28-6 残された人の救出
順番に対応していくと、「私たち、助かるんですね?」塾の先生だろうか、子供たちに付き添っていた四十代の女性が震える声で聞いてくるので「大丈夫ですよ」バーネットが脚のケガを見ながら答えると「子供たちを、主人を捜したいんです」
「ああ、ご家族と連絡が取れてないんですね?」
「……はい」
「携帯をお持ちですか?」
「はい、持ってます」
「では、星から出て連絡していいと許可が出たら、掛けてみてください」
「……はい」
「大丈夫。みんなどこかの宇宙船に乗ってますよ」
「……そうだといいんですが」
「きっと、ご家族があなたの安否を心配されてますよ」
「……はい」
一緒に来た医者や看護師たちは、同じような対応を繰り返しているので、スピーディにケガ人を収容していく。
最後のケガ人が荷台に乗せられたあと、マーティは残っている人がいないか、倉庫内を確認しながらコモンたちが置いていったのだろうと思われる古めかしいランプを回収し、トラックの後部座席に置くと、少し離れたところに座り込んでいる狼の一群のところへ行く。
「これからどうするんだ? コモンたちのところへ行くか? 戻ってくるのを待ってるか?」と聞くと、リーダーと思われる狼が立ち上がり「ガウ」と言うと、トラックの前まで移動していく。
「そうか。元の場所まで案内してくれるのか」
助手席に乗り込むマーティがドライバーに「また狼のあとを追ってくれ」と言うと「わかりました」今度は困惑することなく返事をしてエンジンを掛け、走りだす狼のあとを追っていく。
その後、何回か起きる地震でスピードを落とすが、そのまま走り続け、午前十時ニ十分近くに艦に戻ると、もう一度同じ場所へ行ってくれと、ロイから連絡が入る。
「悪いな。コモンから先ほど連絡が来て、やっぱり残されてる人がいたそうだ。頼んだ食料も持てるだけ持ってきてくれたそうだから、今度はトラックを十台出す。だから頼む」
「わかった。医者たちは?」
「もう乗り込んでるはずだ。道案内にはどうしてもマーティに行ってもらわないと、狼たちの対応ができないだろう?」
「そうだな。で、シェルターのほうはどうなってるんだ?」
「僕たちが食料の調達まで依頼したから、作業を開始するのが少し遅れてしまったけど、ゲートナンバー五のシェルターの切り離し作業に入ってもらってる」
「コモンは、どうやってあの分厚いシェルター枠を切り離してるんだ?」
「デセプトルが黒バラを高熱にしてシェルター周りを半分溶かし、ラクエウムとクゥイ アウフェトが、引き上げやすいように、溶かした部分に穴をあけてるそうだ」
「なんだって! 溶かしてるのか! では、高熱の溶液が落ちてきて床を溶かしてしまうだろう!」
「それが、コモンたちが持ってきた黒いシートをシェルターの真下に敷いてて、その上に落ちると、溶液が溶けてなくなるみたいなんだ」
「……なぜ?」
「僕が聞きたいよ」
「では、あとで説明してもらおう」
「イノンドたちにどう説明する予定なのか、星から脱出した後、教えてくれるそうだ」
「幻だとか、おかしなことは言わないだろうな」
「さすがに、そんな子供だましが通用する相手じゃないとわかってるだろうから、大丈夫だろう」




