27-2 動きだす影の存在
「彼女たち?」振り返ってリシェルを見るバーネットに「ほら」と言うと、三名がフードを取る。
「アッ、「復讐の女神」」
「そう。彼女たちの力が必要だから、連れてきたんだ」
「そうなの。もう、暗がりから突然出てくるから、ビックリしたわよ」ホッとしてロゼアを見るとキョトンとしてるので「あなたは一緒に来たから、知ってたのね?」
『うん、一緒に来たの』
「そう」苦笑するバーネットが「復讐の女神」たちを見て「来てくれてありがとう」と声を掛けると、言われている意味が分からず三体とも首を傾げるので「リシェル、通訳してくれる?」頼むとバーバスカム語で伝える。
すると「ヒャアア」と、真ん中の一体が言葉を返すので「「どういたしまして」と言ってくれてるのかしら?」
「そうだね」答えるリシェルが立ち上がると「さあ、もう戻ったほうがいい。そろそろ「冥府の将軍」たちがここに来る頃だろうから、私たちは陰から援護するよ」
「そういえば、コモンは「報復の女神」たちと、「漆黒の狼」を連れてくると言ってたわよ」
「「報復の女神」たちを連れてくることはわかってたけど、「漆黒の狼」か。厄介だな。気を付けないと、臭いを嗅がれたら見つかってしまう」
「どうするの?」
「見つからないように、距離を置いて対応するよ」
「大丈夫?」
「なんとかするよ」
「なにか策があるのね? でも、無茶はしないでよ」
「もちろん。君を心配させるようなことはしないよ」
「もう、バカなこと言ってないで、ちゃんと気を付けてよ」
「わかってる」
「……来てくれて、ありがとう」
「当然だよ」もう一度抱きしめると「さあ、行って」
少し戻って振り向くバーネットが「また……」と言うと「ここから脱出して落ち着いたら、連絡して」
「わかった」リシェルの後ろに立つ「復讐の女神」たちとロゼアに手を振ると、路地から出て戻っていく。
バーネットが持ち場に戻って受け入れ者の応急処置を始めたころ、ロイのところに、コモンから連絡が来ていた。
『尋ね人。今、「妖精の道」から出て、星内に入ったところだ』
「林の中ですか?」
『そうだ。近くに、君が話してた管理小屋が見える』
「そうですか。僕たちがいるエアポートはそこから大分離れたところにあるので、移動に時間が掛かると思います」
『そうか。では、これからバリエガータと二手に分かれて、取り残されてる人がいないか、確認しながらそちらへ向かう』
「わかりました。住民たちの乗船は大きな問題なく進んでるそうなので、メインシェルターを引き上げる作業に入る午前十時までには、完了する予定だそうです」
『承知した。こちらで取り残された人を見つけたときは、保護して、まとめてそちらへ連れていく』
「あの、どうやって連れてきてくれるんですか?」
『異次元空間を作って、その中に収容していく予定だ』
「ああ、なるほど。でも、他の人間に見られて大丈夫ですか?」
『なんとかなるだろう。今は細かいことに拘ってる場合じゃないからな』
「なにかあったら、証言しますから」
『ハハハッ イタタタタッ』
『コモン様。お笑いになるときはまだお気を付けくださいと、何回も申し上げていますよ』
『わかってる……イタタッ』
「すみません。僕が余計なことを言ったから」
『尋ね人のせいではありませんから、お気になさらないでください』
「そう言われても……」
『大丈夫だ。ちゃんと痛み止めは飲んできたから』
「まだ完治してないんですから、無茶なことはしないでください」
『何度もバリエガータに言われてるから、大丈夫だ』
「わかりました。では、よろしくお願いします」




