、今まで嫌がらせしてきた奴らが『どうやって練習してんの?一緒に練習しようぜ!』って聞いてくんの。先に向こうがこっちのこと無視してきたのにだよ?」


笑えるよなー、と口の端を歪める。


「それでケイトは練習付き合ってあげたの?」

「教えた。きっちり教えた上で、試合でも完勝」

「おおー」

「見返すのが一番のやり返しなんだよ」


頭の中でシゴでき女子になっている想像をしてみたが、想像の中ですら私はコケていた。撒き散らかす書類達。


うん、無理っぽい。泣けてくる。


「私はそんな努力できないかも…」


「あーほらほら泣くなよ。ポテト食べな。まーあれだ。お前のことなんか言いたくなるくらい嫉妬してるんだろ。気にしないのが一番だ。そんな奴のことなんてほっといて、俺に会いにこればいーじゃん」


「うん…気にしないように頑張る」


そんなこんなで、私の人間関係はなかなか改善せずだったが、ケイトに愚痴を聞いてもらうことで心の平静を保っていた。



————————————



季節が進むにつれ、本格的に授業・課題・研究がピークを迎えようとしてきた。それに加えて、バイトも居酒屋、試食販売の掛け持ちをしているのだ。本当に周りに構う余裕がなくなっていた。


猛然と課題をこなし、お金を稼ぐ。たまの休みはケイトに会いにマリーガーネットへ。


周囲の人間との関係が希薄になっていったことで、嫌がらせやヒソヒソ話も無くなっていったように思う。すぐに帰宅するので気づかなかただけかもしれないが。


忙しい日々だったが、充実した毎日だった。



ただ話すたび、会うたびに好きになっていくのを感じた。



3話目更新!!

ブックマークしてくれた方々本当に嬉しいです!!

これからも頑張ります!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ