11-1 始まる異変
バーネットと黒髪の部下が人数分の飲み物を買ってくると、アニスに鎮静剤を飲ませ「少し横になったほうがいいわね」さらにリクライニングを倒す。
その後、バーネットと場所を代わるマーティがロイの向かいの通路側に座ると、イノンドと話を続ける。
「今回はかなり深刻だぞ」
「早く原因を突き止めないと、取り返しのつかないことになりそうだな」
「地殻の変動が地震を引き起こしてることはわかってます。問題は、地殻の変動がどのくらいの規模なのかですよ」
「タクシーの運転手の話から考えると、だいぶ前から地震が起きてるらしいからな」
「ここの住民たちの慣れようを見てもわかるよ」
「ただの地殻変動じゃないな」
「どこかで不均等な圧力が掛かってるんじゃないでしょうか?」
「それも、人為的なものでしょうね」
「考えらえるのは、地下都市を作ったことですか」
「俺もそうだと思う」
「もう少し情報が欲しいな。今の状態では、原因が何なのか、推測の域を出ない」困った顔をするロイがバーネットに「アニスは?」と聞くと「眠ったわよ」
「もう少しアニスから聞き出せないかな?」
「無理よ。彼女が部分的にしか覚えてないのは、強い衝撃があったからだと思う。思い出したくないために、潜在意識がその部分の記憶を消した可能性があるから、無理に引き出そうとしたら、アニスの精神が壊れてしまう」
『それは絶対ダメだよ!』止めるシュール。
「アニスがそんな状態だとすると、相当なことが起きるということだな」
「でしょうね」寝ているアニスを見るバーネット。
「これから、最悪のケースを考えて行動しないといけないぞ」
「わかってる。けど、まだ若干の猶予があるはずだ」
『猶予はない! すぐこの星から出る!』結論を出すシュール。
この時、またしてもリニアが止まった。
「ここは駅じゃないぞ」ロイがバーネット越しに窓の外を見ると、突然、グラグラとリニアが揺れはじめる。
「地震だ。かなりデカいぞ。頭上に気を付けろ! 荷物が落ちてくるぞ!」マーティが注意すると、バーネットがアニスの上の棚に乗せてある荷物を見るので、ロイが棚に掴まりながら奥へ押しこむ。
「今回は揺れる時間が長いな」手置きに掴まるロイ。
「しかも、リニアが揺れるくらいだ。外では相当揺れてるはずだぞ」
さすがにここまでの揺れは経験したことがないらしく、他の乗客たちが騒ぎはじめる。
“ お急ぎのところ、大変ご迷惑をお掛け致します。ただいま地震が発生しております。安全確認のため、しばらくこの場所に停車いたします。確認が済みしだい発車いたしますので、しばらくの間、ご辛抱くださいますようお願い致します ”
アナウンスが入り、しばらくして揺れが収まってくると、車掌が各車両を回って、異常がないか確認をはじめた。
『やっぱり危ないよ。早く艦へ戻ろう』不安になるシュール。
「揺れは治まった。もう大丈夫だよ」小声で声を掛けるロイ。




