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ラディウスソリッシュ ~古代神の聖剣~  作者: 夏八木 瀬莉乃
十三章 老い先短い星
957/1021

25-1 文献の文字

 

 今度は、ロイが左手の人差し指に填めている指輪の黒曜石が光りだすので、石を回すと『尋ね人』コモンの声がする。


『こちらの準備が整ったから、これから「妖精の道」を通って、フレックス星の内部へ移動する』西の塔内を歩いているのか、コツコツと複数の靴の音が聞こえてくる。


「コモン。ちょうどいいところに。実はさっき、アニスが予知夢を見たといって内容を教えてくれたんです」


 ロイはアニスが見た予知夢の内容と、文献に書かれていることを伝えると『ゲートナンバー五のメインシェルターから取り外せばいいのか。承知した。それでは、取り残されてる住民がいないか、確認を兼ねて、午前十時まで星内を見回わろう』


「よろしくお願いします」


『それにしても、文献がリアルタイムに起きてることを認識するとは思わなかった。何者かが対応してるのかもしれないな』


「文献のことは知らなかったんですか?」


『文献が第四の門への道案内をすることになったのは、割と最近だからな。とはいえ、三百年くらい前になるか?』


『はい、そのくらい前になるかと思います』

 

 隣にいるのだろうか。バリエガータの返事が聞こえると『確か、二代前の尋ね人からだったと思いますので、そのくらいからだと私も思います』


 続けてルーの声が聞こえてくるので「全然、最近のことじゃないだろう」眉間にしわを寄せるマーティに「コモンたちの感覚を、僕たちと同じにしたらダメだろう?」ロイが注意すると「それはそうだが……」


「三百年を三年と置き換えれば、割と最近に思うだろう?」

「三年な。それならそう思う」少し呆れる。


『とにかく、その文献に、黒い影が二つ動いてるが、尋ね人達が呼んだ助け人だろうと書いてあるなら、俺たちのことだろうな』


「ルーは「西の塔」にいるんだろう?」ロイが聞くと『申し訳ございません。「時の宮殿」を空けるわけにいかないので……』


「謝ることないよ。ルーは来なくて大丈夫だから」


「文献は、ルーが来ないことも見越してるということか。どこかで俺たちのことを見てる感じがするな」


『見てるんだろう? どういう方法を取ってるのかは検討が付かないが、確実に文献の先に誰かがいる』興味を持つコモン。


「それでは、文献は元々書いてある文字を一定の場所にきたら浮か上がるという仕組みではなく、誰かが俺たちのことを観察してて、こちらの状況に応じて文献に文字を出してるということか?」マーティが考えながら意見を言うと『そうとしか考えられないだろう? 今回のことは、計画されたものじゃ……ないのか?』


「どういう意味ですか?」ニュアンスに引っかかるロイに『いや、もし奴が関わってるとしたら、君たちを消すために、行く先を危険な状態にした可能性がある』


「……そうですね。奴が仕掛けた罠の可能性もありますね」

「では、文献に文字を出してるのは奴だと言いうのか?」




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