14-1 進む異変
ロイはエアポートの管制塔に連絡して艦の状況を説明し、宇宙管理局の艦の右側にある空きスペースへ移動する許可を取ると、メインパイロットのセイボリーに電話を引き継ぎ、モニターにイノンドの艦の通信担当が映ると、彼とはサプパイロットのオリバが対応して、二人のサポートを受けながら艦を移動させることになった。
「マーティ。艦の体勢を元に戻すから、周りのものに気を付けろ」手配を終えたロイが注意を促すと「わかった。アニス、エル、脚を少し開いて、左右の動きを止めるんだ」両脇にいる二人に声を掛ける。
少しすると、艦内マイクを通して、メインパイロットのセイボリーの声が聞こえてくる。
“ これから折れた接続ブリッジを切り離し、艦を移動させて正常な位置に戻します。周りの危険物に注意して、近くにあるものに掴まってください ”
少しして折れた接続ブリッジが切り離されると、何分か間があって ゴオッ! と音がしてエンジンが掛かり、反重力で艦が浮いて体制を立て直すと、ゆっくり前方へ移動していく。
突きあたりを右へ曲がって出入り口へ向かう通路を進んでいくと、左側の出入り口には行かずにそのまま直進し、少し先の右側に停泊しているイノンドたちの護衛艦を通り過ぎて、右側の空きスペースに入線する。
元の位置に戻った会議室では「バーネット。マーティのケガを見てくれ。アニスはケガをしてないか?」
「大丈夫」
「では、クラリー夫人たちの様子を見に行ってくれ」
アニスが会議室から出ていくと、ロイはエルと一緒にコントロール室へ向かった。
「みんな大丈夫か? エル。艦内の状況を確認して、あとで報告してくれ」声を掛けてコントロールルームの中央にあるメインシートに座ると、モニターを点ける。
『外はどうなってるんだろう?』とシュールが言うので、三台横並びにあるモニターの一つをこの星のニュースチャンネルに繋ぎ「シュールはニュースを見ててくれ。エル、被害状況は?」
「ケガ人が多数出てるけど、大きな被害は今のところ報告なし」右側の通信席に座って連絡を取り合っている。
『ロイ! ニュース見て!』シュールに言われて左端のモニターを見ると、街中にある大きな公園に集まる人の群れが映っていた。
「たくさんの人が一ヶ所に集まる。普段着、昼間」
『今日だったんだ。そうなると、今度は隣の化学工場のパイプが爆発して、真っ暗になっちゃうんだよね?』
「真っ暗になるということは、この星のメイン発電所が止まるということだ」
『そうなるとどうなっちゃうの?』
「ほとんどのものが機能しなくなる。アッ!」
『どうしたの!』
「出入り口のシェルターが塞がるというのは、このことも原因だったのか。だから、イノンドが打つ手がないと言ってきたんだ」
『なに? どういう意味?』
「アニスが言ってた、周りの壁が崩れて、出入り口が塞がってしまうというのは合ってると思う。けど、もう一つ原因があったんだ」
『それは?』
「出入り口のシェルターの動力は電気で動くんだ」
『それじゃあ』
「メイン発電所が止まったら、シェルターが動かなくなる」
『発電所が止まらないようにできないの? 予備電源はないの?』
「ここはイノンドに頼もう」




