4-3 新たな口伝
『第三の門へ入りし尋ね人よ。イグナス・ヴェナンディが持つ炎の矢を受け取り、第四の門へ向かうがよい。
第四の門は、月光の橋の先、「沈黙の神殿」にある宵の凪の門より入る。
宴の部屋へ向かい、アウステルに夜の矢を持たせるがよい。
されど尋ね人よ、心せよ。雷獣に見付かってはならぬ。見付かれば雷鳴の檻に監禁され、永遠に落雷を受け続けるであろう』
「ここから交代する予定だったから、すっかり覚えちゃったよ」
『……すごい。私には難しくて、ぜんぜん覚えられなかったのに』感心するシュール。
「どうやって口伝を調べたの?」疑問に思うバーネット。「第四の門の口伝は「火炎の宮殿」の中に書いてあるのよ。宮殿の中に入ったの?」
「それはまだ話せないんだ」と答えるので、バーネットが無言の視線を送ると「……「火炎の宮殿」には、許可された者しか入れないからね」
『じゃあ、別のところに口伝が書いてあるの?』考えるシュールに「いや、それはないと思うよ」
『……じれったい』
「シュール。あとで聞きだすために、メモしておいて」冷静なバーネット。
『了解!』敬礼していそうなシュール。
「……お手柔らかにお願いします」弱腰のリシェル。
「でも、門から神殿まで庭があって、アドバイスはその庭の通り方だというのなら、その庭に、なにか仕掛けがあるというの?」
「おそらくね。すんなり「沈黙の宮殿」まで通してくれないんだろう。そこでお願いがあるんだ。たぶんアドバイスは口伝だろうから、それがわかったら教えてほしいんだ」
「このペンダントを通して?」バーネットがバラのペンダントヘッドを持つと「そう。アドバイスの口伝は暗号のようになってると思うから、君たちが目的地に着くまでに、解読しておきたいんだ」
『できるの? だって、本当に第四の門の中に庭があるか、わからないんだよ』
「十中八九、庭はあると思うし、仕掛けもあると思う。もし、門を入った先がすぐに神殿の中だったら、門と神殿を別々に言う必要はないだろう?」
「確かにそうだけど」
『じゃあ、本当に途中で鍵を繋ぐことになって、そこでアドバイスをもらったら、連絡すればいいじゃん』
「それもそうね。確定してることじゃないから、それでいいかしら?」
「もちろん。とにかく、危険なことは事前に解明しておきたいんだ。そうすれば、通り方の説明ができるだろう?」
「……わかった。とにかく、アドバイスをもらうことになったら連絡するわ」
(リシェルの言うとおり、鍵を繋ぐことになって、新しい口伝を聞くことになった。しかも、第四の門の入り口から、「沈黙の神殿」までの行き方ということも同じ。だとしたら、仕掛けがある庭があることは確実ね)
リシェルの分析の確かさに驚かされるが(本当は、前回の尋ね人だったんじゃないかしら?)
そんなことを考えているバーネットの隣、ロイが身に着けている剣にいるシュールも同じことを考えていた。
『あのおじさん、リシェルと同じこと言った。じゃあ、仕掛けがある庭はあるんだ。さっきの口伝、リシェルに言わないと』
そのため、バーネットに声を掛けたかったが、彼女にだけ話し掛けることができないので、話せる機会を待つことにした。
『どうして私がもらったペンダントには、通信機能が付いてないんだろう?』




