14-2 進む異変
イノンドの艦に通信を繋ぐと “ ロイ、大丈夫ですか? ” 真ん中のモニターにイノンドが映る。” 足場が崩れて、艦が傾いたと聞きました ”
「そちらの通信担当の方に誘導してもらって、イノンドの艦の右隣に移動してきたので、大丈夫です」
” そうですか。足場が崩れるなんて聞いたことないので、驚きましたよ ”
「ケガ人が多数出たので詳細の確認を取ってますが、死者、重傷者の報告はありません。それよりイノンド、すぐにメイン発電所を調べてください」ロイはわかったこと伝え「一刻を争います。アニスの予知夢から考えると、次にここが止まります」
“ わかりました。すぐ手配します ” 隣にいる隊員に指示を出し “ 今日の午後二時に非常事態宣言が発令されます。港に停泊してる宇宙船にも、すぐに離陸許可が出るでしょう ”
「やっと動いたか」
『やっと動いたよ。遅い』文句を言うシュール。
“ 仕方ありません。今の今まで、このような状態になってることを知らなかったんですから ”
「知らなかったって、あれだけ何回も地震が起こってたのに」
『ちょっと鈍感すぎだよ!』注意するシュール。
“ 環境保全委員会が、虚偽の報告をしてたんです ”
『ロイ、虚偽って何?』
「今さらどうこう言っても始まりませんが、ウソの報告をどのくらい続けてたのか、解明する必要がありますよ」
“ わかってます。とにかく、そちらも離陸許可が出たら、すぐに出発してください ”
「イノンドはどうするんですか?」
“ 私たちは、できるかぎり残って、住民の避難誘導を行います ”
『イノンドたちは残るの! 危険だよ!』
「宇宙管理局に連絡したんですか?」
“ してるんですが、繋がらないんですよ ”
「どうして?」
“ この星の電磁波エネルギーが異常に上がってて、電波を妨害してるようです ”
「電波を妨害するほどのエネルギーを放出してるんですか?」
“ そうです ”
「それは非常に危険な状態ですよ!」
“ わかってます。これから他の船にも通達を出しますが、ロイの艦も電磁波の障害対策を取ってください ”
「わかりました」
“ では ” と言って通信を切る。
『電磁波の障害って、どんなことが起こるの?』話を聞いていたシュールが不安そうに聞くので「軽いものでは、イノンドが言ってた外部との通信ができなくなる。電磁波のエネルギーが大きくなってくると、電気系統がショートして止まってしまうので、それを防ぐためにシールドを張って、影響を受けないようにするんだ」
『じゃあ、シールドを張ってれば、艦は大丈夫なんだね?』
「ある程度はね」
『……ある程度を超えたら、どうなるの?』
「星が破壊される」
『星が破壊! ダメじゃんかあああ!』
「だから、そうなる前にこの星から出るんだ」
『イノンドを置いてくの!』
「僕たちにはクリアしなければならない大事な目的があるし、この艦にはクラリー夫人たちをはじめ、大勢の人が乗ってるんだぞ」
『そうだけど……』
「出発まで、できることはやる」
ロイはエルに声を掛け、出発許可が出たらすぐ離陸できるように、スタンバイしておくよう伝える。




