18-4 迫る恐怖との戦い
「マーティ! 電磁波を測定!」
「やってる! 前より確実に上がってるぞ!」
「外に出てる人達を宇宙船に避難させろ!」
「ロイ! イノンドの艦の通信担当から連絡が来たよ! 停泊してる宇宙船の協力で、なんとか全住民を宇宙船に乗せることができたって! でも! 地殻全部が先ほどの地震で動き始めたから、これから大きな揺れが起きるので注意しろって!」
「街中の予備電源の爆破の件は!」
「ロイ。装甲車が走ってるぞ」作戦会議で3Ⅾモニターに映る映像を確認しているマーティが呼ぶので、会議室へ行くと、数台の装甲車が炎上している街中の現場にいて、数名が消火活動を行っている。
「あれは宇宙管理局じゃない。どこの所属だ?」
「もしかしたら、停泊してる宇宙船の誰かが、救助に行ってくれたのかもしれない」
消火を確認した作業服の人達が、監視カメラに向かってOKサインを出している。
「手慣れてるな。装甲車といい、普段はなにをしてるんだ?」
しかし、またしても地震が起きて、グラ~グラ~グラ~ッと大きな波のように揺れはじめた。
「掴まれ!」中央テーブルに掴まるロイ。
映像に映る街中の現場でも、道の真ん中へ集まってしゃがみ、揺れが収まるのを待っている。
今回の揺れはさほど長くはなく、すぐに収まったが、揺れる間隔が確実に短くなってきた。
ロイはエルに連絡すると「出入り口のシェルターの調査結果が出たか、イノンドに聞いてくれ」
“ わかった ”
返事を聞くと、ため息を吐いていつもの席に座る。
午前二時。
混乱状態にあったが、受け入れ者を迎えにいった救助班は、途中で会った装甲車に道を作ってもらい、一緒にエアポートへ戻ってきていると連絡が入り、街中の爆発で負傷した作業員たちも、無事に自分たちの宇宙船に戻ったと、イノンドの艦の通信担当から連絡がきていた。
あれから小康状態なのか、地震がないため、メインパイロットのセイボリーが夜間担当のオリバと交代すると、エルも交代要員のタンジーと引継ぎを行い、部屋に戻るかと思ったら、作戦会議室へ入ってきた。
「なんだ、まだいたのか?」3Ⅾモニターに映るこの星のデータを見ているマーティが、エルに気付く。
「今、タンジーと交代したんだ」
「なら、部屋に戻って休め。勤務時間を大幅に超過してるぞ」
「なに言ってんだよ。こんなときに休めるわけないだろう?」サーバからコーヒーを淹れるといつもの席に座り「どんな感じ?」と聞く。
「他の船からいろんな案が出てきたので、イノンドたちと分けて一つずつ検証してるけど、どれもリスクが五十パーセント以上あって、実行できるものがなかった」頭を抱えるロイが答える。
「……そう。いよいよ切羽詰まってきたね」
「……なにか、思い付いたことがあるか?」
「ロイたちが思いついたことが使えないのに、僕がそれを上回る案を出せると思うの?」
「出してほしいね」
「出せるとしたらアニスじゃない? そういえば、アニスはどうしたの?」
「クラリー夫人たちに付いててもらってる。というか、クラリー夫人たちに、アニスに付いててもらってると言ったほうがいいか」
「ああ、なるほどね」コーヒーを少しずつ飲みはじめるエル。
『ロイ。マーティも、なにか食べたほうがいいよ。コーヒーばかり飲んでたら、胃が悪くなるよ』シュールが心配するので「そうだな。気分転換になにか食べるか」マーティが立ち上がると「僕も付き合うよ。一緒なら食べられると思うから」エルも立ち上がる。




