39-2 暴かれた秘密
その後、目の前のハンマーが、ゆっくりと燃えるような赤い長い巻き毛でオレンジ色の柄を持つ「破壊の女神」の元へ戻っていくと、さすがのバリエガータも、「封印の宮殿」に保管されていた「破壊の女神」の力の前では、防御するのが精一杯の力の差を知っているので、黙り込む。
『どうやら、あなたの立ち位置がどこなのか、わかったようですね』薄ら笑いを浮かべるインサニアの姿をした男に『妹を助けたときに、「破壊の女神」像を持ち出したのですか?』恐怖におびえながら聞くと『そうですよ』あっさりと認めるので『どうやって「封印の宮殿」の管理者を納得させたのですか?』
『納得などさせていません。私は管理者の許可なしに、「封印の宮殿」に自由に出入りできますから』
『そのようなことは聞いたことがありませんが』
『当然です。あなたが知る必要はありませんから』
そう言われてムッとするバリエガータだが『それではお聞きします。どうしてここで破壊工作を行うのですか? ここには、あなたが復讐をする目的の者がいないではないですか?』
『なにを言ってるんですか。私の復讐を邪魔しようとしている者が、余計な人間を呼び寄せているではありませんか。そんなことを見過ごすことはできませんので、こうして削除しに来たんですよ』
『では、やはりあなたの目的は、「尋ね人」たちを消すことなんですね!』
『そのとおりです。なので、くれぐれも私の邪魔をしないように、できればあなたから「冥府の将軍」に忠告していただけませんか?』
『あなたの邪魔をすることはしないように、と?』
『もの分かりのいい方は大切にしますよ。では、「冥府の将軍」に、私からの言付けを伝えに行ってください』
『それは無理です。「尋ね人」たちをあの方の元へ送り届けることは、私たちの最優先事項ですから』
『そうですか。それは残念です』インサニアの姿をした男は深くため息を吐き『そうなると、あなたをここで削除しなければならなくなります』
『そのような脅しには屈しません。わたくしも宮殿を管理する役職に付いている者として、あなたの行いを……』
スパッ! スパッ! スパッ! スパッ!
インサニアの姿をした男が右手を左右に素早く動かすと、ブーメランのような光が複数バリエガータたちに飛んでいき、傍にいる「漆黒の狼」たちごと切り刻んでいくと、バラバラになって消滅していく。
『ちゃんと忠告をしたのに、それを断るあなたが悪いんですよ』ヤレヤレと肩を竦めると『さて、目障りな者はいなくなりましたので、邪魔者を削除するための破壊工作を再開しましょうか』
インサニアの姿をした男は、振り向いて後ろに立っている「破壊の女神」に
『レディア・アダエロポテュム・ウビ・アンティア・エラス。(先ほどのエアポートに戻れ)』
と言うと右腕を差し出すので、掴まると、ゲートナンバー二十のエアポートへ向けて飛んでいく。




