37 「封印の宮殿」とグリーク
「もしかして、インサニアがグリークをスーブ カービアに閉じ込めたのは、「封印の宮殿」について、調べられないようにするためでしょうか?」
『コモンは知ってるから、違うと思うよ』否定するシュール。
『まあ、ある程度は知ってるというくらいだ。しかし、私でも「封印の宮殿」に入るには許可がいる』
「そうなんですか! でも、そうしたら、インフェリースなら入れるんじゃないですか? 古代神に近い位置にいる「冥府の王」なんですよね?」
『インフェリース様も、グリークの付き添いがあれば、だ』
「そうなんですか!」再び驚くロイ。
『グリークって、そんなにすごいの?』シュールもビックリ。『猫目からは想像できないよ』
『まあ、ヤマネコの化身にされた、あの姿からでは想像できないだろうな。覚えてるか? モスカールをはじめ、グレイターも容姿を変えられているだろう?』
「そうだった。確か「復讐の女神」の力で変えられてしまったとか言ってたけど……サチェルドス・デイ(神の巫女)には、そんな力があるんですか?」
『だから、門外不出だったんだ』
「なるほどって、では、コモンが召喚した「報復の女神」たちや、確か、ワームウッドも「守護の女神」を召喚してた。それに、謎の召喚者とともにいる「破壊の女神」たちも、何かしらの能力を持ってるんですか?」
『まあな。しかし、それぞれの像がその能力を使うときは召喚者が指示を出したときなので、召喚者がその能力を把握してなければ、使うことはできない」
「女神像が自己判断でその能力を使うことはないんですか?」
『それはない。あくまでも、召喚者の指示があってからになる』
「それでは、それぞれの像がどんな能力を持ってるのか、念のため、僕たちは把握しておいたほうがよさそうですね」
『そのほうがいいだろうが、今の事態を考えると、この危機を抜けた後に検討すべきだろうな』
「……そうですね。今は、余計なことは後回しにして、この危機を乗り切ることに集中しなければいけませんね」
『そういえば、謎の召喚者が奴だと確認が取れたのか?』
「いえ。僕たちは別者だと考えてます」
『理由は?』
「インサニアが召喚したのは「復讐の女神」です。もし、召喚中でも、ほかのサチェルドス・デイ(神の巫女)を召喚できるのであれば話は変わりますが、今のところ、目撃されてるのは「破壊の女神」だけで、「復讐の女神」は確認されていません」
『そうか。召喚中にほかのサチェルドス・デイを召喚することはできなくはないが、特殊な例を除いて、基本、できない』
「では、奴ではないと思います」
『となると、特殊資格者の誰かということか』
「特殊資格者とはなんですか?」
『サチェルドス・デイを召喚する資格を持つ者の総称だ』
「バーバスカム語の取得者ですか」
『それだけではないが、まあ、そう理解して問題ない』




