34-2 始まる破壊工作
「しまった。もう四つ目になってるのか。一気に進んだな」頭を抱えるロイに『黒いマントを羽織った男って、マーティの話ではバリエガータって言ってたけど、違うのかな?』考えるシュール。『狼の群れを操るのはコモンだよね?』
「コモンは「報復の女神」たちと、ゲートナンバー十五のメインシェルターの取り外し作業をしてるから、違うよ」
『だよね? じゃあ、狼を操るマントを着た男は、誰?』
「わからないけど、左端の船のエンジントラブルと火災も、右端の倉庫の崩壊も、もしかしたら、何者かによる破壊工作かもしれない」
『でも、どうやって壊したの? 両方とも人間ができることじゃないと思うけど』
「ああ、両方とも人間業じゃできないよ。そう、まるで、「なにかの女神」の仕業のようだ」
『ロイ! それって、もしかして「復讐の女神」のこと!』
「そうだと考えれば、納得できるだろう?」
『インサニアが、「復讐の女神」を連れてここに来てるというの?』
「僕たちと入れ替わろうとしてたんだ。考えられることだろう?」
『まあ、そうだけど……』
(さっき、ひと段落着いたバーネットが、受け入れた人達の状況報告に会議室に来たとき、リシェルが「復讐の女神」と一緒に、ロゼアも来てるようなことを遠回しに教えてくれたけど……でも、バーネットがいるんだから、リシェルは破壊工作なんてしないと思う。だったら、ほかの女神像ってこと?)いろいろ考えはじめるシュール。(ほかの女神像って、あとなにがあった?)
「とにかく、これ以上破壊工作をさせるわけにいかない」ロイは携帯をしまうと、向かいのエルに「イノンドの艦に連絡して、不審者が入り込んで破壊工作をはじめてるから、警備を強化するよう伝えてくれ。特に、黒いマントを着た人物がいたら近寄らず、連絡するようにと付け足してくれ」
「不審者ってなに!」驚くエルが聞き返してくる。
「詳しくはわからないけど、このゲートの左右で不可解な事故が起きてる。すでに宇宙船が二隻潰された。もしかしたら、逃げた環境保全委員会が、追ってこれないようにプロの始末屋に依頼したのかもしれないが、とにかく、警戒するよう連絡してくれ」
「プロの始末屋って、どこまで腐った連中なんだよ!」さらに緊張感が増して愚痴を吐くエルが「連絡が来たらどうするの? その不審者と戦うの?」
「最終的には、そうなるかもしれないが、まずは、その者が何者なのか、確認する必要があるだろう? どうして破壊工作をするのか、理由を知る必要がある」そう言って剣を握るので『私も戦うからね!』力強いシュールの声が聞こえる。
「止められるの?」
「止めないといけないだろう! 僕たちはここで旅を終わらせるわけにいかないんだ! なにがなんでも脱出しないといけないんだよ!」
「そうだよね。すぐ連絡する!」




