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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Vol.12(n回目)

作者: たまいはる

俺が高校3年生の夏。

今日は終業式だったため、早くに家に帰ることが出来た。

中学3年生の弟は今日から夏休みだったため、ずっと家にいるのだろう。


「ただいま。」

そう言葉を口にして家に入る。


いつもだったら返ってくるおかえりの声がないことに疑問を抱き、リビングに向かう。


リビングに入るといつもはついている電気がついていなかった。

何かあったのかと部屋を見渡すと机の上に1封の封筒が置いてあった。


表面には何も書いていないその封筒。

なぜだか嫌な予感がした。

恐る恐るそれを持ち上げ回し見てみる。

どこにも何も書いていない。


ゆっくりと中身を取り出す。

中には数枚の便箋が入っていた。


便箋を開き目を通す。


それは、弟からの手紙だった。


その内容を読んで俺は震えが止まらなくなった。


弟からの手紙には


自分は中学でいじめられていた。

もう生きているのが辛いという彼の本心

いじめていた奴らの名前

どこで自殺をするのか

家族への感謝の言葉達が綴られていた。


直ぐに両親に連絡を入れ、手紙に書いてあった場所に向かう。

そこは、この地域では有名な自殺スポットだった。


自転車を数分走らせそこに着く。

崖の端まで行くとそこには弟の学校の鞄と靴が置かれていた。


呆然としていると両親も到着したようでこんなことになった経緯を聞いてきた。

俺はどう答えたのか記憶に残っていない。

弟の本心に気づけずにいた自分に絶望していたからだ。


そこからはどうやって帰ったのか分からない。

気がつくと自分の部屋のベットで寝ていた。


部屋のアラームが鳴り目が覚める。

もしかしたら弟はまだいるのかもしれない。

あれは夢だったのかもしれない。

そんな儚い期待を抱き、リビングに向かうがそこには弟は存在しない。

そこでやっと現実だと実感し涙が溢れてきた。


弟の遺体はしばらくして浜辺に打ち付けられているのが発見された。



ーーー


弟がいなくなって数ヶ月経った頃。

父さんが帰ってくる時間にも帰って来ずに代わりに病院から連絡がきた。


内容は、父さんが事故死したと言うこと。

車での帰宅途中に飲酒運転の車を避けようとして電柱にぶつかったらしい。

父さんは即死だったそうだ。


その報告を聞き、直ぐに病院へと向かった。

着くと直ぐに部屋に案内され、中に入るとそこには冷たくなった父さんがいた。


弟が死んでから数ヶ月しか経っていないのに

泣き崩れる母さんになんて声を掛ければ良いのかこれからどうやって生活していくのか何も考えることはできなかった。

ただ静かに涙が流れるだけだった。



2人の死によって母さんの心は壊れてしまったようだった。


父さんが死んで数週間。

その時から部屋に閉じこもっていた母さんがいなくなった。

だんだんと暖かくなってきた春の日だった。


家に帰るといつもあった母さんの靴が玄関に置いてなかった。

直ぐに家の中に入り、母さんの部屋に向かう。

久しぶりに入った場所。

中は昔の面影が残っていないほどぐちゃぐちゃに荒れていた。


入って直ぐにある目につく机。

そこには母さんの携帯電話と通帳、印鑑が置かれていた。


それを見て俺はすぐに母さんもこの世界から居なくなってしまったんだ。

そう思った。


目の前が真っ白くなり、立っていられなくなく。

もう俺の家族は誰一人としてこの世界には居ない。

もう、彼らには会うことはできない。

皆俺を置いていってしまった。



だったらもう良いよね?














座り込んでいる体を無理矢理動かす。


ゆっくりと歩を進める。


歩き続ける。


周りは暗いため、すれ違う人は少ない。


俺を止める人は誰一人と居ない。


もし、止めてくれる人が居たのだったらこんなことはしなかったのだろう。


目的地に着き下を眺める。

そこにはただの黒しか無かった。


その黒に向かって身を投げる。


弟と同じ場所で。

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.

.


ふと目が覚める。

周りを見渡そうと体を持ち上げようとすると体に激痛が走った。


歯を食いしばり、痛みに耐える。

ゆっくりと体を持ち上げ周りを見渡す。


ここはどこなのだろうか。

見たことのない部屋だ。


しばらく俺が今まで寝ていたベットの上に座り、部屋を見渡しながら考えているとその部屋の唯一の扉が開き、老婆が入ってきた。


「おや、起きたかい。」

俺と目が合い、話しかけてくる。


入ってきた老婆は砂浜で気を失っている俺を自分の家に連れかえり看病をしてくれていたようだ。


俺は運が良いのか悪いのか飛び降りても生きていたようだった。



俺はその時の後遺症なのかストレスなのか声を出すことができなくなってしまっていた。

それも相まって俺は人と会話をすることがなくなった。


声も出ず、何もやる気がない俺を老婆は毎日気にかけてくれた。

最初は、話しかけても答えることができなかったが段々と声が出て会話が成立し、共に家事をし、共に買い物をし、共に散歩をした。


1年も経つと俺は普通に生活ができるくらいまでになった。

その間に老婆は俺が砂浜に倒れていたことや、家族のことは何一つと聞かなかった。


就活が上手くいき、一人暮らしを始めた。

とは言っても老婆の家から歩いて数分の場所に家があるため休みの日だけでなく気が向くとふらりとそこへ行き、共に料理をしたり、話をしたりした。


しかし、そんな生活も急に終わってしまった。

老婆が病気で倒れてしまった。


それは拾ってもらった時から数年経った頃だった。


老婆のお孫さんから連絡が来て、急いで病院に走った。


病院に着くともう、家族は全員集まっていた。

それに構わず老婆に駆け寄る。


俺が手を握ると老婆は、うっすらと目を開き、優しく笑う。

「    」

掠れた声で小さく言葉を発すると、病室にピーと甲高い電子音が鳴り響いた。


段々と冷たくなる老婆の手を俺はずっと握っていた。

目頭が熱くなり久しぶりに涙を流した。




また、居なくなってしまった。


どうして皆俺の前から消えてしまうのだろうか。


老婆の葬式の日

俺はそれには出席せずに再び崖の上に立っていた。


「もう良いよね?」

あの日と同じ言葉。

それを静かに呟き、俺は青に身を投げた。


重力に従い俺の体は青に向かっていく。


目を閉じると、走馬灯と呼ばれるものが再生される。


家族との記憶、

老婆との記憶。

楽しかったことから怒られたこと、悲しかったこと全部が全部蘇ってくる。


だけど………………何かがおかしい


知らない人が居る。

知らない場所の記憶が有る。

知らない景色が有る。


…………分からない。


………………………..分からない?



いや、全部知っている。


あの人も

あの場所も

あの景色も


全部、全部知っている。





あぁ、そうか。





また、やってしまったのか。




俺の体が青に飲み込まれた。




ーーーーーーーーーーーーーーー



俺が高校3年生の夏。

今日は終業式だったため、早くに家に帰ることが出来た。

中学3年生の弟は今日から夏休みだったため、ずっと家にいるのだろう。


「ただいま。」

そう言葉を口にして家に入る。


いつもだったら返ってくるおかえりの声がないことに疑問を抱き、リビングに向かう。


リビングに入るといつもはついている電気がついていなかった。

何かあったのかと部屋を見渡すと机の上に1封の封筒が置いてあった。


表面には何も書いていないその封筒。

なぜだか嫌な予感がした。

恐る恐るそれを持ち上げ回し見てみる。

どこにも何も書いていない。


ゆっくりと中身を取り出す。

中には数枚の便箋が入っていた。


弟からの手紙。


そこには

自分は中学でいじめられていた。

もう生きているのが辛いという彼の本心

いじめていた奴らの名前

どこで自殺をするのか

家族への感謝の言葉達が綴られていた。


俺は家から走り出た。


ーーーーーーーーーーーーーーーー



「ごめん。だけど兄ちゃんは最後まで必ず生きて。」

俺の高校での現状を唯一知る、弟の願いはいつになったら叶うのだろうか?




ーーーーーーーーーーーーーーーー

おまけ(死ぬ方法だから見たくない人はスルーで)


1、高校でのいじめに耐えきれなくなり、首吊り自殺。(弟が自殺した後に自殺。この場合は繰り返していることは自覚できない。)

2、母がいなくなり、飛び降り自殺。

  ー>1、そのまま死亡。

    2、誰かに拾われる

    ー>1、直ぐに再び自殺。

      2、元の生活に戻るが、共に生活していた人物が死亡し、自殺。(今回)

3、通り魔や、事故に巻き込まれる。

+α(想像力が乏しいため、そんなに思いつかなかった。)

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