19-2 乗艦
ここで、エルから連絡が入った。
“ロイ、出発三分前だよ”
「わかった」手元のリモコンで大広間にある正面スクリーンの電源を入れ、部屋を暗くすると騒めきが起こる。
続いて、持っているワイヤレスマイクで説明を始める。
「みなさん、もうすぐ出発しますので、スクリーンを見てください」
映像を切り替えると艦の前方が映る。
この映像は、コントロール室の前方スクリーンに映っているものと同じである。
「これから離陸して宇宙に出ます」
“ロイ、出発十五秒前”と連絡がきたので音声のスイッチを切り替えると、カウントダウンが聞こえてくる。
“ファイブ、フォ、スリー、ツー、ワン、ゼロ、メインエンジン稼働”セイボリーがレバーを引くとエンジンが掛かり、ゴォッという音とともに艦が揺れると「ワァーッ!」部屋から歓声が上がる。
初めての体験に興奮する少年たち。
「反重力装置、稼働」スイッチを押すと艦体が浮き、ゆっくりと滑るように前へ動きだす。
大広間にいる人達は、動きだす映像にくぎ付けになった。
薄暗い通路を進んでいくと、前方の扉が右にスライドして日の光が差し込んでくる。
外に出ると滑走路が海上に伸びていき、艦は停止線で一旦止まると、離陸のためにエンジンの出力を上げる。
エンジン音と振動で再び艦が揺れると、また部屋の中で歓声が起こった。
”各エンジン出力最大。レジーナ・マリス号、発進!” レバーを引くと艦が前進し、徐々に加速していくと離陸する。
海上をしばらく飛行すると高度を上げていき、大気圏を抜けて宇宙空間へ出ると、前方スクリーンにアグリモニー星が映った。
「これが、皆さんが住んでいた星です。よく見ておいてください」
初めて見る自分たちが住んでいた星に対し「外から見るときれいな星なんだな」誰かが呟くのが聞こえてきた。
しばらくの間、沈黙が続く。
スクリーンは、星が見えなくなるまで映し続けた。
映像が切り替わって前方の宇宙が映ると、ロイはスクリーンの電源を切って部屋の電気を点けた。
また騒めきが起こる。
ロイはその場に立つと「では部屋に案内しますので、荷物を持って付いてきてください」大広間から出ると居住区へ向かう。
割り当てられた部屋に順番に案内していくと、身重の夫婦の部屋の前にヘルパーの女性が待っていて「医務局へ行ってチェックしましょう」と夫人を連れていく。
少年たちは医務局の隣にある管理事務室へ行き、そこで担当看護師と会った。
「ちゃんと言うことを聞けよ」
「ハーイ!」兄貴のように慕っているマーティの言葉に、元気よく返事をするロベージたち。
「一気に七人の弟ができて、大所帯だな」ロイが声を掛けると「お互い身寄りがないから、ホッとけなくてな」
「さて、エルに今回の報告をしにいくか」
「ああ、それがあったか」




