7-2 アニスの予知夢 継続
再びロイたちの部屋。
窓際のソファに座ると「アニスたちはどこに行ったんだ?」姿が見えないのでマーティが聞く。
「コーヒーを貰いにフロントへ行ったよ」
「なんだ、全部飲んでしまったのか」
「では話してください。アニスの夢がどうしたんですか?」イノンドが口火を切るので「その前に、アニスの特殊能力について説明します」ロイが説明を始める。「彼女は予知夢を見るんです」
「予知夢、ですか?」
「そうです。正夢と言えばわかりますか?」
「ああ、夢で見たことが現実に起こるというものですよね?」
「そうです。その彼女が、一週間前からある夢を見てるんです」
アニスが話したとおりのことを伝えると「ちょっと待ってください」困った顔をするイノンド。「確かに先ほど、どのような事でも信じると言いましたが、このパターンでは……。申し訳ないのですが、私たちが彼女の夢を信じるには、何か一つでも当たらないと……」
「たぶん今日、何か起こりますよ」
「今日ですか?」
「チャービルさんからの依頼に対しての返事は、今日来るんですよね?」
「そうです」
「では、その報告を待ちましょう」
そこへ、バーネットたちがコーヒーと紅茶を入れて持ってきた。
「コーヒーの飲み過ぎだと言われなかった?」ロイが冗談を言うと「それどころか、お好きなんですねって、たくさんパックをくれたわ」苦笑するバーネット。
「どうしたアニス」カップを渡したあと、用意されているスチール椅子に座って何やら考え込んでいるので、マーティが声を掛けると「ちょっと……」
「もう、さっきからずっとこうなのよ」隣に座るバーネットが「一人でブツブツ独りごと言ったり、立ち止まってボーッとしたり」
「夢のことか?」
「……うん」
『それほど引っ掛かってるんだ』シュールも心配する。
「今考えても答えは出ないよ。もう少ししたらわかるんじゃないかな?」ロイが声を掛けると「うん……」と返事をするが、表情は変わらない。
「さて、そろそろチャービルさんとの約束の時間だ」腕時計を見るロイが「チェックアウトは三十分後。 集合は一階ロビーで」
三十分後、会計を済ませ、荷物をレンタカーに乗せてチャービルの工場を訪ねると、シャッターが閉まっていた。
「変だな。約束の時間は合ってるのに」ロイが腕時計を見ると「裏へ回ろう」マーティが脇道へ入る。
裏口へいって呼び鈴を鳴らすと中で音がするが、いくら待っても出てくる気配がない。
「どうしたんだ?」
「何かあったのよ!」バーネットがドアを叩く。ドンドンドン!「チャービルさん!」何回もドアを叩くが返事がない。
「どうする?」マーティに聞くと「ドアを破ろう」マーティが蹴ろうとしたとき『待って! 誰かこっち見てる!』
突然のシュールの言葉にロイたちの動きが止まるので『止まっちゃダメ! 気付かないフリして。なんか怖そうな人達だよ』
「どうしたんですか?」
「イノンド。そのままで聞いてください。何者かが僕たちの様子を伺ってます」
「エッ?」
「室内にも誰かいる気配がするのに、出てくる様子がないんですよ」
「ここは戻ったほうがいいな」
「参ったな。約束をすっぽかされるなんて。取引の話が台無しじゃないか!」突然ロイが大声で文句を言いはじめると「仕方ない。ほかを当たろう」マーティが踵を返す。
マーティを先頭に来た道を戻り、表通りに出ると車に乗った。




