11-2 始まる異変
二十分後。
“ 大変長らくお待たせ致しました。安全確認が済みましたので、これから発車致します。皆様には大変なご迷惑をお掛け致しました ”
再びアナウンスが入ると、リニアがゆっくりと動きだす。
「艦のほうは大丈夫か聞いてくる」ロイは席を立つとデッキに行き、エルに電話をかける。
“ ロイ! 今、すごい地震が起きたよ!” エルの大声が聞こえてくる。
「こっちもすごかったよ。リニアが揺れるくらいだから、相当大きかったろう?」
“ さっき、この星の管理局から情報が来たけど、震度五だって ”
「それはデカいな。で、艦は大丈夫なのか?」
“ こっちは大丈夫だよ ”
「そうか」
“ とにかく、早く戻ってきてよ。すぐにこの星から出たほうがいいよ! ”
「余震を警戒してリニアのスピードが落ちるだろうから、少し遅くなると思う。戻るまで艦を頼んだぞ」
電話を切って席に戻ると「あれだけの地震が起こって動揺してた乗客が、何事もなかったようにしてるから、気味が悪いな」通路から奥を見ると、騒ぐものは一人もいない。
「街のほうも、あまり変わってないみたいよ」窓の外を見るバーネット。
停電を起こしているだろうと思われるビルがいくつかあるが、崩れているビルは見当たらない。
「耐震性を強化して建てられてるんだろうな。だからといって、これほどの地震が起きると、あとから崩れる可能性があるから、避難したほうがいいだろうね」
さすがに通常スピードで運行することはできないらしく、窓から見える街並みのチェックができるくらいの速度で走行している。
『リニアにも影響あるみたいだね。ロイが言ったとおり、スピードが落ちてるよ』とシュールが言うので「余震が来たら崩れる箇所があるかもしれないから、慎重になってるんだよ」
「こうなると、地上で最も早い乗り物といえど、地震には勝てないか」隣で寝ているアニスのタオルケットをかけ直すマーティ。
結局、目的の駅に着くまで、余震のために途中で三回停車し、時間のロスは二時間となった。
駅の外へ出ると辺りはすっかり暗くなっていて、ほろ酔い気分のサラリーマンたちが、ヨロヨロと歩いているのが目につく。
普段と変わらないであろう光景に「日頃から地震に慣れてるから、今、どのくらい危険が迫ってるか、わからないんだろうな」マーティが呆れるので『慣れって怖いんだね。あんなに何回も揺れたのに、平気なんだもん』シュールが気味悪そうに呟く。
「とにかく、急いで戻ろう」ロイが声を掛けると「私たちはいったん自艦に戻ります。詳しいことがわかったら連絡を入れますから」
駅前でタクシーを拾い、エアポートまで行くと、それぞれの艦に戻る。




