28-1 残された人の救助
『そういえばアニスは? どこにいるの?』部屋の中を見回しているらしいシュールが聞くので「それこそ、アニスは徹夜も無理だから、自分の部屋で寝てるよ。と言っても、予知夢を見てるから、彼女も寝不足だろうね」
『オオッ、そうだ。アニスの予知夢は本当にすごいよね』
「今回は、アニスがいなかったら助からなかったかもしれないな」
「確かにな」同意するマーティ。
その時、ロイが左手の人差し指に填めている黒曜石の指輪が光りだすので、石を回して「コモン、今どこですか?」声を掛けると『エアポートの入り口まで来たところだ』
「もう着いたんですか? 早いですね。どういう移動手段で来たんですか?」
『「報復の女神」たちに、異次元空間を引っぱってもらった』
「そうだ! 「報復の女神」たちが一緒だったんだ。それなら超高速で移動できますね」自分たちが異次元空間に入って引っぱってもらったときは、重力に押しつぶされそうだったので苦笑するロイ。「それで、取り残された人がいましたか?」
『それだが、けっこう残ってたぞ』
「本当ですか!」コモンの返答には、マーティやバーネットも驚く。
『どうして残ってるの? この星、爆発しちゃうんでしょう? 残ってたら死んじゃうよ』シュールも驚き『どうやって捜したの?』
『連れてきた狼たちに探索させたんだ。倒壊した建物の中や、防音完備のビルの部屋に閉じ込められてたりして、外に声が聞こえなかったり、周りに誰もいないので、声を出しても誰も来なかったと言ってた。その為、けっこう時間が掛かったな』
「それなら、他の都市も確認したほうがいいですね。同じように閉じ込められてる人がいるかもしれない」
『間に合うか? もうすぐメインシェルターの取り壊し時間になるだろう?』
「そうですが、残されてる人がいるかもしれないと聞けば、ホッとけないですよ」
『ロイ。イノンドに頼めない?』とシュールが聞くので「地震が小刻みに起きてる状況で、これ以上、なにかを頼むことはできないよ」
『仕方ないな……今何時だ?』ため息を吐いて聞いてくるコモン。
「午前九時十五分です」
『十時まであと四十五分か……』
「コモン、連れてきてくれた人は何名くらいいるの? ケガ人は? 具合の悪い人はいる?」
バーネットが割って入ると『そうだな。全員で五十名くらいいるか? 半分近くはケガをしてる。応急処置をして水分を取らせてるが、動かせない。子供たちは、悪いと思ったが、近くの店からお菓子をもらって食べさせてる。高齢者は持病だろうな。横になってつらそうにしてる』
「ロイ。格納庫へ連絡して、トラックを一台用意してもらってくれ。バーネット、行くぞ」立ち上がるマーティが「コモン。エアポートの出入り口はいくつかある。どの出入り口にいるんだ?」
『それを俺に聞くのか?』
「マーティ、無理だよ。広いうえにこの暗さじゃ、エアポートの施設内を知ってる者じゃなければわからない」
「それでは、広い敷地内を探し回らないといけないじゃないか。こんな時に時間を掛けるのは危険だ」




