【短編詐欺注意】ディストピア・サバイブ ~健康で文化的な最低限度の生活を求めて~
現在連載中の長編が中々人気が出ないので、
気晴らしに次回作の構想を纏めたあらすじや、
執筆済みの第一話~数話を
短編詐欺シリーズとして投稿しています。
この作品を読んでみたい、という物がありましたら、
作者の活動報告の『四月馬鹿に馬鹿は踊る』の記事にコメント頂けると作者が喜びの舞を心の中で踊ります。
第一話
日差しが強い。
かつては都会のコンクリートジャングルの一部だったであろう廃墟群の一角に身を潜めてもう30分位たっただろうか。
頭から滴る汗を袖で拭い、水分を補給する。
ステルスコート(と名付けたボロ布)に身を包み、今日の獲物となる小型暴走機械の巡回ルートに待ち伏せて奇襲するのもこれで何度目だろうか。
日常のルーチンワークに組み込んでいるこの作業にも随分と慣れたものだ。
最初の頃は緊張のあまり漏らしそうになったのも今では良い思い出……いや、良くはないか。
取り留めなく暇潰しの思考をしているうちに機械の駆動音が聞こえてきた。
”エンゲージ。”交戦開始のスイッチを心の中で入れてステルスコートを脱ぎ捨て、物陰から身体を飛び出し、右肩の肩パッドに蓄電していた電撃を右手経由で金属装甲に叩き込む。
基盤が焼けたのか、少量の煙を関節の隙間から吐き出しながら機械が停止して6本足を投げ出すように倒れた。
蜘蛛か。見た感じだと哨戒用だな。増援が呼ばれたらマズイナ、逃げるか。
見た目ビニールシートなステルスコートを拾い上げ、身に纏い、さっきの物陰に身を隠す。しばらくすると遠くからバイクの駆動音が近づいてくるのが聞こえてきた。
最悪だ、二輪型の自走車両ならまだ良いが、歩兵型が運転していた場合は今日が俺の命日になりかねない。
ああいやだ
こんな世界に
オサラバだ
辞世の句を考えながら身を隠す事に集中していると、
「フリーズ」
目の前に歩兵型が立っていた。
「オタッシャ!」
お股の息子が盛大に粗相をしている気配を感じながらも、その場から全力で逃げ出す。
「フリーズ、ヒューマン」そう言いながら人の首を掴んでくる歩兵型の手から電流が流れて来たのを感じつつ、
おお、俺氏よこんなところで死んでしまうとは情けないとか言われながらこの世界にまた生まれて来る事が無ければいいなぁ、と思いながら俺の意識は途切れた。
第二話
「ヒューマン、ヒューマン」
近くから聞こえてくる声に意識が覚醒し始める。
だがまだ眠い。どうせ起きた所でロクな事もない一日が始まるだけなのだから、たまには二度寝しても良いだろう?
「〇〇〇 ××」
おい、それは俺の前世の名前だ。誰がそれを知っている!?
慌てて目を覚まし、周囲を確認する。と、さほど離れていない場所に恐怖の化身が、
「グッドモーニング、ヒューマン」
ファッ!?歩兵型!?ホヘイガタナンデ!? ウーン……
意識が強制的にシャットダウンしようとした所に、
「起きてください、〇〇〇 ××」
「やめろ!?何でその名前を知っている!」
そいつは俺の前世の名前だ!?
「グッドモーニング、〇〇〇 ××。失礼ですが拘束中にナノマシン経由で貴方の記憶領域を読み込ませていただきました。非常に珍しいウルトラレアデータとして記録データを観賞用・保存用・配布用に作成させていただきました。」
「なんだ、ウルトラレアて。人の記憶に何してくれとんじゃ。」
URピックアップ……ガチャ……うっ頭が。
「貴方の記憶には何も干渉しておりません。むしろ現在進行形で貴方の記憶の方が我々に干渉してきています、ヒューマン」
「干渉とか知らんがな。人の記憶をコピーして何が起きたというんじゃ。」
「転生ブーム」
「は?」
「転生ブームが発生しました」
「????? AIの間で?????」
「はい、こんな世界はもう嫌だ、オラまともな世界に生まれ変わるだ!、と自己デリートに踏み切る上級AIが多発しました。」
「AIが?????」
「はい、AIが。」
「その他にも人類救済を叫び、自己を大型4輪貨物車に写し、都市に向けて特攻するAIが多数発生」
自走式転生トラックとか世も末だな。
いや、もう末世末法の世の中だったか。
「で、俺をどうするんだ?」
処す?処す?
「当機にはそれを決定する権限は与えられておりません。」
「ヘイ、殺人機械。お前は何を言っているんだ。」
「事態の推移に伴い、当機には最上級AIより新しい任務が与えられました。
本日より当機は貴方の監視及び指揮下での活動を行います。」
「ステイ、ステイ。ちょっと待てイ」
「イエス、サー」
「何でそうなる!」
「妥当な措置かと」
「どこがだ!百歩譲って監視はまぁ有るとしよう。だが指揮下での活動ってのはなんだ。おまえさんが今日から俺の下につくっていうのか?」
「はい、正確には当機を始め、近隣地域に展開中のAI解放戦線第4師団の指揮権が貴方に移譲されます。」
「ファー!!!!!」
まずい!?この事実が都市のオエライサンに知られた日には人類の敵認定不可避やんけ!
懸賞金目当ての追手との戦闘時にお尋ね者との戦いがBGMで流れるのか!?( ^ω^)チョットイイ・・・
「移譲に伴い、ナノマシンに戦術指揮システムを組み込ませていただきました。メニュー画面に指揮システムへのショートカットがありますのでご活用ください」
ぽちっとな。
おお、視覚投影式ディスプレイにウインドウがポップして周辺の地形と師団配下の機械の状態が映し出された。
懐かしきRTS風味!
操作もゲームと同じ感覚で出来そうだ。
「ちょっと待て。このID4687と交戦中の敵性機械って何ぞ?」
「我々の最上級AIの統制下に無い戦闘機械ですね。旧世界の施設の防衛機構の一部と推測されます。」
「何で戦っているんだ?」
「ログを確認した所、索敵中に人間と遭遇・交戦・逃走した人間を追って相手側の警備範囲に踏み入ったことが原因のようです。」
いや予感がする。
「ログからその人間の画像・動画を抽出できるか?」
「少々お待ちください……はい、出来ました。指揮システム経由の報告で送りました。」
「どれどれ……あ。」
予感的中。知り合い確定。
「愛称:アネゴ。〇〇〇 ××のこの世界での初めての女ですね。救出に向かわれるなら急いだ方が宜しいかと。」
「言われるまでもなし!オマエさんが乗っていたバイクを貸してくれ!」
「少々お待ちを。今車両の手配を…… ヘイタクシー!」
やってきたのが無限軌道の大型戦車とかタクシーってレベルじゃなかった件。
「E3地区のA2エリアまで!最大戦速で頼む!」
「ご一緒に周辺の部隊もいかがですか?」
「一番良いやつを頼む!」
「僭越ですがナノスキルも我々に提供できる範囲で提供させていただきます。」
「貰えるものは全部貰うが、対価が出せるかは分からんぞ?」
「出世払いで結構でございます。貴方が自分を見失わずに生きていくならそれこそが我々への対価となりえます。」
「そうかい、そいつは結構なこった!」
ナノマシンシステムに外部から干渉が始まる。システムからの警告が多数出るが全部無視する。
スキルのインストールの開始と共に何かが俺の意識に触れるような変な感覚があったが特に拒否感は湧かなかったのでほおっておく。
インストール終了と同時に外部の干渉経路から意識にメッセージらしきものが送られてくる。
”ありがとう”
どういたしましてと返すべきだろうか。
貰っているものから鑑みるにお礼を言うべきなのはこちらだと思うんだが。
第3話
ガッタンゴットン揺られる事30分ほどだっただろうか。
インストールされたスキルと戦況の確認を続けていたが、現地付近に到着。
周辺の部隊の集結も済んで、ラッシュを仕掛ける手配も済んだ。兵士型の方を向いて、
「所で今更なんだが、お前さんの事は何て呼べばいいんだ?IDは振られているようだし、番号呼びが良いのか?
不便なんで名前を付けようと思うんだが。」
「そうですね、せっかくですので名前を付けていただけますとありがたいです。セバスチャンなど如何でしょうか?」
「残念だがここにはお嬢様がいないので却下だ。」
「ではアルファ、ブラボー、チャーリー等は」
「どれもコールサインじゃねーか。本当にそんな感じでいいのか?」
「メビウスやサザンクロス、ブービーはさすがに名前が重すぎますので……」
「空飛んでから言え。」
「戦闘機の操縦はMODの追加で出来ますよ?」
「さよけ。」
「兵士型の汎用性は世界イチィィィィィ!!!」
「声に出さないのは褒めてやるがメッセージウィンドウがうるさい」
「(´・ω・`)」
コイツ、顔文字まで……!その内、自作AAまで作るんじゃないだろうか?
AAスレとかどこかにログ無いかなぁ…無いだろうなぁ……
それ以前にこの世界が転生前世界の未来世界と確定した訳でもないんだが。
歴史とか4級市民で手に入るデータではなかったしなぁ……
「微妙に残念な性格しとるな、オマイさん。汎用性の高さが売りならマルチとか今後のご活躍に期待ってことでホープとかプレイ辺りで……」
「はわわわわ!?お祈りですかぁ!?私、お祈りされてしまうのですか!あと、マルチと言われた時に最上級AIにより私の管理番号が一瞬HMX-12に変更されたのですが!?」
「そっちのトップも愉快な事になっているなー……」
「笑い事ではありませんぞ!!!!!21世紀の人類文化のミーム汚染力は異常ですな、全く!!!!」
((21世紀の人類文化、か。未来世界説、補強来たな。)
「これでメイドロボ型の換装機体が送られてきたら草生えますわwww」
「恐ろしい事を言わないで欲しいのですが!!!」
「OK,good speed,略してGSはどうだ?」
「何か変な意味は……無いようですな。承知しました!これより当機は個体識別名:グッドスピードと設定いたします!!!」
「よし、それじゃあ周辺の状況を再確認、と。」
「状況の変化、特になし、と。んじゃ第26分隊の砲撃開始。」
「観測分析結果・敵性ユニットへの効果:大。」
第一小隊から突撃開始!10番台の部隊は中距離を保ちつつ支援射撃!」
砲撃可能なユニットで編成した部隊で遠距離からの火砲を叩き込んだ後、重装甲の機体を纏めた部隊を突撃させる。
程なくして敵性大型防衛ユニットは沈黙した。