22 石化対応の続報
昼食はマーティと一緒に取った。
「ブラントたちに呼ばれたそうだな」
「マーティが言ったとおり、ジッとしてられないから何かやらせてくれと言ってきたよ」
「そうか」
「彼らが仕事を始めたのがわかったら同じことを言う人が出てくるだろうから、エルに対応を頼んだよ」
「うまく振り分けられるといいが」
「エルならうまくやってくれよ」
「ああ、問題ないだろう」
「でも、ここで人を乗せるとは思わなかったからな。マーティに助言してもらって助かったよ」
「まあ、俺たちにとっては珍しいことじゃないからな」
「そうなのか?」
「宇宙管理局ではいろんな理由で保護する人達の対応をしてるから、似たようなことが起こる」
「なるほど。対応策は心得てるってことか」
「で、今回乗艦したのは大人数じゃないから資金的に負担はないだろうが、大丈夫か?」
「今のところは、なんとかね」
「親父さんも、系星の維持費や、宇宙ステーションの住民の生活費に金が掛かるだろうから、資金の上乗せは厳しいだろうが、宇宙保険局から支援金が出てるんだろう?」
「多少はな。ン? なんでそんなこと知ってるんだ?」
「悪いと思ったが、ルズロフたちと話してるのを聞いてしまったんだ」
「……そうか。聞いてたのか」
「まあ、前からそうじゃないかとは思ってたがな」
「前から?」
「ロイの考え方や取る行動、言葉遣いを聞いて、特殊な地位にいるんだろうと思ってた」
「……自分では、普通に見えるように振る舞ってたつもりなんだけど」
「仕事がら上層部の人間と会う機会が多いから、地位の高い奴の形振りを知ってたのもある。しかし、系星統治者の息子だったとは思わなかった」
「そういうことに縛られたくないから黙ってたんだ。そんなことで一線引かれるのは嫌だから」
「わかってる。ここのクルーが同等に接してるのを見てるからな」
「出発前、そうしてくれるように頼んだんだ。
住んでる系星があんな状態なのに、統治者の息子が旅に出たと噂が広がれば、何かあると勘ぐって探ってくる奴が必ず出てくるし、上下関係のない、仲間としていたかったんだ。
だから、マーティも気にしないで、今までどおりに接してくれないか?」
「俺は、どんな人に対しても態度を変えられない。不器用なんでね」
「そこがマーティのいいところなんだよ」
「アルバスには、善し悪しがあると言われたが」
「そうだけど、そんなことを気にするようならマーティじゃないよ」
「……褒めてるのか?」
「もちろん」
「……わかった」
場所を食堂の隣のカフェに移すと「ところで、さっきの援助金の話だが、あの三当主も出してくれてるんだろう?」いつものコーヒーを注文すると話の続きを始める。
「彼らからの援助金は、石化してしまった人達を元に戻すための研究費に回してもらってるんだ」
「そうなのか。で、その研究は進んでるのか?」
「この前親父に聞いたら、まだベースとなる研究施設が完成したところらしい。特殊ウイルスだから取り扱いに注意しないといけないので、細菌に詳しい機関が指揮を取ることになって、今度、打ち合わせのために会議を開くと言ってた」
「細菌に詳しい機関? もしかして、宇宙科学細菌研究所か?」
「知ってるのか?」
「名前だけは聞いたことがある。乗っ取られないように、研究所がある場所は極秘になってるそうだ」
「そうなのか。だから親父が、機関名は極秘だから他言するなと言ってたのか」
「まあ、一系星の大半を短期間で石化したウイルスだ。宇宙連合機関が動くのも無理はない」
「はやく解決の糸口を見付けてほしいよ」
「トップクラスの頭脳集団だ。何かしらの糸口は見付けてくれるだろう」




