28-2 残された人の救出
『心配するな。狼を迎えに行かせる。マーティ。外ならどこでもいいから、トラックを停めて外に出てろ。匂いを辿って行かせる』
「俺の匂いを覚えてるのか? 狼と会ったのはだいぶ前だぞ」
『一度会った者の匂いは忘れないから、大丈夫だ』
「ならいいが。では、これからバーネットと迎えにいく」
『それでは、彼らが入ってる異次元空間だけを残していくから、着いたら連絡をくれ。開け方を教える。俺とバリエガータはこれから二手分かれて、他の都市を見回ってくる』
「いくらなんでも、二人だけじゃ無理ですよ」
『捜すのは狼たちだから、それほど時間はかからない。残ってる者を見殺しにできないんだろう?』
「それはそうですが……」
「コモン。収容してきた人達の中には、動けない人がいるんでしょう? 私とマーティだけじゃ対応できない。応援を連れていく必要があるから、異次元空間を解除しておいてほしいんだけど」
『そうか。それは困ったな。このまま外に放り出すわけにいかないぞ』
すると、周りを確認しに行くバリエガータが『コモン様。あちらの建物の隣が倉庫になっているようです。あの中にいていただけば、大丈夫ではないでしょうか』と声を掛けるので『ああ、あの中なら瓦礫が落ちてきても大丈夫だろう。バーネット。ゲート脇にある建物横の倉庫にいてもらうから、応援を連れてきてくれ』
「ありがとう」
『では頼んだぞ。尋ね人、戻ってきたら連絡するから、迎えの手配を頼む』
「わかりました。場所によっては天井が崩れてきてると思うので、注意してください」
『わかった。ではのち程』
そう言うと通信が切れるので「医務局と格納庫にはこれから連絡する」ロイが携帯を取りだすと「バーネット、行くぞ」マーティが会議室から出ていく。
『マーティたち、大丈夫かな? ちゃんと辿り着けるかな?』心配するシュールに「コモンの狼たちが迎えに来てくれるから、大丈夫だよ」
そのマーティたちは医療器具を取りに医務局へ寄ると、数名の応援を連れて最下層の格納庫へ行き、ロイが手配してくれた大型トラックに乗りこむ。
助手席に座るマーティが「広い場所で停めてくれ」運転をかってでてくれた五十代の男性ドライバーに言うと「どうしてですか?」不思議そうに聞いてくる。
「迎えが来る」
「迎えですか?」
「いいから、早く出してくれ」
急かすとエンジンを掛けてライトを点け、艦から出ていく。
トラックは艦が停まっている格納庫から外へ出ると、疎らに付いている外灯とトラックのライトの明かりを頼りに広い場所を探し、第三駐車場と書かれた場所を見つけると中央付近でトラックを停め、マーティが降りる。
「ここが待ち合わせ場所なんですか?」ドライバーが不思議そうに聞いてくるので「そうだ」短く答えると、真夜中のように人気のない駐車場をグルッと見渡す。
「どこから来るんだ?」
その時、トラックの荷台からバーネットが降りてきて「迎えはいつごろ来るのかしら?」と聞いてくる。
その間も、小さな地震と、ゴゴゴゴゴゴゴッと、低い地鳴りが聞こえている。
「間に合うかしら」
「間に合わせるんだ」
「そうね」




