10-2 アニスの予知夢 更新
“ロイ! 大変なことが起きてるよ! ” 電話に出るエルが大声を出すので「この星の地殻のことだろう? イノンドから聞いたよ」
“アッ、そうなんだ。もう少ししたら詳しいことがわかるから、その時に連絡しようと思ってたんだ ”
「今、艦に戻ってるところだ。何事もなければ夕方頃には着くから、外出してるクルーにすぐ戻るよう連絡と、離陸できるように各機関に手配を。それと、星の地殻データをまとめといてくれ」
“わかった。気を付けて戻ってきてよ ”
「ああ。戻るまで艦を頼むよ」
席に戻ると「エルのほうでも、例の情報を掴んでたよ。今、詳しく調べてるそうだ」
「……パイプ」
「アニス、どうした?」向かいに座っているマーティが聞くと、アニスは窓の外を見て考えこみ「パイプ……」と繰り返す。
「何か思い出したの?」隣のバーネットが声を掛けるが、アニスの耳に入っていない。俯いて考え込んでいる。
その為、アニスが何か言ってくるまで待っていると、突然、顔を上げ「大変!」
「シッ! 大声を出すな」マーティがアニスを押さえると「大変なこと、起こる!」慌てだすので「大丈夫だから落ち着け」
「どうしたんですか?」騒ぐ声を聞いてイノンドが声を掛けてくる。
「アニスが何か思い出したらしいんですよ」ロイが説明すると「どんな事ですか?」部下たちと一緒に身を乗り出すので「アニス、なにが大変なんだ?」マーティが落ち着いた声で話し掛ける。
「前に、どこかの工場、爆発する、言った」
「場所がわかったのか?」
「さっき、外から見える、大きなパイプ、見て、思い出した。湖、近く。ううん、エアポート、近く。私、艦から、爆発見た!」
「なんだと!」
「エアポートの近くというと、対岸の化学工場か?」周辺の景色を思い出すロイ。
「ハッキリ、わからない、けど、大きなパイプ、湖沿い、何本もあって、それ、一本ずつ、爆発、していく」
「イノンド」ロイが隣の彼を見ると、すでに席を立って、デッキに向かいながら携帯でどこかに電話していた。
「アニス、私たちも一緒に見てた?」バーネットが落ち着いた声で聞くと「ううん。私、一人だった。だって、怖くなって、会議室、いる、ロイたちの、ところ、走ってった、から」と言いつつ、落ち着かずにソワソワしている。
「爆発を止められると思うか?」ロイが隣のマーティに聞くと「アニスの予知夢は確かだからな。難しいだろう」
「ほかに思い出したことはある?」バーネットが聞くと首を横に振るので「もう少し、ほかの部分を思い出してくれるといいんだけど」ロイが困った顔をすると「やってみる」バーネットがカーテンを閉めだす。
「なにをするんだ?」
「催眠術を掛けてみる。アニス、怖くないから大丈夫よ。ただ、少し思い出すだけだから」
「でも……」
「さあ、深く腰掛けて体の力を抜いて」アニスの椅子を少し倒すと深く腰掛け、フゥッと息を吐く。




