7-1 アニスの予知夢 継続
『そうだよね。工場を一つずつアニスに見てもらうなんて、できないよね』
「僕が一番気になるのは、イノンドが「打つ手がない」と言ってきたことだ」
『横領に対して「打つ手がない」ということなのかな?』
「そこがわからないんだ。「あと五日」って、なにが「あと五日」なんだろう?」
そこへマーティがお風呂場から出てきたので、今度はロイがシャワーを浴びにいく。
『ねえマーティ。マーティはアニスの夢のことをどう思う?』剣はロイのベッドの上にある。
長い髪を拭くマーティが「途切れ途切れに夢を見ることが気になるな」
『確かに変だと思うけど、なんで?』
「いつも同じように切れ端のような夢を見るなら問題ないが、そうでなかったら、なにか意味があると思うからだ」
『そうだね。じゃあ、アニスに聞いてみる。アニス!』
“なあに?”
『今いい?』
“ええ、大丈夫。バーネット、シャワー、浴びてる、から ”
『聞きたいことがあるんだけど。夢を見るとき、いつも途切れ途切れに見るの?』
“いいえ。今回の、こと? こんなこと、初めて ”
『そうなんだ』
“どうして?”
『マーティが聞いてみたいって言ったから。ありがとう』
「アニスと電話で話してるシュールの隣で、二人の会話を聞いてるみたいだな。それで、アニスはなんだと言ってたんだ?」
『こんなこと初めてだって』
「そうか……」
『何か気になることでもあるの?』
「何か引っ掛かってるんだが、ハッキリしないんだ」
『明日、イノンドが「打つ手がない」と言ってくるとか?』
「その前に何か起きるだろう」
『私たち、巻き込まれちゃうのかな?』
「わからん」
『ここで足止め食うのかな?』
「その可能性は、否定できないな」
いろいろと話しているうちにロイが出てきたので、マーティが備え付けの冷蔵庫から缶ビールを出すと、風呂上がりの一杯を飲んでベッドに入った。
翌朝八時、最上階のレストランにみんなの姿があった。
昨夜と同様、窓際の席に案内されると、同じように左奥からロイ、バーネット、アニス、マーティが座り、向かいに、イノンド、黒髪の部下と赤茶髪の部下が座る。
注文を済ますとバーネットが「アニスが夢の続きを見たのよ」と言うので「本当!」アニスを見るロイが「どんな夢だった?」と聞くと「それが……」向かいに座っているイノンドを見るので「私が何か?」
「その……イノンド、何か話した、あと、急いで、艦に戻る、ところ、だった」
「イノンドの話の内容は?」
「覚えてる、のは、この星、関すること、だった、けど……」
「どんなこと?」
「危機感、感じた、覚えてる。でも、話の内容、覚えてない」
「変なのよ。朝からずっとこう言ってるの」
「何が変なんだ?」通路側のマーティが聞く。
「とても、長い間、夢見てた、気がする、のに、たった、これだけ、しか、覚えてない」
「疲れてるんじゃないか?」
「そんなこと、ない」
「話の途中に入って申し訳ないのですが、何のことか話してもらえませんか?」イノンドが説明を求めてくるので「でも、信じて、もらえるか……」
「おや、ここまできて除け者にするんですか? もう、どんなことを言われても信じますよ」
二人の部下も同様に頷くので「話したほうがいいと思う」バーネットがロイを見ると「わかりました。部屋に戻ったら話します」




