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第1話、先入観に囚われない推理

 今日皆さんに集まってもらったのは他でもありません。今回の事件の全容がわかりましたので、ご報告させていただきます。


 まず、犯行の手順の説明に入る前に、この不可解な現場が出来上がった根本的な三つの原因について話します。


 一つ目は、異常に答え合わせをしたがることです。


 犯人は学生時代、カンニングで留年になったことがありました。


 その動機は何も、答えを知るためというありふれたものではなかった。


 犯人は、答え合わせをするためにカンニングをしたのです。


 ここに捜査をミスリードさせる要因がありました。私たちははじめ、知能が低く突発的な犯行が、奇跡の重なりによってこの形になったのだと勘違いしていました。


 この誤解を解き、正しい犯人像から導き出されるのは、この密室の現場に、犯人は一度帰ってきているということです。


 次に二つ目は、犯人の私生活が極めてがさつであったことです。


 事情聴取の際に犯人の部屋をうかがった時、部屋のあまりの乱雑さに驚きました。


 その習慣のせいで、緻密さの権化とも言うべき密室性と、偶然入った空き巣と揉み合ったように荒れた空間が、混ざり合ってしまった。


 そして三つ目は、犯人は扉をすり抜けられるということです。


 私生活ががさつで、カンニングが見つかってしまうような犯人像が浮かんだ時、これほどまでに完璧な密室を作り出す計画性とあまりに相反しており、一度はこの仮説を捨てました。


 ところがその後、犯人の部屋を見た時の違和感を思い出しました。


 これほどがさつな人間なのに、どうして扉が半開きになっているのか。トイレだろうと風呂場だろうと、全開にしておけばいいじゃないか。


 しかしそうではありませんでした。扉をすり抜けられるにもかかわらず、半開きにしているという、その状態で十分大雑把さを示していたのです。


 この完璧な密室は、その能力によって、比較的簡単に生み出されたのでした。


 ここからは、事件当日の流れをお話ししましょう。


 まず、午後五時頃、犯人は被害者の部屋に訪れ、犯行に及びました。犯人と被害者は顔見知りですから、難なく部屋に入り、抵抗されることもなく殺害しました。


 最終的に三十分ほど滞在し、適当に戸締まりをし、一度ここで部屋を出ました。


 これで終わりなら、これほど難事件にはならなかったでしょう。しかし、それで終わることはありませんでした。


 そこからさらに一時間半後、犯人は密室が完成しているか確認するために、部屋に戻ってきました。


 そして密室であることを確認した後、安心し、シャワーを浴びてインスタントラーメンを食べたのです。この時に部屋が荒れてしまった。


 ここで犯人の癖が二回目の滞在の存在を、奇跡的に隠します。


 犯人は普段からシャワーを冷水で浴びており、また、ラーメンは麺を伸ばすまで煮込んでから常温の出汁に移し、少し残して食事を終えます。


 これによって、直後に部屋から呼ばれた警察が駆けつけた時ですら、かなり時間が経過したような状態になってしまっていた。


 ここまで聞いてまだ黙っているつもりですか? 射反 乱さん!

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