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魔神伯爵とThe Answer  作者: 宵闇顕葉
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4th. 連絡と問題点

 領地経営が始まってから3日ほど経った日、王城から連絡が届いた。


『リット・メルト・ヴランディア殿

 しばらくの間、ヴランディア領の経営は其方に任せる。

 バルト元伯爵の身柄は確保するが故、しばらくの間保管していただけると助かる。

 それと同時に、バルト元伯爵の悪事を暴くために屋敷を捜索させていただく。

 今のうちに準備されたし。

 ヴァンガース・ノヴァ・ヴァーレリア』


 まさかの国王様直筆だった。

 マジかという心の叫びを放置して僕は領地経営を続ける。


 余分な税についてはゆっくりと減らしていこう。ガクッと減らしてしまうと引継ぎが大変だ。僕がここに居られるのはあと4年くらいしかないんだ。学園に行くまでに勉強もしないといけないし筋力トレーニングも欠かせない。


 時間が足りない!


 今は領地経営を本格的にスタートさせたために身の回りの世話をするメイドとわずかな執事のみが屋敷におり、それ以外は浮いた金銭を用いて街に教会を築くことにした。


 教会。それはゲームでもお馴染みの非常にキーとなる場所だ。『クティフィアン正教会』とかいう名前なんだけど、クトゥルフと何かを混ぜてるらしい。明らかに『外なる神』を崇めているけれど、神はこの世で1柱のみと言われているために他の宗教団体と抗争が起きる…訳ではない。


 寧ろクティフィアン正教会は多くの神の存在を認めており、その中の1つ、クティフィアンを崇めるというように、他宗教のヘイトを回避している。宗教同士の抗争が醜いことを理解しているが故みたい。


 まあ、教会を築くのはそんな宗教屋を味方に引き入れるためだね。

 この教会を作れば他の宗教も大体仲間に引き入れることが出来る。まあ、魔神を崇める『魔獄神教』の連中だけはどうしても敵対せざるを得ないんだけど、クティフィアン正教会側が何かをする気はないらしいけど、最悪の場合はどっちつかずな手段にはなるけど魔獄神教側の教会も建てるつもり。


 宗教屋の人物は政治にも強い人が多いし政治家と宗教屋は絡みやすい組み合わせだからね。まあ、うちは何もしていなかったけど…。

 教会については5か月くらいかかりそうだね。まあ、少し耐えれば出来るし。


 後は屋敷前に小さな建物を建て、そこに3人ほどの作業員、多量の紙、インクを用意した。彼らは速記の能力があり、領地の経営に重要な情報をくれる。

 速記文字に至っては僕も学んでいるからそのまま読めるし、作業効率は分からないけど領民の意見が聞けるだけで先が見通せる。全ての要望は期待できなくともどうにかできるはずだ。


 さて、ここまでは想定通りだ。

 問題はこれからの話。


 バルト伯爵を連れ去る時、屋敷捜索に入るらしいけれど、この書類には問題点が溢れていて、まずは偽造書類があまりにも多すぎる点、まあ、宰相に話を伺えばどうにでもなる。宰相の嘘発見能力はこの国名物だからね。さて、最悪なのはご丁寧に僕の名前で通していた法案もあったことだ。それが異常な増税。領民からは石を投げられることもあったし、殴られたことだって1度や2度ではない。領主の息子だとは言え、実質捨て子だったからヴァイスさんや他のメイドさんたちが拾ってくれなかったら本当に死んでいた。


 さて、黒い話もここまで!これから税の引き下げプランについてと、ここまで以上に税を使いまくったんだから彼の私腹も肥えている。なら、搾り取るしかないよね?


 僕はバルト伯爵が着服した資金をほぼすべて彼のポケットマネーから回収した。日本円に直して10億円くらい。領の事業をどうにかするには圧倒的に足りない。睡眠薬を飲ませるまでに大多数を使いきったらしい。どうせこの後も税を上げて徴収しようとしたのかな?ふざけやがって…。


 ちなみに、晩餐会の会場の宝石類はすべて売り払った。総額2911億円分くらい。半端なさ過ぎて笑えてきたよ。宝石類は魔法の触媒にもなるし、高く売られても仕方ない。ここまで高額になるとは思ってもみなかったけどね。


 って、そんな話は置いておく。経済的な面は一時的に潤った。だからここで一気に畳みかける。


 まずは領には開発できていない鉱山や森林がある。魔物討伐は僕もやるとして、領地開拓は進めていくことにしよう。死亡する可能性もあるから給料は少し多めに出す。他領への売り上げによってはよりこの領の経済が潤う。それに、加工技術も上げたいし何なら学校も作りたい。平民貴族と別れているこの世界の中では本当に面倒くさい話だけど、まあ、1000億くらい使えば学校は作れる。教師も雇うか。で、基本的に平民の10歳くらいから学校に無償で通えるように手配しなければ。教科書に仕える書物の書き写しとか、印刷の型番を作ったり大変そうだ。まだアナログな方法だけど、こんな方法しか使えないのが辛いね。地球が恵まれているのは良く分かったよ。


 さて、領地経営のプランは出来てきたけど、僕がここを出るまでには終わらないな。ヒール追放イベントが終われば僕はここに戻るのが基本無理になる。帝国が戦争に勝ち、王国を占領しなければね。


 僕が目指すルートは()()()()()()ルートだ。アフタールートともいう(これからはアフタールートと呼称していこうと思うよ)。だけど、リリィさんが傷つくことだけは無いようにしたい。彼女は僕を助けてくれた恩人だからね。


 そう言えば、ここには日時が書かれてなかったな。ひょっとしたら、この手紙が来た直後かその日に捜索するとか?…ありそうだね。でも、書類に至っては僕が書いたものは僕自らまとめた部分にしかないし、僕の名前で行った政策については徹底的に壊しているし、そろそろ勘の良い領民の人たちは気付いているはずだ。そもそも、僕が捨てられたところを目撃している領民もいるからね。僕を哀れんで助ける人もいるかもしれない。期待はしないでおくけどね。


 政策についての問題点は執事やメイドに聞いている。宝石の類が高値で売れたけど、それでもすべての政策に回すには明らかに足らない。給料を出して、税である程度回収するという循環するシステムを作らないと。他所の領に対しての輸出入については一旦ストップしている。自分の領地の安定が図れていないうちに他領に助けを求めると付け上がられる可能性もある。それは後々良くない。

 さて、領民から搾取するのは一時的には効率が良い。しかし、長期にわたっては悪手だ。税を大きくし過ぎてここまでおかしな経済が生まれた。取りあえず、まずは緩やかに財政と経済状況を回復させる。一気に変えても警戒される危険性もあるしね。それに、物価とかのバランスも考えないと税率をどうにか安定させるのが難しくなるし。


 と、そこまで考えたところで速記の作業員たちが帰ってきた。そして、山のように積まれた資料を僕に渡す。彼らは一日中書いたこともあり腕が重そうだ。休みの期間を与えてはいたが、少なかったのかもしれない。スケジュールについても考えないと。


「ご苦労様。今日は試験的な業務だったんだけど、どうでしたか?」

「はい。まずは領民たちが我先にと来てしまい、想定よりも多くの業務になってしまいました。流石に3人で回すのは難しいかと。」

「なるほど…。」


 まあ、そう言うことだろうと思ったよ。明らかに不満が溜まっている領民たちが意見を述べる機会を与えられたんだ。挙って集まるのは理解に難くない。

 人数制限をするとなると…ああ、これがあるな。


「じゃあ、これからは整理券を彼らに渡して、その券を見せた人だけ受け付けるっていうシステムにしてみませんか?」

「確かに、それなら我々でもできそうです。」

「他には何かありますか?」

「いえ、特にありません。」

「整理券のシステムは手始めに1人30枚の計90枚発行して様子見をしようと思いますが、どう思いますか?」

「領民たちの意見を聞いて処理していくには時間も必要ですが数も必要です。それで十分なのですか?」

「まあ、普通なら足らないと思います。ですが、私も人間ですよ?それに、領民たちの意見を聞いて出来る限り尊重すれば後々の領の発展につながるかと。」

「…承知しました。」

「仕事が足らなかったら言ってくださいね。この量からして、今日だけで1人100人以上話を聞いたんですよね?」

「…流石にこれ以上の業務はご勘弁を。」

「うん、使い潰すことはないから安心してくださいね。それに明日は休みです。整理券については後々考えていきましょう。」

「分かりました。失礼しました。」

「給料は近くのメイドさんが持ってるはずだから受け取ってくださいね!」

「はい!」


 彼らが去って行った後、僕は資料整理に追われた。取りあえず、今日やれるだけのことはやっておこう。


 領民の意見をまとめてみるという言った内容だった。


『税が高すぎる』

『娼館の女が下手』

『畑がやせ細っている』

『スラム街の連中が盗みを働く』

 …。


 などだった。スラム街にも整理券を配りに行くかな。彼らの言い分もちゃんと聞いて改善しないと。

 スラム街はあることによって町の平穏が保たれる場合もあるが、最終的に領民はそこに連れていかれるかもしれないという恐怖を抱く。スラム街は隷属同等に落とされた人間やその子孫によって成り立つ。貧しい人々の巣窟だ。これを取り除いて、領全体を栄えさせないとね。後はスラム街から強い魔法の適性を持つ人々がいるかどうかも探してみたいし。


 さて、それ以外についての回答は、


『高い税率について』

 解答、3年かけてゆっくりと減らしていく。

 前領主の無駄遣いにより意味のないものに使われていた。それを売り払い運営の資金にしたが政策の為もうしばらく民に負担をかけることになる。徐々に軽くするがもうしばらく耐えて欲しい。


『娼館の女が下手なことについて』

 解答、他領から優秀と称される人員を教師として招き、従業員たちに教育させる。下手なことについては何とも言えないが、改善されることを期待する。しかし、他領から雇うことになるため対応が遅れる可能性がある。


『畑がやせ細っていることについて』

 解答、植物型の魔物を燃やした灰が質のいい肥料になる。森に生息していることは確認できているため討伐に赴き確保する。作物が育たぬ領は領地経営にも不利だ。迅速に対応する。


『スラム街の連中について』

 解答、彼らに仕事を与えようと思う。人員として雇うことに抵抗があるかもしれないが、貧しさから解放されるとなれば彼らは喜んで協力するだろう。彼らを雇った者たちには先に減税の対象となってもらい、どれほど税を下げればいいかの基準にさせてもらう。


 …。


 こんな回答を書き、僕は伸びをした。未だに作業は終わらず、もう日が暮れそうになっている。今日は筋肉トレーニングは無理かなと考えた時、リリィさんからこんな知らせが届けられる。


「王都より捜査官の方々と宰相が到着なされました!」

「ッ!…想定より早いですね。今すぐ行きます。」


 ああ、時間が足らないし仕事が終わらない!

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