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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
十三章 老い先短い星
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29-2 謎の予告者

 

「宇宙管理局のような、なにかの軍の上官みたいな命令口調で、腕を組んで立ってました。そして、『黒くて大きな狼の群れが現れたら、黒いマントを着た怪しい男が星を破壊しはじめるから、注意したほうがいいぞ』と言ってました」


「……奴は、ここにコモンが来てることを知ってるのか?」


「エッ、誰ですか?」

「いや、こっちのことだ。それで、そいつは他になにか言ってたか?」


「他にですか?」ドライバーは夢の内容を思い出そうと目を閉じ、しばらくして「そういえば、『エンジントラブルに気を付けろ。事前に対応しないと大変なことになるぞ』と、そう言ってました!」


「その夢を見たのは昨夜だったな?」

「はい、そうです」


「悪いが、俺の上着の内ポケットから携帯を出して、ロイに電話してくれ」


「ロイって、艦長ロイさんですか!」

「そうだ! 早くしろ!」


「は、はい! 失礼します!」運転の邪魔をしないように注意しながら、マーティの上着の内ポケットから携帯を取りだすと、ロイに電話を掛ける。


「マーティ、どうしたんだ?」ロイの声が聞こえてくるので「音声をオープンにしてくれ」


「マーティって……」ドライバーの顔に緊張が走る。「もしかして、副艦長のマーティさんですか!」


「副艦長? 俺が?」

「マーティ、いつの間に出世したんだ?」

「辞令をもらった覚えはないが」


「お、俺、ため口なんかで話して、すみませんでした!」

「別に謝る必要ない。それより、音声をオープンにしてくれないか?」


「はい!」ボタンを押すと「ロイ。今話していいか?」


「大丈夫だけど、なにかあったのか?」

「どうやら、俺たちの脱出を邪魔しようとしてる奴がいるらしい」


「……詳細は?」


「もう一度、夢の話をしてくれないか?」ドライバーに言うと「は、はい!」


「ロイは猛獣でも怪獣でもない。襲わないから心配するな」

「ガウ」


「乗るな!」

「マーティが先に言ったんだろう!」


「だからといって、子供じみたことをしたら緊張感がなくなるだろう!」

「緊張してたほうがいいのかよ!」


「言いわけないだろう!」

「だったら余計なこと言うな!」


「アハハハハハハッ!」大笑いするドライバーが「す、すみません……」と言いつつ笑い続けるので「緊張が取れたか?」


「エッ?」

「落ち着けば、細かいことまで思い出すことができる。話してくれ」


「もしかして、俺の緊張を取るために、わざと?」

「えっと、ドライバーさん、名前は?」


「そういえば、名前を聞いてなかった」

「ナオです」


「ナオさんか。夢の話を思い出すかぎりでいいから、話してくれないかな?」

「はい!」


「だから、ロイは猛獣じゃないと言っただろう」

「マーティ。帰ってきたら話し合おう」


「いつもこんな感じなんですか?」またクスクス笑うので「そうだな。いつもこんな感じだ」


「ありがとうございます。緊張が取れました」ナオは一息つくと、夢の内容を話しはじめた。



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