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なにもないけど、ドキドキな日々。

作者: ソウ マチ

先日、めっちゃ凹んだことがありまして……。


バイト先でエアコンフィルターのお掃除をしていたのです。今までは外で作業をしていたのですけれど、あまりに暑いので危険だと判断したイケメン先輩が室内で作業できるよう色々と工夫してくださって、すごく助かりました! ほんとうは全部のフィルターをキレイにしたかったのですけれどお掃除中はエアコンを使えないので、お客様にご迷惑をかけてしまう。途中まで作業して、続きはまた後日……という状態でした。


作業が終わったわたしに先輩が「どこまでできました?」そう聞いたので、できたところまで報告した。


先輩:続きは僕がやっておきます。

ソウ:え!? わたしがやります! 


先輩はわたしができないお仕事をたくさんしているから、わたしができる仕事は自分でやりたい。


先輩:ダメです。僕がやります。

ソウ:でも……(わたしができる仕事は限られていますから……)。


先輩:ソウさんは早く入会手続きの仕事ができるようになってください。

ソウ:?? (急に他の話題になった??)

先輩:時間の無駄なんです。時間がもったいない。


時間の無駄……。めちゃめちゃ凹みました。そうか……。わたしが早くできるようにならないと、教えてくださる先輩は他の仕事ができませんよね。わたしに教える時間は、時間の無駄ですよね……(涙)。すみません。これでも精一杯頑張っているのですが……(涙)。事実とはいえ、時間の無駄と言われるのはキツイなぁ(涙)。凹んで泣きそうになっているわたしに、聞こえるか聞こえないかの声で先輩が言った。


先輩:だから続きは僕がします。


しばらく意味がわからなかったのですけれど、どうやら先輩が言いたかったのは「掃除に時間がかかって手続きの練習ができないのは時間の無駄だから、手続きの練習ができるように僕が掃除をしますから、ソウは早く一人前になれ」ということ……らしい……。


冷たい目つき(← イケメンだけにマジで怖い)で冷たいこと言われたと思って凹んでいたら、まさかの不器用な優しさ!? それは優しさですか!? 見た目と内容のギャップにクラクラしますわ!! 


これは次の小説に活かす! 担当様から「ツンデレ君を出してください」とオーダーされているので、このエピソードは絶対に書く!! まさかこんな近くに主人公がいたとは!! 


ヘトヘトで家に帰ると彼氏さんが来てくれた。


彼氏:いまからお出かけしましょう!

ソウ:どこへ?

彼氏:マチちゃんがマッサージガンを欲しいって言ってたでしょう? プレゼントしますよ♪ いっしょに買いに行きましょう♪


バランスボールを椅子にしてパソコンで執筆しているおかげで、肩こりや腰痛はかなり緩和されたのですけれど、それでも毎日5~6時間ぶっ通しで書いていると、どうしても肩がイタイ。マッサージガンがあればいいなぁ~と言っていたのを、彼氏さんはちゃんとおぼえていてくれたのです! そしてプレゼントしてくださる! なんて優しい方なんだ! 


これは次の小説に活かす! 担当様から「優しいキャラを出してください」とオーダーされているので、このエピソードは絶対に書く!! まさかこんな近くに主人公がいたとは!!


優しい方と言えば……。

ジムの更衣室を掃除しようと思って、掃除道具を持って女性の更衣室へ行ったのです。そしたら洗面台の前に利用者の方がいらした。その方はわたしが入ってきたことに気づかず、洗面台の前でなにか一所懸命にしている。なにをなさっているんだろう?

その方、洗面台をタオルでゴシゴシ拭いていたのです。ご自分が使ったところだけでなく、ずっと遠くのほうまでゴシゴシ拭いて綺麗にしてくださっていた(涙)。わたしも使った場所は拭きますけれど、自分が使っていないところまで拭いたことはなかった。誰が見ているわけでもないのに、人知れず拭いてくださっている……(涙)。


これは次の小説に活かす! 担当様からそういうキャラを出してほしいとオーダーは受けていないが、このエピソードは絶対に書く!! まさかこんな近くにこんなに素敵な方がいたとは!! わたしが男だったらあらゆる方法を駆使してこの方と付き合う! なんて素晴らしい方なんだ!!


そういう嬉しいことがたくさんありまして「皆さんを見習ってわたしもイイコトするぞ~!」そう思って意気込んでいたのです。でも何をしたらいいか、わかんない。


イイコトはしたいけれど、どうやったらいいかわからないので、とりあえず髪の毛を切りに行きました。前髪が伸びてボサボサになっていたので、地域で一番安い美容室へ出かけた。

地域で一番安いお店なので、来るのは人生を達観した(おしゃれ心を捨てたとも言う)高齢のご婦人ばかりです。伸びた大仏パーマを地味な色で染めて切って、短い大仏パーマにする方がほとんど。


ソファには80代とおぼしきご婦人と20代の可愛らしいお孫さんが座っています。お嬢さんは綺麗な金髪。小さなお顔によくお似合いです♪ その髪型、真似したいけどこのお店ではムリだなぁ……(高齢者向けのカラーしか置いてナイ)。チラチラ見ていると、おばあちゃんの順番が来たようで手押し車を押して洗髪台へ移動なさいます。可愛いお孫さんは「終わったら電話してね♪」そう言ってお店を出ていった。


思い出した……。この店に地味な女性スタッフさんがいまして……。

お年は70代くらいなかぁ? 小柄で痩せていて、いつも黒いシャツと黒いズボン、黒い厚底のスニーカーをはいている方です。髪の毛は短髪で黒く染めていて、必要最低限のお化粧をしているだけ。おしゃれとは無縁の方です。いつでも黙々と大仏パーマの細いロットを巻いていて、話しているのを見たことがない。「地味」としか言いようのない方でした。


その方の髪の毛が明るいチェリーブラウンになっていたので、あれ?と思いました。っていうか、最初はよく似た別人だと思ったのです。だって髪の毛の色も違うし、キラキラ光るイヤリングを付けている。明るい色のルージュに、アイラインまでバッチリ入っています。しかもまつ毛にエクステンションが施されていて、バサバサまつ毛になっている! お洋服だって明るい色だし、やっぱり別人? でもよく似てるんだけどなぁ……。そして足元を見ると、靴だけはいつもの厚底スニーカー! 間違いない! あの人だ!!


驚いてガン見したのですけれど、まるで別人! 今まで誰とも話さず黙々とロットを巻いていたのに、今はにこやかに世間話なんかしてる! いったい何があったんだ!? 改めて見ると若くなってる! 以前は70代だと思っていたのに、目の前の方は60代前半にしか見えない!! 何があったんだ!?


たぶん……恋人ができましたね……。恋は人を変えるのですよ……。以前にとある図書館でどうしようもなくイジワルで無愛想でボロボロな服を着て顔色の悪い残念すぎる女性司書さんがいたのですけれど、どうやら恋をしたらしく、その変化は目を見張るものがありました! 見るたびにキレイになってゆく! ボロボロのお洋服はキレイな色の清潔な服になり、ボサボサの髪の毛はツヤツヤ、疲れて青黒かった顔はお化粧でキレイになって、何より愛想が良くなった! それまで何を聞いても「知りません、わかりません」しか言わなかったのに「今日は雨が降っていますから、足元に気をつけてくださいね♪」って言われた時は、感動しました! 恋はすごい! 恋は人を別人にしてしまう!! どこの誰か知らんが彼女のお相手、グッジョブ☆☆☆


大人になっても人は変わることができるのですね……。勉強になります!!


10歳以上若返ったスタッフさんのそばで、別の女性スタッフがおばあちゃんの髪の毛を切っています。おばあちゃんは小さな声で「もう死にたい」ずっと言い続けています。スタッフさんは青色(!)の髪の毛をパツンとおかっぱにしたお洒落でテキパキした女性です。彼女はテキパキ髪の毛を切りながら言いました。


青髪:どうしたらいいか教えてあげましょうか!? 家じゅうの窓を閉め切って一晩過ごしたらすぐ死ねますよ! 今なら確実! アハハハハ!!


お客相手に何を言ってるんだ!? なんてことを言うんだ!


おばあ:そんなことしたら、死んでしまう……。

青髪:死にたいんでしょ!? 絶対に失敗しないから大丈夫ですよ!

おばあ:そんなん、イヤや……。

青髪:そうでしょう!? 生きたくても死んでゆく人がいるんですから、そんなこと言うたらあきませんて!


うわぁ……。ヒドイ人かと思っていたら、ちゃんと考えてる方だったんだ……。わざと挑発して見事に着地! 勉強になります!!


安い料金で貴重な人生勉強をしているうちに、わたしの髪の毛もサッパリしました! 男の子みたいな短髪! いいの! おしゃれ心は燃えるゴミに出したから☆


お礼を言って外へ出ると、わたしより前に終わったはずの手押し車のおばあちゃまが外にいました。お孫さんが迎えに来るはずだけど、まだ来てないのかな? おばあちゃまはキョロキョロすると、駐車場のブロックに腰を下ろした。建物の陰になっているとはいえ、おばあちゃまとわたしがいるのは灼熱のアスファルトの上です。熱い……。熱さでおばあちゃまが心配なので、お孫さんが来るまでわたしもここにいよう。


目の前に灰皿がありましたから、タバコを吸います。持っていたお水を飲んで、もう1本タバコを吸う。吸い終わったらスマホを取り出して、メールチェックやなろうをチェック。熱い……。孫はまだか? その後もしばらくつっ立っていたのですけれど、アスファルトの照り返しがハンパない! 熱すぎる!! 我慢できない!!


わたしはわざと足音を立てて、おばあちゃまのほうへ近づきました。足音でこちらを向いたおばあちゃまに話しかける。


ソウ:お暑いですね! お孫さんが来てくださるのですか?

おば:それがな……。終わったら孫に電話するって言うてたんやけど、わたし、電話を忘れてきて……。


なんてこったい! いつ来るかわからんお孫ちゃんを灼熱の戸外で待っていたんだ!!


ソウ:それはたいへん! 電話番号はおわかりになります?

おば:その子の番号はわからんけど、ほかの孫の番号なら……。

ソウ:それならそのお孫さんから、もう一人のお孫さんへ連絡してもらって、迎えに来てもらいましょうね! 番号を教えてくださいますか?


おばあちゃまは、お財布から手書きのメモを出して見せてくれます。その番号へかけておばあちゃまにスマホを手渡す。


おば:……ただいま電話に出ることができませんって、機械の女の人が言ってる……。

ソウ:それならその電話番号に、お手紙を出しましょう! 番号にショートメールができるんです。

おば:……ほんとに申し訳ないことで……。

ソウ:困ったときはお互いさまですよ! こんなに熱くなかったら心配しないのですけれど、今日は熱いから!


「トメ(仮名)です。〇〇にルナちゃんが迎えに来てくれるはずでしたが、スマホを家に忘れたのでルナちゃんに連絡できません。ユリちゃんからルナちゃんにトメを迎えにくるよう伝えてください」

メールを送信する。


ソウ:これでお手紙は送ることができました。もう一度、お電話してみましょうか?


今後はわたしが電話をかけてみました。でも同じアナウンスが流れる。


おば:ここで待ってたら来ると思うから、どうぞ帰ってください。

ソウ:でもここは熱いから、お店で待っていらしては?

おば:お店はクーラーが寒いから……。どうぞ帰ってな。


そう言われて帰ろうとしたのですけれど、やはり気になる。勝手なお節介だけど、お店のスタッフさんに事情を話しました。スタッフさんも心配して、お店の寒くない場所でお孫さんを待っているよう説得してくれて、おばあちゃまは無事に店内へ。良かった! これで安心!!


おうちへ帰ってご飯を食べてお風呂に入ってマッサージガンでダカダカしていたら、気持ちよくて眠くなってきた……。今日もいろんなことがあったなぁ……zzz。


12時間(!)寝て起きてスマホを見てみたらショートメールが届いていた。


お孫:本日は祖母が大変お世話になりました。仕事中は携帯を持っていなくて連絡頂いていたのにすみませんでしたmーーm


良かった♪ ご無事にお帰りになられたんだ♪ 昨日のエッセイで自分の祖母のことをボロクソに言ったので、胸が痛かったのです。ほかのおばあちゃまだけど、おばあちゃま孝行できて良かった♪ それに優しいお孫さんがいてくれて、本当に良かった♪


よぉ~し! 今日もガンバルぞぉ~!!

皆さまにもうれしい出会いがありますように♪


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― 新着の感想 ―
[良い点]  おばあちゃん良かった良かった。 [一言]  私はバランスボールを椅子にしていて腰悪くなったんですけど……座り方が悪いんだろうなぁ。
[一言]  おつかれさまでした。  おばあちゃん、ほっとけませんね。  でも、その状態は困ります(汗)  時間がないときは、どうしようもありませんが、ずっと気になってしまいそうですね。
[良い点] 何もないだとーー?! イケメン先輩からのツンデレ、彼氏さんからの愛のあるプレゼントがあるじゃないですかーーー!! そして、マチしゃまからおばあちゃんへの優しさもあるーー!! 何もないわけじ…
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