3-1 目的の人物
空き室があるだろうと五階建ての中規模のホテルに入り、三部屋取れたのでチェックインして荷物を部屋に置き、ロビーに集まると、文献に書いてあったチャービルという人物のところへ向かった。
「場所はわかってるんでしょう?」バーネットがキョロキョロと周りを見ると「さっき、役所に問い合わせて確認したよ」ロイが携帯の画面を見せる。
目的のチャービルの家は、大小の工場が立ち並ぶ東区域と呼ばれる一角にあるらしい。
携帯のナビに従って進んでいくと、仕事が詰まっているのか、午後七時半を回っても工場に明かりが点いている場所があった。
ロイが仕事場で働いている茶髪にピアスをした若い男性に「お仕事中にすみません。こちらはチャービルさんの工場でしょうか?」声を掛けると茶髪の男性は手を止め「ああ、そうだけど」汗まみれの顔を向ける。
「良かった。すみませんが、呼んできてもらえないでしょうか?」
「どちらさんですか?」胡散臭そうに聞くので「ああ、僕はロイと言います」
「ちょっと待っててください」手に持っていた工具を置いて工場の奥へ向かうと、少しして、白髪交じりで、大柄のがっちりした体格の初老の男性が出てきた。
服に油がべっとりと付いている。
「チャービルさんでしょうか?」声を掛けるロイに「ああ、そうだが。あんたたちは?」
「初めまして。僕はロイと言います。お仕事中にすみません。実はお願いしたいことがありまして、伺わせていただきました」
「寄付の件ならお断りだよ!」
「ハ? 寄付?」
「なんだ、違うのか?」
「はい。実は、見ていただきたいものがあるんです」ロイが肩掛けバッグから三枚の鍵をだして見せると「それは!」
「あなたに繋いでもらうように指示されて来ました」
「そうか。あんたたちだったのか」さっきまでの不愛想な顔から、満面の笑顔になる。
「お願いできますか?」
「もちろん! ゴールデン、そっちの機械をあけといてくれ」先ほどの若い男性に声をかけ「さあ、中に入ってくれ」工場の奥を指す。
「我々はここで待ってますよ」イノンドが遠慮するので「仲間じゃないのかい?」チャービルがロイを見る。
「ちょっとありまして、護衛してもらってるんです」
「護衛だって? ……では、こっちの事務所を使うといい」入り口近くにある小さな部屋を指す。
「すみません、イノンド」
「いいですよ」部下二人と一緒に指定された部屋に入ると、ロイたちはチャービルに案内されて、奥の部屋へ向かった。
「おい! 表の事務所に三人お客さんが来てるから、お茶を持ってってくれ! こっちは四人だ!」廊下の奥に向かって声を掛けると「ハーイ!」女性の声が返ってくる。
「さあ、座ってくれ」部屋に入ると向かい合った二人掛け用のソファを指し、チャービルは、奥にある一人掛け用の古ぼけた椅子に座る。
『ねえロイ、この人誰だろう? 私たちのことを知ってるわりに、どこにでもいそうな普通のおじさんに見えるけど』
『ハハハハハッ! どこにでもいそうな普通のおじさんか! 確かにそうだな。私は鍛冶の精霊だよ』
「シュールの声が聞こえるんですか!」
『もちろんだよ』




