41-1 謎の襲撃者
通信を切ると「まさか、あのバリエガータがやられるなんて、思わなかった」深くため息を吐くロイ。
『バリエガータ。コモンがなんとかしてくれるんだよね? 元に戻れるんだよね?』シュールが涙声で聞くので「ああ。心配するなと言ってたから、大丈夫だろう」
『よかった……でも、インサニアのフリをしてバリエガータを襲うなんて、何者なの! 許せない!』シュールは敵を討とうと意気込んでいるが、ロイは黙って考え込んでいる。
『ロイ。バリエガータの敵討ち』
「……ああ」
『ロイ!』
「……ああ」
『……何を考えてるの?』
「奴は、バリエガータを排除した後、どこへ行ったんだろう?」
『……そうだ。また誰かを殺りにいったのかもしれない』
「奴の狙いはたぶん僕たちだろうから、そうなると、ここに戻ってくるだろう」
『危ないじゃん! 今度はみんなが狙われるよ!』
その時、クラリー夫人たちの様子を見ていたアニスが、受け入れた住民たちの対応がひと段落着いたバーネットと一緒に、作戦会議室へ入ってきた。
「お疲れさま。みんなの様子はどう?」ロイが声を掛けると「私のほうは、とりあえず全員の治療が終わって、一息入れに来たところよ」バーネットがコーヒーを入れはじめる。
「私も、落ち着いた、から、報告、来た」
「そうなんだ。じゃあ、少しゆっくりして」
「そうも言ってられないでしょう? メインシェルターの取り外しはどこら辺まで進んだの? 進捗が知りたいわ」
「今、隣のゲートナンバー二十五の、メインシェルターの取り外し作業をしてるよ」
「ゲートナンバー二十五のメインシェルター? どうしてここを飛ばすの?」
「実は……」
マーティが、「漆黒の狼」たちと一緒に走り込んできたバリエガータのあとを追ってたとき、エアポートの建物から降りてくる「破壊の女神」を見たところから、「破壊の女神」を召喚した何者かに襲われたバリエガータのことを話すと「バリエガータが!」驚くアニスとバーネット。
「どこにいるの! すぐ治療しないと!」バーネットがロイのところへ走ってくると「今「冥府の宮殿」にいるそうだ」
「「冥府の宮殿」に? どうして?」
『あのね、バリエガータの体がね、消し飛んじゃったんだって……』シュールの涙声を聞いて「ウソ!」悲鳴を上げるアニス。
「そんな……なにも、残ってないの?」声が震えるバーネット。
「襲われたとき、辛うじて意識だけは抜け出せて、「冥府の宮殿」に戻ったと、コモンのところに彼女の使い猫が知らせに来たそうだ。だからさっき、一旦戻るとコモンから連絡が来たんだよ」
「それで、バリエガータは元の姿に戻れるの?」
「コモンは大丈夫だと言ってた」
「なら、大丈夫ね。よかった……」椅子の背もたれに掴まってホッと息を吐くと、左のポケットに入っているバラのペンダントヘッドを握って、コーヒーを淹れに戻る。
「バリエガータ、戻ってくる?」心配するアニスに「さすがに無理だとコモンが言ってたよ。きっと、体調が落ち着くまで動けないんだろうね」
「そう……。でも、無事?」
「ああ。心配するなと言ってたからね」
「……そう」アニスの表情が和らぐ。
しかし、「ここで、二人に話しておかなければならいことがあるんだ」表情を硬くしてロイが声を掛ける。




