2nd. シナリオと力
2023年05月22日
変更点:魔法の名称の変更。
ステータスについての表記の削除。
まずは、ヴランディア家がどのような家かについて調べないといけない。この家での行動はかなり今後のシナリオに関わってくる。
まずはあれだけ挑発してしまったが父親は腐っても伯爵。最低でもこの家から追放なんてされたらヒールを演じたところで意味は無くなってしまう。ヴランディア家の長男としていく必要がある。
実は、公式設定に同い年の腹違いの弟がいるというモノがある。その中でも優秀な方を学園に送り出し、権威を見せつけるという狙いがあるらしい。また、元々が虐待された中での生活だったがために性格が捻くれており、強さを見せつけるシーンで多くのプレイヤーたちに不快感を与えていた。最も、ヒール…いや、どちらかというとヴィランだが、捻くれた理由が考察され、リットに深堀されたイベントやシナリオがDRCで登場してやっと『コイツ良い奴だったのか』と言われ始めた。実際、悪役に徹するとはいえプレイヤーたちに協力してくれたケースというのは一度や二度ではない。何なら最後まで協力してくれるルートもある。敵対すれば悪魔に憑かれでもしない限り勝機はない。
悪魔に憑かれ、一見強化されているように見えるが、実際はリットがその力を抑制してしまったために本来の7割程度の力でしか戦えていなかったという裏設定があった気がする。とはいえ、そんなリットに転生した僕はおそらく凡人だ。原作ほど力を出せないと考えておくのが無難だろう。
次に武器についてだ。
リットは主に剣を使っていたはずだが、それ以外のリットのサブウェポンを忘れてしまった。そこは記憶に引き継がれなかったのだろうか?自分の武器適性については調べた方が良さそうだ。後で執事長に武器を貸してもらおう。
魔法についても考えないといけない。
元々、転生する前の僕は魔法のない世界にいたはず。そう考えると、魔法の改造なんかもできるかもしれない。異世界の知識があれば効率化や弱い魔法の有効的使用方法について研究できるかもしれない。
文字や言語についてはリットの知識以前に日本語だから問題なかった。恋愛ゲーム世界だからと言ってご都合主義過ぎる。というか、古代文明とかの文字、ラテン語とかになってないよな?まあ、読めないからどうしようもないけど。
取りあえず執事を呼んで武器を持ってこさせよう。武器庫にあるとは言え、僕は貴族令息。こう言ったことで足を運ぶのは礼儀的にアウトだ。
「あ、ヴァイスさん。」
「!…何でございますか、リット様。この私めに何なりとお申し付けください。」
彼はヴァイス。18歳の若い執事だ。執事長の息子として生まれ、彼自身が望み執事の道を歩み始めた。今では執事長の息子という肩書よりも、敏腕執事としてこの屋敷では有名になっていた。僕の記憶にあるリットも、幼い頃からよくお世話になっていたみたいで荒んだ生活を送る中でも彼のことは敬語で話そうとしていたみたいだ。結果的に呼び捨てをしてしまったらしいが、名を呼んだことで彼にも喜びが見える。
いっそのこと使用人の名前すべてを覚えてみようかな?
そんな話はともかく、本題に入る。
「実は武の鍛錬をしたく、これから外出するのですが、多くの武器を持ってきてくださいませんか?他の者を使っても構いません。」
「承知しました。」
これで良し。後は外に出て武器の適性を調べないといけないな。
…ついでに魔法を使う感覚についても調べておかなければ。リットの記憶を読んでみたが魔法を使った様子はない。魔法に関する研究に手を出していたようだが、まあ、今の僕はリリィさんと同じ10歳程度。魔法が発現すると言われているのは学園が始まる15歳程度と言われている。
魔法というのはこの世界では何かしらの影響によって『適性を授かる』と言われている。これを『魔法が発現する』というようだ。しかし、そこにリットは疑問を覚えており、何か別の要因で魔法が使えるようになると考えたそうだ。この時点で500年ほどの魔法史を書き換える考えなのだが、それをリットは見つけ出せなかった。
当たり前だ。
このからくりをノートや記憶を見て解いてみる。
①,魔法は『魔力』という力をどこかしらの器官により取り入れることによりその適性を獲得し使用できるようになる。使用する際は『詠唱』が必要になる。例:【フレア・アロー】など
②,魔法適正は人によって異なるが、それはその人物の生活環境や血筋、特異な例として突然変異による混合などにより変化する。
③,身分によって魔法適正確立に差異がある。
④,魔法使いとして大成するのは神に深き信仰を捧げた者のみである。
などと教え込まれたことが確認できた。しかし、リットは③と④が宗教や国家の思想による捏造だと切り捨て、スラム街や平民の住む町へお忍びで出かけることも考えていたらしい。使用人に見つかりそれは叶わなかったそうだが。
そして、リットが出した結論は…。
⑤,生まれた際に神により受けるとされる『祝福』が魔法発現を停滞させている。
⑥,神により祝福を受けられないスラム街には有力な魔法使いの原石のたまり場になっている可能性が高い。
と言ったことだった。
醜い環境で生き延びた彼らは『魔悪』と呼ばれる魔法適正を強く得ている可能性がある。
さらに、と付け加えられていた内容には、
①を否定する材料になりえるかは不明だが、身体的or精神的ストレスは魔法適正を『聖』から『悪』に近づけるまたは『聖』を持ったまま『悪』を獲得する、食性などから魔法適正が変わるとするならば『食事制限』や『血気術』による血や養分の操作により魔法適正を変えることが可能かもしれない。
とある。
ここらに欠陥があるとするならば、
なぜ人間にのみこの考えが適応されると考えたのだろうという話だ。
魔物と呼ばれる生物がこの世界には存在するし、その魔物は多くの魔力を持って居ることが知られている。魔法そのものを使うモノが居ないと言われているが身体的特徴を見れば明らかにわかることがある。
魔物は『魔力』によって『変質』した動物なのではないか?
ゲームでは魔物という生物は神敵とされていたが、そもそもの話彼らはベースとなった動物がいると思われる。
何故か角の生えたウサギ『ホーンラビット』や血のように真っ赤な色をしたイノシシ『ブラッドブル』、ウマに角を生やした『バイコーン』なんかもいる。
おかしい点は死んだそれらの体を見てみるとほぼすべての固体の骨が折れている点だ。攻撃した箇所とは違った場所の骨が必ず折れている。冒険者へのインタビュー内容がノートに載っていたがこれが事実かどうかは未知数だ。しかし、これがもし正しいとすれば『始祖』の魔法による身体強化があったと考えられる。
魔法についてはある程度この時点のリットも学んでいた。『始祖』という属性は始まりを表すその名の通り、『始まりの命』を表している。無系統などの属性を合わせた区分であるが、身体強化もまたこれに分類される。魔物は並外れた身体能力を持って居る上に魔法を使っていないと思われているが、実は常時身体強化をしているがために並外れた身体能力を持って居るのではないか。
さて、まだ執事たちが来るには時間がかかりそうだ。もう少し考えよう。
魔力によって変質した動物が魔物と仮定するならば、人間にも同じようなことが言えるはずだ。
この世界には動物と魔物がそれぞれ存在する。そこで僕が気付いたのは魔物と動物の生息圏だ。実はとても細かく見てみると魔物は他の動物と生息地の分布が僅かにズレている。地図はこの世界では滅多に作られていない為調べることはとても難しいが、誰かが簡易的なそれを作ることに成功すれば魔物の発生についてのメカニズムやそれを利用した魔法発現の謎について迫ることが出来るかもしれない。
要するに、魔法というのは奥深いということだ。
さて、執事やメイドたちが多くの武器を運んできた。
「ご苦労様。重かったでしょう?」
「いえ!私たちは全然大丈夫です!」
「それでもです。私の我が儘に付き合ってくれたんです。だから、父に言って明日は休暇を取らせてもらいましょう。」
「い、いえ!リット様、バルト様に近づくのは今はおやめになさった方がよろしいと存じます。」
「…私が散々煽って気を逆撫でしたという話でしたら問題ありませんよ。少々脅して学園に行くまでは実質的な支配をする予定ですから。」
「そ、そうなんですね。」
僕が武器の適性を調べるのにここまで全力を尽くすのは『裏切り』対策だ。リリィさんはまず裏切らないと言ってもいい。彼女はリットがラスボスになるルートでも彼のことを想い続けていた。実際、ラスボスになるルート以外ではカップリングルートもあった。とはいえ、今回目指すルートは彼女とのカップリングはあり得ないルートではあるんだけど。
それはひとまず置いておいて、他の使用人たちがこの話をばらす危険性は勿論ある。さらに僕の体は10歳。魔法が使える大人からすれば取るに足らない存在。だから武器の扱いだけでも学んでおく必要がある。護身術に暗器くらいは覚えておいた方が良いかもしれないし。
置かれている武器には大鎌や大剣、大槌に大斧、槍に薙刀、直剣に弓など、近接武器から遠距離武器まであった。流石に銃はないが、飛び道具なんかもあることからこれは良い収穫かも知れない。
取りあえず、僕は大鎌を持とうとするが重量的にまだ持つことは難しそうだ。直剣がギリギリ持てる重さと考えると話にならない。
うーん、やっぱり大きな武器を持ちたいな、大鎌とか大斧とか。
僕とは別の何かがこれを持ってくれたらいいんだけどな…。
ふわぁ…。
「えっ?」
大鎌や大斧が持ちたいと考えた、別の何かが持ってくれたら…と考えた。
…待てよ?
浮遊魔法?…ってことは、
「『始祖魔法』って、まさか想像で使う魔法なのか?なら!」
僕が望むように、回りながら突進しろ!
ブンブンブンブンブンブンッ!
ストップ!
…(浮遊したまま制止)。
「ハハハ…。詠唱なんていらないのかもね…。」
この様子を見た執事やメイドは口を開けてあり得ないと言った様子でこちらを見ていた。
まさかだけど、魔法は封じ込められたわけではない?そうなると誰も使おうなんて思わないだけ?
そう考えても辻褄が合わないことならあるが、ひょっとすれば魔法は適性を得られるかにはよるが適性が得られていれば何でも使えるのでは?まさか、他の魔法もイメージで何とでもできるのか?
取りあえず浮遊魔法を使い僕の動きに合わせて動くように設定して振り始める。
集中している所為か分かり辛いが何かが減っている感覚もある。魔力だろうことは考えられるがそれを気にする暇はない。少なくとも、大鎌に至っては適性がありそうだ。振り回すのがとても楽で手に馴染む。
刀…も振ってみるか。
居合、三段突き、燕返し…。
正直名前についてはセンスが無いと思うし何となく振ってみたけど、何となくそれっぽい技は出来た気がする。刀は適性ありだとしても少し使いづらいかもね。
薙刀は…。
大斧は…。
大剣は…。
弓は…。
暗器に至っては使い方が何となくわかった。結局一番使いやすそうなのは指輪状の毒を仕込める武器だね。暗器そのものに適性はあったみたいですごくやりやすそうだ。
調べてみた結果、僕はほとんどの武器が適正ありのようだった。少なくともこの場にあった武器全部適正ありだと考えてもよさそうだった。
しかし、ゲーム時代のリットには剣と魔法以外の適性は無かったはずだ。ひょっとしたら前世の僕って結構ヤバい人だったのかもしれない。