12-2 迫りくる危機
マーティがカウンターでレギュラーコーヒーを淹れている間、ロイはテーブルに座って携帯のメモ欄を見ていた。
『次に何が起きるんだろうね?』一緒にメモを見ていたらしいシュールが聞いてくるので「アニスが見たとおりの順番じゃないことはわかったけど、逆からなのかバラバラなのか、そこがわからないな」
「出発許可が出たら、すぐにこの星から出るぞ」マーティが、カウンターのところから話に入ってくる。
「そうしたいけど、もしアニスの夢のとおりに実現するのなら、この星の住民たちを見捨てていけないよ」
「この星の住人すべてを脱出させるのならば、今すぐにでも非常事態宣言を出さないと間に合わないぞ」
「でも、今の段階では、政府機関を動かすだけの確固たる証拠がないから、忠告しても相手にしてもらえないだろう?」
「確かにそうだな。しかし、なぜこのような事態になったんだ?」コーヒーを持ってくるマーティ。
「どういう意味だ?」受け取って少しずつ飲みはじめるロイ。
「ここは公害指定星だ。他のどの星よりも環境に対して敏感なはずなのに、なぜこんなになるまでホッといたんだ?」
『これってさ。チャービルさんが言ってた、環境保全委員会ってのが絡んでくるんじゃない? だってさ、環境設備に使うお金を横取りしてたんでしょう?』
シュールの言葉を聞いて「それで辻褄が合う。つまり、本当にホッたらかしてたんだ」
「このこと、イノンドに話したほうがいいな」ロイは通信をイノンドの艦に繋いだ。
“ 何かわかったんですか? ” すぐに出たイノンドが聞いてくる。
ロイは、頻発する地震のことと環境保全委員会の繋がりについて予測を話し「保全員会の活動について調べたら、なにか出てくると思います」
“ そうですね。早速調べます ” 早口で言うと通信を切る。
「きっと明日、すべてがわかるだろう」
「今夜かもしれないぞ」
翌日の午前九時。
ロイが作戦会議室へ行くと、エルがテーブルの3Ⅾモニターでニュースを食い入るように見ていた。
「何かあったのか?」
「ああ、おはよう。この前、騒ぎを起こした環境保全委員会と対立してる特別法人のメンバー全員、昨夜のうちに、この星から脱出したらしいんだよ」
「なんだって!」
そこへマーティが入ってきて、突然のロイの大声にビックリして立ち止まると「何か起きたのか?」
「マーティ! 環境保全委員会と例の特別法人の連中が、この星から逃げやがった!」
「なんだと!」ロイの隣にきてニュースを見る。
そこには、大勢の警官が、環境保全委員会の事務所が入っているビルに押し掛けているところが映っていた。
「なぜわかったんだ?」ロイが隣にいるエルに聞くと「今朝、事務員の女性が会社に行ったら、社内がも抜けの殻だったんだって。
どうしたらいいかわらなくて、あとから来た同僚と話し合って、上司の家に片っ端から電話をかけたけど、どこも繋がらなくて、仕方ないので警察に連絡したらしいよ。
普通の会社じゃないから警察も驚いて、慌てて調べに入ったって、さっきレポーターが言ってた」
『アニスが言ってた、警察がどこかのビルに向かってるって、これのことだよ!』モニターに映っているビルを指さしていそうなシュール。
「そうなると、あの順序は逆に進行することになるのか」
呟くロイの言葉を聞いて「あの順序って?」とエルが聞くので「それはあとで話すよ」と答え、ニュースの続きを見る。




