花の行く末
「やっと見つけたわ。探したのよ?」
コツン、と白い日傘が地面を付く音に菜生は振り返る。
見慣れた菜の花色の微笑みに、真面目な彼女は呆れたようなため息を漏らす。
「あなたが私を見失う訳が無い。あなたの方こそ何していたんだ?」
「ふふ、たいしたことじゃ無いわ。それより、手伝いましょうか?」
そう言って、アンバーは菜生の隣に屈み込んだ。
そこに咲いていた小さな花に伸ばした手を、やんわりと菜生の手が遮った。
そのまま菜生はその小さな花を根っこから抜き取り、日当たりの良い場所へと植え替える。
かちん、と腰に差した鍔が鳴って、掘り返した場所は綺麗にならされた道へ戻った。
「ついでにその手も綺麗にしたら良いのに。本当に変なところで律儀よねぇ」
「必要ないところに力を使いたくないだけだ。川で流してくるから、ちょっと待っていてくれ」
「は~い」
足早に立ち去る菜生を見送ったアンバーは、道ばたへ植え替えられた花を見下ろしてから傘を開く。
くるくる、くるくる。
傘を回しながらニコニコと穏やかに微笑む。
「待たせた」
「おかえりなさい。ねぇ、どうしてこの花を植え替えたの?」
すぐまた足早に戻ってきた菜生を振り返らずに、アンバーは尋ねた。
くるくる、くるくる、傘を回しながら。
何故そんなことを聞くのか、と怪訝そうな顔をしながら菜生が答える。
「そうするべきだと思ったからだ」
「そう。きっとこの花はこの後、誰に踏まれることなく、道行く人の目を楽しませるのでしょうね」
傘を回す手を止め、ニコニコと微笑みながらアンバーはそう言った。
彼女の傘には未来が映る。映った未来を語っているのか、そうなるようにと願った菜生の心を見透かした言葉なのか、彼女には分からない。
それでも、菜生はアンバーの言葉に微笑みを浮かべた。
そのまま二人は黙って道を歩き出す。
道の続くまま、二人の魔女は世界を漂っていく。