重ねる日々
朝、顔を合わせた彼女におはようと告げる。
綻ぶような笑顔でおはようと返してくる彼女の顔を見る。
歩く道ばたに生えた草木を見る。
日差しを浴びて伸びやかに枝葉を伸ばす木々や、その上に止まる鳥のさえずり、吹き抜けていく風を感じる。
たどり着いた町で交わす言葉。そこで暮らす人々の様子。笑顔もあれば泣き顔もある。思い悩む顔も怠惰に飽きた顔も、それぞれの思いを抱えて人々は暮らしている。
そして自分の成すべき事を成す。
魔力を練り、地を動かし、あるべき姿へ戻す。
私の全てはこのときのためにある。
世界をあるべき姿に戻す、それが私達の役目なのだから。
役目を終えた私に、彼女がまた綻ぶ笑顔でお疲れ様、とねぎらう。
そしてその笑顔のまま、次の仕事はまた遠そうね、と続けた。
次の役目があるのなら、と私は気を引き締める。
また次の朝、旅と出会い、それらを繰り返して、私は明日も生きて行く。
いつまで続くかわからないが、続いていく限り、私は明日を繰り返す。
止めたくなったら止めても良いのよ? と彼女は微笑んだ。
私は首を振る。彼女はその反応を知っていたとばかりに肩をすくめた。
付き合わせている彼女への罪悪感はあるけれど、私は足を止めるつもりは無い。
積み重ねたら積み重ねただけ、いつか終わりを迎えたとき、彼に近づけるかもしれないのだから。
即興小説トレーニング様にて
お題:生きている儀式 制限時間:30分
で執筆させていだきました。